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終章 迷宮都市

10 カレー

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「お師匠様、パンにミルクを使うとさらに柔らかくなるって本当ですか?」

「ああ、砂糖とミルクを使えばふわふわになるぞ」

「じゃあ、私はそれを作ってみますね」

「あ、パンにはチーズを練りこんだり中に仕込んだりしてもおいしいぞ」

「素敵ですっ!」

「わたくしはチーズ作りに興味がありますわ。帝国で作っていたものもあるのですが、完成度に不満が……」

「チーズならー……聖王国で作ったのがあるから見せようか―?」

「ぜひっ!」

 まあ、こんな感じで食堂の中の空気は更に賑やかになった。
 それぞれの国で作ってきた料理が全く違うからか、相互に反応していろいろな料理が作られるようになってきている。

「マサト兄ちゃん、またいろいろ植物とかお肉持ってきたよー」

「お、助かるよ。いろいろと試作してたら全然足りなくてさ」

「みんなが手伝ってくれるから前よりもいっぱい採ってこれたよ」

「いえいえ、レイジ様の活躍が凄かったんですよっ!」

「そうそう、こうズギャーンっと魔獣に駆け寄っていってさっ!」

「植物も見ただけで食べられるかどうかわかってしまいますしっ!」

 三人娘とレイジのパーティはなかなか順調に行っているようだ。
 まあ、順調というかレイジの実力が迷宮都市内でもとびぬけているから、当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
 でも、レイジ自身も迷宮に潜るのは楽しそうだし、中距離や遠距離から攻撃できる三人娘には助けられているらしい。

「マサトさん、カレーの試作が出来ました。味見お願いできますか?」

「ああ、いいよ」

 レイジが迷宮からスパイス類を持って帰ってきてくれるから、早速と言わんばかりにカレー作りに挑戦している。
 とはいえ、この世界のスパイスは前の世界のスパイスと結構違うから、異界のレシピは参考程度にしかならない。
 だから、ミーナの天職任せで作ってもらってるんだが、結構色が違うんだよな。
 前の世界のカレーは濃い目の茶色が多かったが、ミーナが試作したカレーは明るい黄色……しかも、香りがあんまりスパイシーではないんだよな。

「……お? いや、これは結構……」

「ど、どうですか?」

「ああ、美味しいよ。俺が想像していたのとは違うけど、これは紛れもなくカレーだ」

 この世界のスパイスの特製なのか、口に入れた瞬間に香りが爆発的に広がった。
 おそらくは、この世界のスパイスは香りよりも味が強いんだろうな。
 この世界では白米に何かをかける料理はあまり知られていない……というよりも、白米自体がそれほど浸透していないからはじめはカレースープのような形態でパンに漬けて食べてもらおうと思っている。
 だから、前の世界で一般的だったとろっとしたカレーではなく、シャバシャバ系のカレーを作ってもらっている。

「マサト兄ちゃん、僕も味見味見!」

「まあ、待ってろ。ミーナに頼んで結構な分量で作ってもらったから、今日の夜営業には定食に付けるよ」

 カレーと言えばカツ! ということで、夜営業のメインは豚カツとチキンカツにするか。
 牛はカツにすると固くなりがちだから避けるとして……あとはレイジが狩ってきてくれた魔獣の鹿(?)肉をカツにするかな。
 この世界の魔獣は肉食なはずなのに淡白で癖がない味の肉が多いんだよな、肉質も柔らかいのが多いし。
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