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3章 王都
17 国王
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「陛下、私たちはこのあたりで退席させてもらいましょう。これ以上我が領の客人に対して無礼をするわけにはいきませんから」
「まて、子爵。確かに宰相はやりすぎだが、ポーションを使っていないなどそう簡単に信じられる話ではないだろう」
ああ、要するに国王としても俺がポーションを使っているからなんかしらの対価を払うべきだというのが根底にあったのだろう。
まあ、国の財源を使っているのだから、何かしらの還元を求めるのは国王としては正しいのだろう。
とはいえ、それを前面に押し出してしまうのも国王としての器量を疑われるから、宰相の無茶に乗っかった形か。
「陛下、嘘ではありません。現に客人には私たちからポーションは与えていませんし、我が領の人間のポーション使用率も下がってきています。シェリルバイト家や騎士団ではポーションを1月以上飲まないことも珍しくはありません」
俺と生活するようになってからレイジとミーナはポーションを口にしていないし、食堂に入り浸っていたイーリスたちもポーションを口にすることはなかったみたいだ。
ウィリアムさんやランドールさんみたいな騎士団の人間はけがをした際にはポーションを口にしていたみたいだが、飢えをしのぐために口にすることはなかった。
「それが客人の能力なのか? 神の加護と言っていたが…」
「いいえ、料理の技術が伝わるにつれて食料が増えましたので、ポーションに頼る必要がなくなったのです。……陛下、料理の技術が広まるというのはそういうことです。ポーションを与えて国民を支配する方法はできなくなります」
まあ、為政者としてはポーションを与えておけば従順になる国民というのは都合がいいだろうから、欲にまみれた人間なら料理の技術が広まるのを良しとはしないかもしれないな。
とはいえ、こっちとしては神様に頼まれているから広まってもらわないと困るんだけど。
「ポーションが必要なくなる……ならば、なぜ子爵は客人に好きにさせておるのだ」
「我が領は元より領民のためになるのなら権力など必要としていないからです。強権が振るえなくなることよりも、領民が植えることもなく生活できることが重要です」
「……ふむ。…確かに国民が飢えることは我としても憂慮していた」
「それに料理を食べることによって得られることもあるのです。……まあ詳しくはまた王城に訪れた時にお知らせしましょう」
「客人よ……宰相の無礼は謝罪するゆえに王城への士官をもう一度考えてくれぬか」
「残念ですが、宰相の件がなかったとしても要請に応えることはできません。私にとってはこの国の王よりも神様によってもたらされた使命のほうが大事ですので」
結局のところはそこに回帰する。
いくら一国の王が謝罪を行おうと、神様の使命に勝るものではない。
まあ、今回の召喚状がなければもう少し王都で食堂を経営するのも悪くはなかったのだが、権力によって活動が制限されるのならこの国にいる意味も少ないだろう。
王都にいる限り召喚状を無視するわけにもいかない以上、王城に呼ばれまくるのは目に見えている。
「仕方がないな。……子爵、ならびに客人の退出を許す」
「では、退席させていただきます」
その後は特に問題もなく、王城を脱出することができた。
正直な話、あの宰相や食堂に押しかけてきた令嬢の父親あたりが絡んでくると思っていたのだが、ランドールさん曰く、流石にあそこまでの騒ぎを起こせば宰相は当分の間は拘束されるらしい。
ちなみに、リッシー伯爵とかいう令嬢の父親は顔を青ざめながら震えていたそうだ。
顔を知らないからよくは分からなかったが、謁見場にいた貴族の何人かは顔色が悪くなっていたからその中の誰かだったんだろう。
「しかし、盛大に国王に反旗を翻す形になりましたけど、ランドールさんたちは本当に大丈夫なんですか?」
「まあ、我が家は子爵の地位にいるけど、国王陛下に対して貸しがたくさんあるからね。それに王都の騎士団がシェリルバイト領に攻め入ってきても、マサト君のおかげでシェリルバイト領の兵力は増強されているから問題ないよ」
まあ、レイジの成長具合を考えれば王都の騎士団や傭兵なんかはウィリアムさんをはじめとした騎士団の相手にもならないだろう。
レイジに聞く限りでは、レイジ一人で倒せるホーンピッグに対して騎士団や傭兵は数十人単位で狩りを行って負傷者が大量に出るらしいし。
「とはいえ、私としてはマサト君たちと別れなければならないのは残念なのですよ。陛下が召喚状なんて出さなければもう少し一緒にいられたのですがね」
「まあ、流石に起こってしまったことは仕方がないでしょうね。このままこの国にいると王城への呼び出しが頻繁に起こりそうなので、出国は変えられません」
「そうですね。こっちの後始末は私や父に任せて、マサト君は当初の目的を優先してください。……ただ、聖王国の貴族や王族も宰相につながる人間がいるので、地盤が整うまでは貴族に絡まないほうがいいでしょう」
聖王国は王都からみて北の方角にある国らしいし、あの宰相の領地も北の方らしい。
まあ、国境に接するわけではないらしいが付き合いが皆無というわけではないのだろう。
「シェリルバイト家が懇意にしているような貴族はいないのですか?」
「我が家はどちらかといえば迷宮都市のほうに近いですからね。国王陛下に対しての説明が終わりましたら、聖王国の方にも説明させますので」
まあ、この国でもウィリアムさんたちが村へ来なければ貴族にかかわるつもりはなかったし、料理の技術を広める過程で貴族は大事でもないから問題ではないだろう。
