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4章 聖王国

13 信仰

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「でもー、そういうことならお兄さんは神様に会ったことがあったりー……?」

「ああ、この能力をもらった時に会ったことがあるよ。俺の能力はリリーやミーナたちみたいな天職と違って神様から直接もらった能力だからな」

「……どんな感じだったか……聞いてもいいかなー?」

「神様か? そうだな……男とも女ともつかないような……なんというか中性的な雰囲気?」

「ふーん……顔とかは?」

「全体的に発光してたからな……うん、顔はもちろん、どんな服を着てたとかもよくわからなかったな。……でも神々しいというか
、一目見ただけで神様だっていうのは確信できるような圧倒的な存在感があったな」

「……そっかそっか……うん、やっぱりお兄さんは信用できそうだねー」

「……信用? どういうことだ?」

「この国ではねー……信仰されている神様が二柱いるんだよー」

 リリーの話を要約すると、聖王国で信仰されている神様は聖王国の首都で信仰されている女神と、周辺の村々で信仰されている創造神の二柱いるということらしい。
 口伝によればもともと聖王国で信仰されていたのは創造神だけだったらしいが、魔王の出現、それによる人口の減少と聖王国全体の領土の縮小から首都近郊で新しい神の信仰が始まったらしい。
 それを主導していたのが今現在聖王国をまとめている神殿長で、聖王国の王族を裏から牛耳っているらしい。

 めぼしい天職を持っていると、首都に連れていかれるのだが、首都に行った人間は洗脳されているのか女神を信仰しだして、創造神のことは忘れてしまう。
 だから、まともな親は神官の天職を持っている子供はかくして育てるのだとか。

「なんというか……天職や魔法がある世界で居もしない神を捏造するとかやるもんかね?」

「……私も巡礼者とかおばばたちから話を聞いただけだからよくは知らないけど―……なんか権威……? を高めるためらしいよー」

「ああ、要するに女神への信仰を自分への権力に変換するってことか」

 この世界じゃ金はあんまり意味がないけど、それでも嗜好品や身の回りの家具なんかには金がかかる。
 女神への献上品だのお布施だのと適当なことを吹き込んで、食料やら金やらを集めていたんだろうな。
 王族が女神を信仰する方向にもっていけば、自身の地位を確立することにもなるしな。

「……まあ、そんなわけでー……お兄さんが女神さまを信仰してなくてよかったーって話だよー」

「俺が会った神様は自分だけが神だとは名乗ってなかったから、女神がいる可能性も否定はできないけどな。……でも、この世界のことを一番に考えてるのは、リリーたちが信仰してる創造神? だと思うぞ」

「だろうねー……巡礼者から話を聞いたことがあるんだけどー……神様を信じてなくてもお金さえ払えば幸運になれるーとか……どんなに悪いことをしていても神殿にお布施をすれば許されるーとか眉唾なんだよねー」

「まあ、信仰心は結局自分の心のありようというか……自分の力ではどうにもならないことに関するものになってくるから、あんまり否定もしたくないけど、俺はこの世界で信じるのは俺に能力をくれた神様だけでいいかな」

 実際、この食堂を作る能力も食材を鑑定する能力もなかったら初めから詰んでた状態だしな。
 まあ、この世界に送り出したのも神様だからマッチポンプ感を感じなくはないし、悪人やら俺やらをこんな世界に放り込んでる時点で傲慢さも感じるが、まあ神だもんな。

「お兄さんがそういうならー、このまま創造神様を信仰し続けるよー」

「それがいいんじゃないか」

 神様関連の話で結構脇道に逸れたが、とりあえず、ブラックカウ4頭の家畜小屋への誘導は無事に済んだ。
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