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終章 迷宮都市

05 迷宮土産

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「じゃあ、唐揚げ定食お願いね」

「はい、じゃあ銀貨一枚ですね」

「こっちはステーキ定食をパンで……あと追加で唐揚げもお願い」

「はいはい、銀貨一枚と銅貨五十枚ですね」

「銀貨二枚出すからおつり頂戴」

 後払い制にしていると金を払わずに出ていこうとする人間が出てくるから、食堂内は全品前払い制に切り替えた。
 王国の騎士団と帝国の帝国軍から人員も出してもらって、注文を聞くのと代金の徴収をしてもらっている。
 俺とミーナは争いごとには向いていないし、いつまでもレイジを食堂に拘束しておくわけにもいかないということで、迷宮都市に常駐している各国の代表者と話し合って協力してもらってる形だ。
 まあ、食堂のおかげで迷宮都市内の食事のクオリティが上がっているからむしろ協力させてほしい、と向こうから言われているのだが、手伝ってくれた人員には賄いということで食事を出して、給料代わりに食堂の無料券を配ることにした。

「マサト兄ちゃーん、もどったよー」

 と、噂をしていればレイジが迷宮から戻ってきたみたいだ。
 現在迷宮は十階層まで攻略済みらしく、高さから言って全五十階層らしいから五分の一が攻略済みらしい。
 レイジは今日が初挑戦というわけで三階層を攻略目標、そこまで行けなくても暗くなる前には探索をやめて戻ってくるという話だったけど、どこまで行けたのだろうか?

「おかえり。随分早い戻りだけどどうしたんだ?」

「あー、三階層に入ったところで魔獣に襲われていた人たちがいたから、その人たちを助けて直ぐに戻ってきたんだよね」

「おー、人助けか。それはいいことしたな……それはそれとして、その人たちは?」

 迷宮前で別れたのか?
 それとも、まさか助けてくれたレイジに礼も言わずに放って逃げたのか?

「重傷とまではいかないけど、みんな怪我をしてたから迷宮前の看護所で治療をしてもらってるよ。最後まで付き合おうと思ったけど、やれることもないから僕は先に戻らせてもらったんだ」

 なるほどなるほど、神様の加護があるから怪我とは無縁だし、そもそもレイジが強すぎて魔獣や獣から攻撃されているところを見たことがないから忘れていたがこの世界の魔獣退治は相応のリスクがあるんだったな。

「それよりも、迷宮でいろいろと食べられそうな食材を見つけてきたから見てよ!」

「お、レイジの迷宮初戦果か。それは気合を入れて見ないとな」

「迷宮にいた魔獣はあんまりおいしくなさそうなのが多かったんだけど、これは美味しそうだったんだよね」

 レイジがまず見せてくれたのは、額に三本の角が生えたウサギ……村にいた頃に見たことのある、というか襲われたホーンラビットとかいう魔獣をさらに凶悪にしたような魔獣だな。
 ホーンラビットよりも肉付きがいいというか、後ろ足が発達しているようでこれで蹴られるだけでも大ダメージだろうが、スピードの上がった突進で獲物を串刺しにするのが目的の進化だろうな。

「結構凶悪な見た目してるけど、苦戦はしなかったか?」

「まっすぐ飛んでくるだけだったから、むしろ戦いやすかったかな。苦戦したのはねー、スライムかな……こっちの攻撃が無効化されて困ったよ」

「倒さずに逃げたのか?」

「ううん、ちゃんと倒したよ。切ってもくっついちゃうから、くっつく前に全部切り離せば倒せるかなーってやってみたら倒せた」

 あー、結構なごり押しで倒したみたいだな。
 騎士団や帝国軍の人も聞いていたけど、スライムは魔法以外での倒し方がないらしく、魔法使いがいないパーティーは避けるのがセオリーだとか。

「他には何か持って帰ってきたのか?」

「あとはねー、結構植物があったからそれを持って帰ってきたんだよ」

 俺がついていけば食堂を展開して、いくらでも荷物を持ち帰れるが、普通の人間はそうはいかないから持ち帰るものも厳選する必要がある。
 レイジは角が三本ついたウサギの魔獣以外には、乾燥した植物の種らしきものを大量に持ち帰ってきたらしい。

「鑑定はしてみたのか?」

「一応したけど、お肉には合うくらいの情報しか出なかったから、とりあえず目についたのは全種類持ち帰ってみたよ」

 レイジにも戦闘系の天職持ちが得られる獲物を鑑定するスキルを持っているが、スキルレベルが上がってきたことで簡易的な情報なら専門外なものでも鑑定できるようになっているらしい。
 とはいえ、本当に簡易的な情報で、名前や分かり切っている用途くらいしかわからないらしく、役には立たないと言っていた。

「専門外なのに肉に合うって情報は出たのか?」

「多分、その時その魔獣を持ってたからじゃないかな?」

「なるほど」

 と、いうことは余程この植物の種子は肉に合う食材なんだろうな。
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