「まあ、当分は市井に対して料理の技術を広めるほうを優先させますよ。他国なら王国とは違う食材が見つかるかもしれませんしね」
「まて、子爵。確かに宰相はやりすぎだが、ポーションを使っていないなどそう簡単に信じられる話ではないだろう」
ああ、要するに国王としても俺がポーションを使っているからなんかしらの対価を払うべきだというのが根底にあったのだろう。
まあ、国の財源を使っているのだから、何かしらの還元を求めるのは国王としては正しいのだろう。
とはいえ、それを前面に押し出してしまうのも国王としての器量を疑われるから、宰相の無茶に乗っかった形か。
「陛下、嘘ではありません。現に客人には私たちからポーションは与えていませんし、我が領の人間のポーション使用率も下がってきています。シェリルバイト家や騎士団ではポーションを1月以上飲まないことも珍しくはありません」
俺と生活するようになってからレイジとミーナはポーションを口にしていないし、食堂に入り浸っていたイーリスたちもポーションを口にすることはなかったみたいだ。
ウィリアムさんやランドールさんみたいな騎士団の人間はけがをした際にはポーションを口にしていたみたいだが、飢えをしのぐために口にすることはなかった。
「それが客人の能力なのか? 神の加護と言っていたが…」
「いいえ、料理の技術が伝わるにつれて食料が増えましたので、ポーションに頼る必要がなくなったのです。……陛下、料理の技術が広まるというのはそういうことです。ポーションを与えて国民を支配する方法はできなくなります」
まあ、為政者としてはポーションを与えておけば従順になる国民というのは都合がいいだろうから、欲にまみれた人間なら料理の技術が広まるのを良しとはしないかもしれないな。
とはいえ、こっちとしては神様に頼まれているから広まってもらわないと困るんだけど。
「ポーションが必要なくなる……ならば、なぜ子爵は客人に好きにさせておるのだ」
「我が領は元より領民のためになるのなら権力など必要としていないからです。強権が振るえなくなることよりも、領民が植えることもなく生活できることが重要です」
「……ふむ。…確かに国民が飢えることは我としても憂慮していた」
「それに料理を食べることによって得られることもあるのです。……まあ詳しくはまた王城に訪れた時にお知らせしましょう」
「客人よ……宰相の無礼は謝罪するゆえに王城への士官をもう一度考えてくれぬか」
「残念ですが、宰相の件がなかったとしても要請に応えることはできません。私にとってはこの国の王よりも神様によってもたらされた使命のほうが大事ですので」
結局のところはそこに回帰する。
いくら一国の王が謝罪を行おうと、神様の使命に勝るものではない。
まあ、今回の召喚状がなければもう少し王都で食堂を経営するのも悪くはなかったのだが、権力によって活動が制限されるのならこの国にいる意味も少ないだろう。
王都にいる限り召喚状を無視するわけにもいかない以上、王城に呼ばれまくるのは目に見えている。
「仕方がないな。……子爵、ならびに客人の退出を許す」
「では、退席させていただきます」
その後は特に問題もなく、王城を脱出することができた。
正直な話、あの宰相や食堂に押しかけてきた令嬢の父親あたりが絡んでくると思っていたのだが、ランドールさん曰く、流石にあそこまでの騒ぎを起こせば宰相は当分の間は拘束されるらしい。
ちなみに、リッシー伯爵とかいう令嬢の父親は顔を青ざめながら震えていたそうだ。
顔を知らないからよくは分からなかったが、謁見場にいた貴族の何人かは顔色が悪くなっていたからその中の誰かだったんだろう。
「しかし、盛大に国王に反旗を翻す形になりましたけど、ランドールさんたちは本当に大丈夫なんですか?」
「まあ、我が家は子爵の地位にいるけど、国王陛下に対して貸しがたくさんあるからね。それに王都の騎士団がシェリルバイト領に攻め入ってきても、マサト君のおかげでシェリルバイト領の兵力は増強されているから問題ないよ」
まあ、レイジの成長具合を考えれば王都の騎士団や傭兵なんかはウィリアムさんをはじめとした騎士団の相手にもならないだろう。
レイジに聞く限りでは、レイジ一人で倒せるホーンピッグに対して騎士団や傭兵は数十人単位で狩りを行って負傷者が大量に出るらしいし。
「とはいえ、私としてはマサト君たちと別れなければならないのは残念なのですよ。陛下が召喚状なんて出さなければもう少し一緒にいられたのですがね」
「まあ、流石に起こってしまったことは仕方がないでしょうね。このままこの国にいると王城への呼び出しが頻繁に起こりそうなので、出国は変えられません」
「そうですね。こっちの後始末は私や父に任せて、マサト君は当初の目的を優先してください。……ただ、聖王国の貴族や王族も宰相につながる人間がいるので、地盤が整うまでは貴族に絡まないほうがいいでしょう」
聖王国は王都からみて北の方角にある国らしいし、あの宰相の領地も北の方らしい。
まあ、国境に接するわけではないらしいが付き合いが皆無というわけではないのだろう。
「シェリルバイト家が懇意にしているような貴族はいないのですか?」
「我が家はどちらかといえば迷宮都市のほうに近いですからね。国王陛下に対しての説明が終わりましたら、聖王国の方にも説明させますので」
まあ、この国でもウィリアムさんたちが村へ来なければ貴族にかかわるつもりはなかったし、料理の技術を広める過程で貴族は大事でもないから問題ではないだろう。
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