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4章 聖王国
16 別れ
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男たちの元に雷が落ちた瞬間、俺は確信した。
これは不当に貶められた神様の天罰……やはりこの世界に女神は存在せず俺をこの世界に送り出した神様が天罰を下したのだと。
それを証明するように、男たちを再度鑑定しみてると天職から神官という文言が消えている。
この世界では自覚している、していないにかかわらず住人すべてに天職が割り振られているのは鑑定で確認済みだ。
要するにこの男たちは神の逆鱗に触れて、この世界の異物とみなされてしまったのだろう。
「……あー、この人たちどうするかな?」
俺が現実に戻ってきて一番に思ったのはこれだ。
襲ってきた戦闘系の天職持ちは雷に打たれなかったし、天職も取り上げられていないがレイジの攻撃で失神。
神の逆鱗に触れた男に二名は雷の衝撃か、それとも天職がなくなったショックからか死んではいないが目を覚ます気配はない。
今は気を失っているから全員無力だが、目を覚ませばまた横暴な態度でなんやかんや言ってくるのは目に見えている。
「……我々が首都へ運びましょう」
「あなたたちは?」
進み出てきたのは村人の中でも戦闘系の天職を持っている人たちだ。
「旅商人のようなものですよ。巡礼者が来ない時に首都からポーションを持ってきたり、よその村と交流をもったりしています」
「ふむ、頼めるかい」
村の長老的な存在の女性……頑なに村長ではないと言い張ってる女性だな……が出てきて話をまとめてしまう。
まあ、俺たちは首都の場所すらまともには知らないから、話に割り込むことは出来ないな。
「ええ、縄で縛っておけば大丈夫でしょう。暴れても私たちならばおとなしくさせられますしね。……それに首都に落ちた謎の光、あれについても調べてまいりますよ」
「……ふむ、まあ無理しない程度にね」
どうやら話はまとまったらしい。
旅商人を名乗る男たちは馬車? いや、ブラックカウに引かせた車……牛車か? を取り出してきて縄で縛った男たちを次々と放り込んでいく。
「……お兄さんたちはー? これからどうするー?」
おっ、長老が話しかけてくるかと思ったが、リリーが話しかけてきたか。
「そうだな、騒ぎを起こした? いや、巻き込まれただけだが……起こした以上あまりここに長居しないほうがいいかな」
別に俺が悪いわけではない、勝手に向こうがやってきていちゃもんつけて襲ってきて、勝手に雷に打たれて倒れただけだ。
とはいえ、それは村人にとっても同じ……俺たちがここに長居することで同じような連中がやってきても困りものだろう。
「……さっきの人たちは神殿長と神官長だからー……あの人たちが倒れた以上、他には来そうにないけどー」
「……は? この国のツートップがいきなりやってきたのか?」
おいおい、リリーの話じゃこの国は王族を神殿長が裏で操っているらしいから、神殿長と神官長と言えばツートップだろ、なにしてるんだ?
「だからー……お兄さんたちが慌てて出ていかなくてもー……大丈夫じゃないかなー?」
「と言ったって、王族が出てくるかもしれんし、他の村から怪しんでくるかもしれないだろ? 首都には雷が落ちたみたいだし、そっちから人が来るかもしれないし」
村人だけなら知らぬ存ぜぬが出来ても、明らかによそ者とわかる俺たちがいれば問題になるだろう。
異世界の住人である俺はもちろん、王国の住人だったレイジやミーナもこの国の人間とは肌や髪の色が違う。
移民自体はあることだから、それだけで疑われるわけではないだろうが、時期を考えれば怪しまれるのは仕方がないことだろう。
「……そっかー、ブラックカウのミルクに関してももう少し聞いておきたかったんだけどねー」
リリーにはブラックカウを引き渡してもらってから、ミルクを使った食材について軽くレクチャーしてある。
バターや生クリームなんかのそのまま作れそうな食材に関しては、既に俺よりもうまく作れるほどに。
「俺としても、チーズ作りにまで手を伸ばせなかったのが悔やまれるけど……これは仕方がないんだろうな」
「……ああ、そうそうー。……お兄さんに渡したいものがあったんだよー」
言って、リリーは俺に草の束を渡してくる。
「なんだこれ?」
多分食材関係だろうから軽く鑑定してみる。
本当にこの世界に来た当初から考えると、食材鑑定が身についてきたよなと思う。
『名前:ファーメントグラス 可食部:葉 年齢:一年 食用:不可 葉の成分に乳成分を固める酵素がある植物。哺乳類が食べるとミルクが体内で固まってしまうので食用には適さない。刻んで磨り潰し、出てきた汁をミルクに入れて数日経つとチーズが作成可能』
「……は?」
「これねー……あの子たちが絶対に食べない草でー……ずっと前から気になってたんだよねー」
「……リリー、 この草……チーズができるって」
「ああーやっぱりそうなんだねー……ここ最近お兄さんとミルクを使ってあれこれ作ってたらピンと来たんだよねー」
ミルクに関していろいろとやってきたから、リリーの天職、酪農家のレベルが上がったってことか。
「これ、貰っていいのか?」
「この村のそばに結構生えてるからー……持って行ってもらっていいよー」
「助かる……こっちはこっちでチーズを作ってみるけど、リリーもこの村でチーズを作ってみてもらってもいいか?」
