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終章 迷宮都市

07 三人娘

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「~~~っ美味しい! マサト兄ちゃん、またこの魔獣と植物持って帰ってきたら、コレ作ってくれる?」

「作るのはいいけど、レイジ一人で魔獣も植物もとなると持ち帰りが大変じゃないか?」

「なんかねー、冒険者の中には荷物持ち専門の人もいるみたいだから、その人たちに手伝ってもらおっかなって」

 はー、迷宮都市では迷宮から食料を確保しているって話を聞いていたが、荷物持ち専門の冒険者もいるのか。
 まあ、誰もが戦闘系の天職持ちってわけでもないから仕方がないことかもしれんけど。

「あ、いたよ! やっぱり看護所で聞いた食堂ってココのことだったんだよ!」

「待ってよサラ! ミミがついてこれてないって!」

「サラちゃん! 速いよー!」

 レイジと同年代くらいの少女が食堂を覗いたと思ったら、外からも少女の声が響いてきた。
 騎士団や帝国軍には、年齢制限があるらしく本国ならともかく迷宮都市には年若い女性は連れてきていないらしいから、おそらくは迷宮都市の住民か冒険者なのだろう。

「あ、僕が助けた冒険者の子だ」

「ん? レイジが迷宮の探索で助けた子か?」

「そうそう。迷宮内は男の人ばっかりだったんだけど、三階層に入った直後に女の子三人組がさっき食べた魔獣に襲われて怪我をしてたから助けたんだ」

 はー、レイジが助けたって言ってたから騎士や軍人ではないと思っていたけど、冒険者の少女三人組とはな。
 有用な天職持ちなら、性の区別なく冒険者になれるというのは聞いたことがあるが、まともに見るのは初めてだな。

「「「この度は助けていただいてありがとうございました」」」

「いいよいいよ」

「でも、私たちのせいで途中で引き返したんですよね?」

「そうだよ! あんなに強いんだもん、もっと奥まで行くつもりだったんでしょ?」

「本当にごめんなさい」

「ううん、今日はお試しのつもりだったから、三階層に入ったら帰ろうと思ってたし。それに君たちのおかげで美味しい魔獣も見つけられたしね」

「……魔獣」

「「……美味しい」」

 まあ、レイジの言い分も最もなんだろうけど、少女たちのキャパを超えちゃったみたいだな。
 自分たちが襲われていた魔獣を食べた……しかも、それが美味しかったなんて言われたら誰でも複雑な心境になるだろう。

「それよりも、あの魔獣はそこまで強くなかったのに、なんであんな怪我をしてたの?」

「いやいや! 強いですよ!」

「そうそう、ボクたちだって冒険者の中ではそこそこの実力があるけど、一匹倒すのでも苦戦するくらいだもん!」

「……まあ私たちが近距離の攻撃手段がないから相性が悪いっていうのもありますけど」

 あー、そういえばあのウサギの魔獣は後ろ足がかなり発達しててスピードがありそうだったもんな。

「えーと、とりあえずここは食堂だから、話をするなら何か注文してくれると嬉しいかな」

 放っておくとずっと話し合ってそうだから、声をかけることにした。
 時間的には昼のラッシュが過ぎたあたりの時間帯だから、そこまで食堂内が混み合っているというわけじゃないけど話が長引けば早くに夜飯を食べに来る人とかち合うしな。

「あ、ごめんなさい。……そっか、ここが父さんが言ってた料理を出すお店か」

「聞いた話だと何種類かあるんだよね?」

「はい、今日は唐揚げ定食か、ステーキ定食、生姜焼き定食がありますよ」

 早速ミーナが料理の内容に関して答えてくれる。
 基本的に食堂では、鳥、豚、牛の三種類の肉をメインに定食の形式で出しているが、迷宮で魔獣の肉が補充できるのならこれからはそっちメインのメニューを考えてもいいかもな。
 主食のパンは王国の騎士団が作っているし、帝国の占領地では米の栽培が始まっているらしいから主食には困ることはないしな。
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