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3.5章 閑話

05 道中 ウィリアム視点

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 私の名前はウィリアム、シェリルバイト領の騎士団で団長を務めている。
 団長とは言ってもそこまで大したものでもない。
 私よりも強い人は騎士団内にもいるし、戦闘指揮の天職を持っているので指示出しや戦闘時のバフを期待されてのことだ。

 だから、騎士団内には少数とはいえ私のことを軽んじる人間もいる。
 特に今回連れてきたやつは騎士団内の問題児で、領主様の縁戚の息子だからか横柄な態度をし続けていて、騎士団内でも嫌っている人間が多い。
 いっそ、魔獣の前にでも晒して殉職に追い込んでしまいたいくらいだ。

 それにしてもアイリーンのやつ、新しい鍋を注文するのはいいのだが、運び手に私を指名するというのはどういうことだ。
 ジョシュア様も領主権限とか言い出して、私に運ぶように言ってくるし……。
 やはり、アイリーンから届けられたあの手紙に書いてあった例の人間のことが原因なのだろうな。
 確か自信を神の使いとか自称していて、不思議な技術で食料を増やしているとか。
 本来なら獣や魔獣の被害報告のない地域の荷運びなど新人の仕事なのだが、そのようなことが本当ならある程度権限のある人間が確かめなければならないのも確かだ。

「団長っ! お休みのところ申し訳ありませんが報告がありますっ!」

 見張りを新人隊員に持ち回りでさせて就寝していたところに新人騎士がやってきた。
 任務中の睡眠は浅くなるからすぐに目が覚める。

「どうした? 確か今の時間帯はお前の班が警戒担当だろう?」

 星の位置から現在の時間帯を大雑把に把握したが、ちょうど見張りの交代時間くらいだろう。

「それが、前の班から引き継ぎが来ないので見張り場所まで行ったら前の班員がいないのです」

「見張りがいなかったのか? 魔獣にでも食われたか?」

 確かこいつらの前は例の問題児が班長を務めている班のはずだ。
 だからこそ、そんな軽口をたたいてしまった。

「いえ、魔獣や戦闘の痕跡はありませんでした」

 戦闘の気配がないのに見張りがいない……ということは……まさか。

「脱走か?」

「脱走というより、村のほうに先に行ったのではないかと……」

 今回の任務は荷運びだというのに荷物を置いて騎士団員が先に行くなど何を考えているか……。

「例の団員がこぼしていたそうなのですが、このような荷運びは騎士の仕事ではないとか、こんな仕事をさせた依頼人には思い知らせてやらないととか」

 もしや、領主様に届いたアイリーンからの手紙の内容がアイツのところにも何らかの形で届いたのか?
 領主様に届けられる手紙や荷物はあらかじめ領主館にある専門の部署で検められるから、内容が縁戚であるアイツのところに届いても不思議ではないだろう。
 とはいえ、このような夜半に動くわけにもいかない。

「報告御苦労。お前たちは見張りを続けろ。夜が明け次第全速力で抜け出したやつらを追う」

「はっ!」

 騎士だけなら夜の間に進むことも可能だが、荷物があるうえに夜の間は活発になる魔獣が多い。
 騎士の怪我ならポーションで治療可能だが、荷運びに使っているエメラルドホースが傷つけば荷運びに支障が出るからな。
 はあっ、勝手に行動した問題児たちが何の問題も起こしてなければいいのだが……。

 いや、いっそのこと大問題でも起こしてくれれば処刑の言い訳にもなるから問題の一つ二つ起こしてくれていた方がいいのか?
 規律や規則を守れないだけでなく、任務を勝手に放棄するような人間は騎士団はおろか領のためにもいないほうがいい。
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