料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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終章 迷宮都市

15 稀人

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「マサト兄ちゃん、ミーナと付き合ったんだって? おめでとう!」

「おお、レイジ。ありがとう」

 食堂の営業終了後の後片付け中にレイジに祝福された。
 どうも、営業中に誰かにミーナとのことを聞いていたらしいな。

「ホント、僕も嬉しいんだよ! だってこれでマサト兄ちゃんのことを兄ちゃんって呼んでもおかしくないってことでしょ?」

 血のつながりはないけど、ミーナと結婚するのならレイジは義理の弟? 兄? になるわけだしおかしくはない……のか?

「で、マサト兄ちゃんはこのままここで食堂を経営していく感じ?」

「そうだな、神様には料理のレシピを書き留めておくように言われたから、レシピを書きつつ食堂で稼ぐ感じになるな」

「じゃあ、僕は迷宮で食堂の食材を獲ってくればいいんだね」

「ああ……あっ、神様の加護がなくなったからレイジも怪我には気を付けるんだぞ?」

 営業終了後ということで食堂内には俺とミーナとレイジしかいない。
 だから、神様関係の話をしてもいいだろう。

「へーそうなんだ。今のところは魔獣や獣相手でも怪我するほどじゃないから大丈夫だと思うけど、階層を上がるほどに強くなるらしいから気を付けておくね」

「お兄ちゃんは誰かと付き合ったりはしないの?」

「んー、僕? そういうのはないかなぁ」

「あの三人娘は?」

「メイとサラとミミ?」

 レイジと一緒にパーティを組んでいる冒険者は三人娘という印象だったから、よく名前を憶えてなかったんだがそういう名前だったか。

「一緒に冒険してたらそういう感情も生まれるんじゃないの?」

「んー、よくわからないなぁ。三人とも大事だけど」

 まあ、俺もそうだけど自分の感情っていうのは難しいもんだよな。
 それよりも、あっちの三人娘の方からアピールしてきそうなんだよな……あの娘たちのレイジを見る目がハートというか、獲物を狙う目をしてる時があるし。

「お兄ちゃんはそのままでいいと思うよ」

「なんか、含みのある言い方だね」

「まあまあ、それよりもイーリスが結婚していたらしいからお祝いの料理を作ることになってだな」

「へーそうなんだ、じゃあ迷宮から珍しい魔獣でも狩ってくる?」

「お祝いにケーキを作ることになったんだよ」

 神様との契約で前の世界の記憶はもう戻ることはないけれど、俺はこれからこの世界でミーナたちと一緒に新しい記憶を紡いでいくことになるんだろう。
 この世界に新しく来る異世界からの転移者のためにも、料理を使って異世界を改革し続けていくんだろうな。

 ——————王国歴1098年、名もない村に突然現れた一人の奇妙な男性がこの世界の食事情を改革したと言われている。
 その男の過去の出自をたどることは出来ず、何もない空間に突如現れたという。
 男が晩年に書き記した画期的な料理のレシピの数々は瞬く間に世界中に広がり、原本は帝国王室の秘宝とされている。
 男の数々の偉業を称え、男のように何もない空間から現れる自称異世界からの転移者を稀人と呼ぶようになった。
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