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4章 聖王国
06 子守
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「あんたたちが来てくれてから村にも活気が出てきたよ」
「そう言ってもらえると張り合いが出ますね」
今居るのは聖王国の中でも中心に近い村だ。
本当は巡礼者とか国の中枢に近い人間が来そうな中央付近は避けようかとも思ってたんだが、村をたどっていくとどうしても中央付近に近づかなければならないことと、せっかく村の近くまで来たのに避けて通るのもなんか違うということでこの辺でも農業と料理の知識を広めている。
「それにしたって、子供らと遊んでるあの獣が食べられるものだったなんてねぇ」
「この村の周辺にある植物と塩で味付けしてあるので慣れれば誰にでも作れるようになると思いますよ」
「ああ、村の鍛冶師の天職持ちに焼くための石版も作ってもらったし、火の魔法持ちもいるからね」
「っていうか、この村の子供ってあの獣と遊んでるんですか?」
この村の周辺にいる獣はグリーンバッファローじゃなくて、ブラックカウという種類だった。
性格が温厚らしいけど、それでも人間よりもでかい獣と遊ぶとか勇気があるな。
「昔はそうでもなかったんだけどね。この村にはいやに獣に好かれる子がいてね。その子が獣に懐かれるようになってから他の子も獣と遊ぶようになったんさね」
「へー、そんな子がいるんですか。その子の名前は?」
「リリーって子でね。もう大人だっていうのに祈りの時間が終わればいまだに獣と戯れとるよ」
ほうほう、それはもしかしたら逸材かもしれないな。
ブラックカウもグリーンバッファローと同じで搾乳が可能だし、もしかしたら牛乳が手に入る可能性が……。
「ああでも、獣もあんまり食べるといなくなっちゃうんでその辺は手加減してやってくださいね」
「大丈夫、大丈夫。ここらの獣は繫殖力が強くてたまに鳥型の魔獣とかにも襲われてるけどいなくなる気配がないし。それにあたしたちもそんなにいっぱいは食べないからねぇ」
「そうなんですね。まあ、畑ができたら畑を襲ってくる獣も出るでしょうから、そういったのから優先して食べてもらえれば」
「そうだねえ。この辺の獣も草原の草ばっかり食べてるから畑ができたらそっちに来るかもねぇ」
そんなこんなで村の代表である女将さんとの話も終わった。
獣と戯れてるリリーって子は祈りの時間以外は獣の近くにいるから、獣の群れがいるところに大人の女がいればそれがリリーって話だ。
どの程度、獣に好かれているのかはわからないが見ておく価値はありそうだな。
「はえー、すっごい」
いや、なんぞアホな声が出てしまったが、現実、すごい光景だ。
群れとでも呼ぶべきブラックカウの集団が草原の草を食み、その背の上には少年少女が寝転がっている。
いやいや、確かに獣は草食で人間を食べようとはしないけど、あれは危ないだろう。
とはいえどうしたものか……下手に声をかけたり近づいてブラックカウが暴れだしたら子供たちが危険だしなあ。
「やあやあ、お兄さん。最近この村にやってきた人かな?」
どうするかなーなんて考えてたら、背中に女性を乗せた一頭のブラックカウが近づいてきた。
背中に乗っている女性は俺よりも年上……とはいってもこの世界の人間は一様にガリガリに痩せて発育不良だからあんまり年上感はないけども。
最初はブラックカウが話しかけてきたのかと思ったが、ブラックカウにうつ伏せで寝そべって乗っている女性が話しかけてきたようだ。
「ええっと、君がリリーかな?」
「ん? そうだよ」
「はじめまして。俺はマサト。この国を旅しながら料理や農業の知識を広めている旅人だよ」
「おお、はじめましてー。私はリリー。この村で祈りながら暮らしている人間だよ。……ああ、この子達は滅多なことじゃあ振り落としたりしないから安心してほしいよ」
確かにブラックカウを食材鑑定してみても温厚と出ているから、直接危害を加えたりしない限りは暴れたりはしないんだろうけど……。
とはいえ、やはり心臓には悪い光景だな。
「君は獣と意思疎通ができるのかな?」
「ん? そういうわけでもない……かな。なんとなく獣に好かれやすい体質というか、勝手に寄ってくるんだよ」
ほー、これはワンチャンあるか?
