料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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終章 迷宮都市

13 プロポーズ

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 目が覚めたら見慣れた天井がある。
 いやいや、アホなこと言ってる場合じゃないな。

 俺は……そうか、神様にこの世界に残してもらうことにしたんだ。
 神様からは役割は終わったから、転生してもいいとは言われたけど、なんとなく俺はこの世界でやり残したことがあるような気がするんだよな。
 まあ、神様としても残るのなら異界のレシピの内容を日本語と現地語の両方で書き残してほしい、なんて頼まれたけど。

 神様が言うには俺から不老不死の肉体と、ダメージを反射する加護、それに死への恐怖心を取り除いて、現地語が理解できるようにしたってことなんだけど。
 恐怖心は旅を続けるのに障害になるから、現地語については一所に根付くことを避けるために神様かが勝手に付け足した呪いらしい。
 まあ、神様からしたら旅をして料理を広めてもらわないと困るから、当然の処置っちゃ処置なんだが、一言言ってくれてもよかったよな。

 まあ、なんにせよ俺のやることは変わらない。
 食堂自体はこのまま俺の能力として使えるらしいし、レイジが迷宮都市で頑張ってる間はここに根を張って新しい食材で新しい料理を作って、暇を見つけたらレシピを書き留めるかな。
 死への恐怖心が人並みになったなら、これからは旅も難しくなるかもしれないけど、その辺もどうなってるのか確かめないとな。

「あれ、マサトさん、今日はゆっくりなんですね。お兄ちゃんたちはもう行っちゃいましたよ?」

 自室で準備をして食堂の一回に降りると、既にミーナは起きていたようで食堂の開店準備をしていた。

「ああ、夢に……? 夢に神様が出てきてさ」

「?」

「なんか神様からの頼まれごとは解決したから、これから適当に生きろ的な? 話をされてさ」

 いや、ミーナが困惑してるがマジでこういうしかない出来事なんだよな。
 レイジとミーナには神様関連の話をしてし加護の関係もあるから伝えるけど、他の人には話さないほうがいいかもな。

「まあ、だからこれからは加護がなくなる代わりに自由に生きていいらしいんだよね。……あ、ミーナもこれから普通に怪我とかするだろうから、包丁の扱いには気を付けるんだぞ?」

「……よくわかりませんけど、マサトさんが言うなら気を付けます」

「まあ、料理人の天職持ちのミーナに言うことじゃないかな……レイジにも気を付けるように言っときたいけどレイジも戦闘系の天職持ちだし……一番に気を付けるのは俺か」

 天職には対応している物事に対するボーナスみたいなものがあるから、刃物の扱いで気を付けるのは俺なんだよな。

「……」

 ふと、何の気なしにミーナの顔を覗いた瞬間、俺は、俺がこの世界でやり残したことに気が付いた。

「……ミーナ」

「はい?」

「ええと、何というか、俺は今、なんで俺がこの世界に残ったのかに気が付いた」

「はい……?」

「俺はミーナのことが好きだ。これからの人生をミーナと一緒に過ごしたい」

 初めてこの世界に降り立った時に出会った少女、楽しい時も苦しい時も常に一緒にいて感情を共有してきた。
 この世界でいろいろな場所を旅してきて、いろんな人たちに出会った。
 それでも俺が一緒に居たいと思ったのは、レイジとミーナだけ。
 多分、本能的に家族になりたいと思った人を選別していたんだろうな……と、神様かの加護がなくなった今なら思う。

「え?……えっと?」

「あー、いきなりこんなことを言われたら混乱するよな。神様から加護を取られた影響か、いろいろと俺も変わったんだ。その影響で恋とか愛についての感情も取り戻したんだけど、ミーナの顔を見た瞬間に分かったんだ。俺はミーナのことが好きなんだって」

「は……はい」

「あー、悪い。なんか一方的に話をしちゃったな。ミーナにそういうつもりがなければそう言ってもらっていいし、よくわからないならまた日を改めても……」

「ち、違います! わたしも! わたしもマサトさんのことが好きです!」

 見る見るうちにミーナの顔が赤くなっていく……いや、多分の俺の顔も真っ赤なんだろうな、かなり顔が熱い。

「じゃあ……」

「はい、これからもわたしと一緒にいてくださぃ」

 かなり恥ずかしいのか後半は声が小さくなってしまったが、なんかこういうところも好きなんだよな。
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