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5章 帝国

10 歓談

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「ほう、こいつがマサトが作った料理か」

「味付けは二種類ありますので、皆様に一枚ずつお渡しします。物足りないという方は仰っていただければお代わりをお渡ししますので」

 ピザは出来立てが至高! というわけで、レベル1の食堂が展開できる部屋に関係者すべてを集めてもらった。
 とりあえず、主要人物のうち、帝室の人間が先に食べないといけないってことでここに集まっているのは帝室の人間……つまりはリヒトの奥さんと子供たちだ。
 ミレーヌ含めて子供十五人、奥さん十五人でリヒト含めて三十一人、それに加えて給仕役として俺とレイジとミーナが入っている。

「ほう、二種類……確かに肉の形や野菜が違うな」

「先に味見をさせていただきましたけど、両方とも美味しかったですわよ」

「おいおい、皇帝である俺よりも前に食ったってのか?」

「陛下、料理の味を確認するのは料理人の役目、ミレーヌ様は陛下が食しても問題ないか確認しただけですよ」

 リヒトが軽くミレーヌをにらむから思わずフォローに入ってしまった。
 まあ、リヒトの性格から本気で怒ってるわけではなく、じゃれあいの範疇なんだろうけど、部屋の中の人間に緊張が走ったからな。

「……ふむ、料理を作ったマサトがそういうなら仕方がねえか」

 明らかに部屋の中の人間からホッとした空気を感じるんだが、リヒトが冷酷な人間だと思ってるから、キレだしたら身内でも何をされるかわからないと思われてるのかな?

「んで、こいつはどうやって食べればいいんだ?」

 ピザは直径十八センチくらいのサイズを六等分にカットして出してるからそれなりの大きさ。
 初めて食べる人間にとってはどうやって食べればいいのか、よくわからないのも当然だな。

「おすすめは先の細い方からかぶりついてもらうことですが、女性の方には抵抗があるかもしれませんので、ナイフとフォークで一口大に切って食べていただいても構いません」

 リヒトの奥さんは周辺国の要人の娘ということで、軽い化粧をしている人も多い。
 まあ、多くは口紅くらいなものだが大口を開けてかぶりつくというのは難しいだろう。

「ほう、じゃあ食べてみるかな」

 リヒトが先陣を切るように真っ先にかぶりつく。
 もちろん、リヒトが食べる分も含めて提供時に毒鑑定持ちの人に確認してもらって、すべて無毒であることは確認してもらってる。
 このへんは王国でも感じたが、天職とスキルがあるこの世界の便利なところだよな。
 毒味役がいちいち食べなくても毒が入っているかどうかの確認ができるっていうのは。

「……これは美味いな! ……いや、詳しい味は分からねーが温かい料理というのはいいもんだな」

 リヒトが絶賛すると同時に、部屋の中の人間も口にし始める。
 俺としては温かいうちに食べてもらわないとピザの魅力が半減するから、早めに手を付けてもらえて助かる。

「マサト、おかわりだ」

 もう二枚とも食べ終わったのかリヒトが声をかけてくる。
 この世界の人間は基本的に小食なのだが、帝国兵とともに前線に立つこともあるリヒトは体を鍛えているのかやはり健啖家のようだ。

「どちらにしますか?」

「両方とももらおう」

 リヒトの言うとおりに二種類とも渡す。
 一人一枚という計算で用意してあるが、他の人を見る限りチマチマと食べている人が多いからリヒトが少々オーバーしても問題はないだろう。

「あ、僕にもおかわりを」

 見ると皇子の方もお代わりをしている人がいて、そっちはレイジが対応しているみたいだ。
 リヒトやミレーヌが言うには、皇帝は帝国軍の将軍も兼任するから皇子は戦線に立つことが多いらしい。
 まあ、戦闘系の天職じゃなかった人は内政に関わることになるらしいけど、王子は戦闘系の天職を持って生まれてくることが多いとかなんとか。

「……ちょっと、あなた」

「はい?」

 何人かに給仕をしたり、美味く切れない皇女様の代わりにピザを切ってあげたりしていると声をかけられる。
 年齢からしてリヒトの奥さん……つまりは王妃様かそのほかの妃さまの内の誰かだろう。

「この料理を作ったのはあなたなの?」

「ええ、他の人にも手伝っていただきましたが基本的に私が作っています」

 レシピ自体は俺が提供しているから、こう答えておいた方が無難だろう。
 作った割合としては料理人の天職持ちの人のほうが多く作っているが、それを言ってその人たちに作れって無茶ぶりされても困る。

「あなた、結婚はしているのかしら?」

「はい? していませんけど?」

 質問の意味が不明すぎる。
 てっきり美味しかったから、また作ってほしい的な話かと思ったんだが……。

「していないのなら、娘の婿になりなさいな」

 …………はい?
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