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幼少期

11 ペペロンチーノを作ってみる

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 トレーニングのおかげか、食事制限のおかげかふっくらしていた顔はだいぶ元の形に戻り、5歳児らしい顔立ちになってきた。
 というわけで、自分の好物を食べたい……んだが、調理場に乗り込んで料理人にあれ作って、これ作って、なんて言い出したところで『子供のくる所じゃない』と言われるのがオチ。
 なんで、ある程度は自分で作れるモノにしなければならないから、最初からフランスパンを作るっていうのは難しいな。
 というか、フランスパンで食べたいのは明太フランスやガーリックフランス、あとはフランスパンにキノコ炒めと溶けたチーズを入れたサンドイッチなんかの高カロリーものだから、まだダイエット完了してない段階では厳しいだろう。

 ん~、となると辛いものが食べたいんだが、カレーはスパイス類が足りないし、中華や鍋系はご飯が食べたくなる……が、この世界ではまだ米は未発見だからもう少し先だな。
 うん、パスタやにんにくはあるし、とりあえずは簡単なペペロンチーノにするかな。
 これなら、スパゲッティを茹でるのは料理人に頼むことになるけど、5歳児でもなんとか作れるしな。

「たのも~う」

「若、物騒ですよ」

「!? 坊ちゃん!? ここは坊ちゃんが来るような所じゃないですよ!?」

 調理室にレナと一緒に乗り込むと、下ごしらえ中の料理人に指示を出していた料理長が声をかけてきた。
 ゲルハルディ家は貴族とは言え、使用人の数も少ないし、両親ともにそこまで食に関心があるわけでもないから、料理人はそこまでの数はいない。

「いや~、迷惑なのは分かってるんだけど、ちょっと食べたいものがあってね」

「食べたいものがあるのなら使用人の誰かに言ってくだされば、作ってお持ちいたしますよ」

「まあまあ、普段の料理で出てくるものならそうするんだけど、食べたいものは俺が考えたものでね。そんな実験的な料理に料理人を使うのもなんだからさ」

「坊ちゃんが考えた?」

「ああ、実はこれを使って料理を作ってみたくてね」

「そいつはっ、虫除けの実じゃねえですか!?」

 俺がバッグから取り出したのは、唐辛子、いわゆる鷹の爪ってやつだ。
 この世界では主に虫除けのために畑に植える作物で、寒い地方では靴の中に入れたりなんかもするが、基本的に食料とはみなされていない。
 シナリオライターが甘党のせいでこんな扱いになっているが、設定上は前世の唐辛子と変わらず食べられるのも知ってはいたが、ここに持ち込む前に軽く齧って食べられることは確認している。

「これを食用にしてないことは知ってるけど、毒物ってわけじゃないだろ? だから、これを使って料理を作ってみたいなと思ってな」

「ふむ、確かにこれを使って料理を作れと言われても困惑したでしょうが……本当にこれを使うので?」

「まあ、何事も試してみないとな。スパゲッティを使いたいんだが、流石にパスタを茹でるのは俺じゃ難しいだろ? だから、そこだけ手伝ってほしいんだが」

「遊びじゃねえんですね?」

「遊びっちゃ遊びだが、そこそこ食べられるものが出来たなら、無駄がなくなるだろ?」

「普通は捨てられるものですからね。……はあ、怪我だけはしないように気を付けてくださいよ」

「はいよ」

 とりあえず、スパゲッティは料理長に任せられるから、俺がやるのはその隣でペペロンチーノのパスタソースを作ることだな。
 にんにくは料理用にすでに皮が剥かれたものが用意されていたから、それを小さい包丁で潰してからみじん切りにする。
 唐辛子の方は種を取り除いて輪切りにして、フライパンにオリーブオイルとにんにく入れて弱火で温めていく。
 ペペロンチーノは簡単な料理だけど、これはその中でも簡単な作り方だな。
 ある程度、にんにくに火が通ってカリカリになってきたら、輪切りにした唐辛子を投入して、料理長が茹でてくれていたスパゲッティ鍋からゆで汁をお玉1杯ぶんもらう。
 ここで、一気に火を強めて乳化させたら、若干茹で時間が足りないくらいのスパゲッティをフライパンに入れて一気に混ぜていく。

「ふ~、こんなもんかな」

「坊ちゃん、手慣れてますね」

「手慣れてるって、パスタ混ぜるだけに手慣れてるも何もないだろ? こっちの皿は俺とレナの分だけど、こっちの皿はみんなで試食してみてくれ」

 俺とレナの分は小皿、料理人たちの試食分は普通のパスタ皿に盛った。
 まあ、昼飯と夜飯の中間とはいえ、あんまり食べるのも良くないからな。

「じゃあ、坊ちゃんの考えた実験料理を食べてみますかね」

「少し辛いと思うから、気を付けて食べてくれよな」
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