「……うんー……私はお兄さんについていくことは出来ないけどー……この村でお兄さんに教わったことをいろいろ試してみるよー」
これは不当に貶められた神様の天罰……やはりこの世界に女神は存在せず俺をこの世界に送り出した神様が天罰を下したのだと。
それを証明するように、男たちを再度鑑定しみてると天職から神官という文言が消えている。
この世界では自覚している、していないにかかわらず住人すべてに天職が割り振られているのは鑑定で確認済みだ。
要するにこの男たちは神の逆鱗に触れて、この世界の異物とみなされてしまったのだろう。
「……あー、この人たちどうするかな?」
俺が現実に戻ってきて一番に思ったのはこれだ。
襲ってきた戦闘系の天職持ちは雷に打たれなかったし、天職も取り上げられていないがレイジの攻撃で失神。
神の逆鱗に触れた男に二名は雷の衝撃か、それとも天職がなくなったショックからか死んではいないが目を覚ます気配はない。
今は気を失っているから全員無力だが、目を覚ませばまた横暴な態度でなんやかんや言ってくるのは目に見えている。
「……我々が首都へ運びましょう」
「あなたたちは?」
進み出てきたのは村人の中でも戦闘系の天職を持っている人たちだ。
「旅商人のようなものですよ。巡礼者が来ない時に首都からポーションを持ってきたり、よその村と交流をもったりしています」
「ふむ、頼めるかい」
村の長老的な存在の女性……頑なに村長ではないと言い張ってる女性だな……が出てきて話をまとめてしまう。
まあ、俺たちは首都の場所すらまともには知らないから、話に割り込むことは出来ないな。
「ええ、縄で縛っておけば大丈夫でしょう。暴れても私たちならばおとなしくさせられますしね。……それに首都に落ちた謎の光、あれについても調べてまいりますよ」
「……ふむ、まあ無理しない程度にね」
どうやら話はまとまったらしい。
旅商人を名乗る男たちは馬車? いや、ブラックカウに引かせた車……牛車か? を取り出してきて縄で縛った男たちを次々と放り込んでいく。
「……お兄さんたちはー? これからどうするー?」
おっ、長老が話しかけてくるかと思ったが、リリーが話しかけてきたか。
「そうだな、騒ぎを起こした? いや、巻き込まれただけだが……起こした以上あまりここに長居しないほうがいいかな」
別に俺が悪いわけではない、勝手に向こうがやってきていちゃもんつけて襲ってきて、勝手に雷に打たれて倒れただけだ。
とはいえ、それは村人にとっても同じ……俺たちがここに長居することで同じような連中がやってきても困りものだろう。
「……さっきの人たちは神殿長と神官長だからー……あの人たちが倒れた以上、他には来そうにないけどー」
「……は? この国のツートップがいきなりやってきたのか?」
おいおい、リリーの話じゃこの国は王族を神殿長が裏で操っているらしいから、神殿長と神官長と言えばツートップだろ、なにしてるんだ?
「だからー……お兄さんたちが慌てて出ていかなくてもー……大丈夫じゃないかなー?」
「と言ったって、王族が出てくるかもしれんし、他の村から怪しんでくるかもしれないだろ? 首都には雷が落ちたみたいだし、そっちから人が来るかもしれないし」
村人だけなら知らぬ存ぜぬが出来ても、明らかによそ者とわかる俺たちがいれば問題になるだろう。
異世界の住人である俺はもちろん、王国の住人だったレイジやミーナもこの国の人間とは肌や髪の色が違う。
移民自体はあることだから、それだけで疑われるわけではないだろうが、時期を考えれば怪しまれるのは仕方がないことだろう。
「……そっかー、ブラックカウのミルクに関してももう少し聞いておきたかったんだけどねー」
リリーにはブラックカウを引き渡してもらってから、ミルクを使った食材について軽くレクチャーしてある。
バターや生クリームなんかのそのまま作れそうな食材に関しては、既に俺よりもうまく作れるほどに。
「俺としても、チーズ作りにまで手を伸ばせなかったのが悔やまれるけど……これは仕方がないんだろうな」
「……ああ、そうそうー。……お兄さんに渡したいものがあったんだよー」
言って、リリーは俺に草の束を渡してくる。
「なんだこれ?」
多分食材関係だろうから軽く鑑定してみる。
本当にこの世界に来た当初から考えると、食材鑑定が身についてきたよなと思う。
『名前:ファーメントグラス 可食部:葉 年齢:一年 食用:不可 葉の成分に乳成分を固める酵素がある植物。哺乳類が食べるとミルクが体内で固まってしまうので食用には適さない。刻んで磨り潰し、出てきた汁をミルクに入れて数日経つとチーズが作成可能』
「……は?」
「これねー……あの子たちが絶対に食べない草でー……ずっと前から気になってたんだよねー」
「……リリー、 この草……チーズができるって」
「ああーやっぱりそうなんだねー……ここ最近お兄さんとミルクを使ってあれこれ作ってたらピンと来たんだよねー」
ミルクに関していろいろとやってきたから、リリーの天職、酪農家のレベルが上がったってことか。
「これ、貰っていいのか?」
「この村のそばに結構生えてるからー……持って行ってもらっていいよー」
「助かる……こっちはこっちでチーズを作ってみるけど、リリーもこの村でチーズを作ってみてもらってもいいか?」
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