『個体名:リリー 種族:人間 性別:女 年齢:二十歳 天職:酪農家 食用:可 雑食性のために臭みがあることが多い。食用可能だが臭み取りに時間と手間がかかる。同種族の食肉は禁忌とされているので推奨はしない
ステータス 力:1 素早さ:1 頑健さ:2 器用:5 知力:1 運:1』
食材鑑定の結果はこれか……酪農家、確か乳牛を育ててミルクやチーズを作るのが酪農家で、牛や豚を育てて肉を取るのが畜産農家だっけ。
これはいけるかもしれないな。
「そう言ってもらえると張り合いが出ますね」
今居るのは聖王国の中でも中心に近い村だ。
本当は巡礼者とか国の中枢に近い人間が来そうな中央付近は避けようかとも思ってたんだが、村をたどっていくとどうしても中央付近に近づかなければならないことと、せっかく村の近くまで来たのに避けて通るのもなんか違うということでこの辺でも農業と料理の知識を広めている。
「それにしたって、子供らと遊んでるあの獣が食べられるものだったなんてねぇ」
「この村の周辺にある植物と塩で味付けしてあるので慣れれば誰にでも作れるようになると思いますよ」
「ああ、村の鍛冶師の天職持ちに焼くための石版も作ってもらったし、火の魔法持ちもいるからね」
「っていうか、この村の子供ってあの獣と遊んでるんですか?」
この村の周辺にいる獣はグリーンバッファローじゃなくて、ブラックカウという種類だった。
性格が温厚らしいけど、それでも人間よりもでかい獣と遊ぶとか勇気があるな。
「昔はそうでもなかったんだけどね。この村にはいやに獣に好かれる子がいてね。その子が獣に懐かれるようになってから他の子も獣と遊ぶようになったんさね」
「へー、そんな子がいるんですか。その子の名前は?」
「リリーって子でね。もう大人だっていうのに祈りの時間が終わればいまだに獣と戯れとるよ」
ほうほう、それはもしかしたら逸材かもしれないな。
ブラックカウもグリーンバッファローと同じで搾乳が可能だし、もしかしたら牛乳が手に入る可能性が……。
「ああでも、獣もあんまり食べるといなくなっちゃうんでその辺は手加減してやってくださいね」
「大丈夫、大丈夫。ここらの獣は繫殖力が強くてたまに鳥型の魔獣とかにも襲われてるけどいなくなる気配がないし。それにあたしたちもそんなにいっぱいは食べないからねぇ」
「そうなんですね。まあ、畑ができたら畑を襲ってくる獣も出るでしょうから、そういったのから優先して食べてもらえれば」
「そうだねえ。この辺の獣も草原の草ばっかり食べてるから畑ができたらそっちに来るかもねぇ」
そんなこんなで村の代表である女将さんとの話も終わった。
獣と戯れてるリリーって子は祈りの時間以外は獣の近くにいるから、獣の群れがいるところに大人の女がいればそれがリリーって話だ。
どの程度、獣に好かれているのかはわからないが見ておく価値はありそうだな。
「はえー、すっごい」
いや、なんぞアホな声が出てしまったが、現実、すごい光景だ。
群れとでも呼ぶべきブラックカウの集団が草原の草を食み、その背の上には少年少女が寝転がっている。
いやいや、確かに獣は草食で人間を食べようとはしないけど、あれは危ないだろう。
とはいえどうしたものか……下手に声をかけたり近づいてブラックカウが暴れだしたら子供たちが危険だしなあ。
「やあやあ、お兄さん。最近この村にやってきた人かな?」
どうするかなーなんて考えてたら、背中に女性を乗せた一頭のブラックカウが近づいてきた。
背中に乗っている女性は俺よりも年上……とはいってもこの世界の人間は一様にガリガリに痩せて発育不良だからあんまり年上感はないけども。
最初はブラックカウが話しかけてきたのかと思ったが、ブラックカウにうつ伏せで寝そべって乗っている女性が話しかけてきたようだ。
「ええっと、君がリリーかな?」
「ん? そうだよ」
「はじめまして。俺はマサト。この国を旅しながら料理や農業の知識を広めている旅人だよ」
「おお、はじめましてー。私はリリー。この村で祈りながら暮らしている人間だよ。……ああ、この子達は滅多なことじゃあ振り落としたりしないから安心してほしいよ」
確かにブラックカウを食材鑑定してみても温厚と出ているから、直接危害を加えたりしない限りは暴れたりはしないんだろうけど……。
とはいえ、やはり心臓には悪い光景だな。
「君は獣と意思疎通ができるのかな?」
「ん? そういうわけでもない……かな。なんとなく獣に好かれやすい体質というか、勝手に寄ってくるんだよ」
ほー、これはワンチャンあるか?
『個体名:リリー 種族:人間 性別:女 年齢:二十歳 天職:酪農家 食用:可 雑食性のために臭みがあることが多い。食用可能だが臭み取りに時間と手間がかかる。同種族の食肉は禁忌とされているので推奨はしない
ステータス 力:1 素早さ:1 頑健さ:2 器用:5 知力:1 運:1』
食材鑑定の結果はこれか……酪農家、確か乳牛を育ててミルクやチーズを作るのが酪農家で、牛や豚を育てて肉を取るのが畜産農家だっけ。
これはいけるかもしれないな。
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