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3.5章 閑話

04 無作法なアイツ 調合師視点

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 私の名前はアイリーン、何の変哲もない村で調合師をしている女よ……ってこの説明いる?

 まあいいわ。
 私の天職である調合師っていうのはポーションを作れる唯一の天職で、すべての人々はこのポーションがなければ生きていけないのよ。
 だというのに、あの男。
 私のポーションを断ったどころか、ポーションがなくても食事をしっかりとればいいだなんて……。

 言っとくけど、私は国に認められた数少ない調合師で、王族や貴族に次ぐような身分なんだからね。
 まあ、あの男の作ってきた料理とやら……その辺に打ち捨ててた誰も見向きもしなかった獣の肉は確かにおいしかったけど。
 でもねえ、貴重な調合師に対して毎朝、かまどに火をつけて回れなんて普通の人間なら言わないんだからね。

 村長からもよろしく言われたし、村人たちの食べるものが増えるから手伝うのは別にいいんだけど、食事が豊富になったら私の作ったポーションの需要が減るじゃない!
 そんなことを言ったら、あの男、作る量が減るならもっと効能の高いポーションを作ればいいだろ、なんて……。

 なんて、素晴らしいことを言うのよ!
 そう、私はもっといろんな種類のポーションを作りたくて調合師の道を進んだのよ。
 この国ではポーションが必須だから、作らせてもらえるのは材料が豊富で作りやすいポーションばかり……。

 でもね、調合師のスキルで植物を見ればポーションに使えそうな素材はいろんなところにあるの。
 もちろん私は調合師の集まりでポーションの新しい可能性について語ったわよ。
 でも調合師を監督する国の部署からはそんなことを考える暇があるなら一本でも多くのポーションを作れって言われちゃったのよ。

 まったく、人類の新たな可能性を潰すなんて、なんて視野の狭い考えだ事!
 とはいえ、国から出るお給料で生きている身としては上から言われれば従うしかないのよ。
 それにこの国の人たちがポーションなしでは生きられないこともわかっていたから、そういった好奇心は抑えることにしていたのよ。

 でも、でもね、これからは違うの。
 悔しいけどあの男のおかげでポーションの需要が減るから、新しいポーションの研究をする余裕が生まれるの。
 だから村長にこれからはポーションを作らないで新しいポーションの研究をするって宣言したら、ものすごい怒られたわ。
 収穫時期以外では食料に余裕があるわけじゃないから、ポーションが必要だって。

 まあねえ、この国では年中、野菜や果物が育つけど、それでも収穫直前なんかは食料が少なくて平民の中には食事ができなくてポーションだけで生活する人もいるくらいだからね。
 だから、ポーションを作らなくてもいいわけじゃないし、怪我や病気に備えてポーションの備蓄も必要だからこれまでより量は少なくてもポーションは作らなくちゃいけないって。

 言ってることは理解できるからとりあえず新しいポーションは、いったん諦めていつも通りにポーションを作ることにしたわ。
 でもね、完全にあきらめたわけじゃないから。
 だからね、中央に働きかけて新人をこの村に呼び寄せて私はポーションの研究をすることを認めさせようと思ってるの。

 とりあえず、領主様に手紙を書いたわ。
 あの男と村長の要望で新しい鍋が必要だったからちょうどいいしね。
 手紙には新しい技術として料理の必要性と、それに鍋が必要だから新調したいこと、あとは肉を焼くのにフライパンとか言う底の浅い鍋が必要らしいからソレも注文しておいたわ。
 とりあえず、底の浅い鍋とか言っておけば鍛冶師連中なら理解できるでしょう。
 ……作ってもらえるかは運しだいだけどね。
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