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3章 王都

15 緊張

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「あー、なんか緊張してきましたね」

 王城へと続く道をシェリルバイト家の車で走っている最中なのだが、滅茶苦茶緊張してきた。
 シェリルバイト領からの荷物は既に食堂に運び込んで、食堂は収納してあって車内にはランドールさんだけではなくレイジとミーナも同乗している。
 まあ、謁見が済んだら一緒にこの国から脱出するのだから謁見場にも一緒に行こうという話になったのだ。

「そこまで緊張しなくても大丈夫だよ。陛下は横暴な方ではないからね。ただ、リッシー伯爵と宰相には気を付けたほうがいいかもしれない」

「この前の令嬢の父親がリッシー伯爵ですよね。…でも宰相も危険なんですか?」

「宰相はリッシー伯爵の家が所属する派閥の上役だからね。それに王城の近衛兵の中にも私兵を送り込んでいるという噂だし、注意するに越したことはないよ」

 まあ、謁見となれば武器も取り上げられるだろうから兵に囲まれたら危険かな。
 とはいえ、俺には神様の加護があるから攻撃を受けたらその威力を二倍にして相手に返してしまうのだが……。
 レイジとミーナも契約によって神様の加護が発動している状態だから、一番危険なのはランドールさんか……。
 まあ、王国の貴族であるランドールさんを攻撃したら内戦になりかねないし、流石にそこまではしないだろう。

「マサト兄ちゃん、僕たちは後ろで黙っていればいいんだよね?」

「ああ、基本的に受け答えは俺がやるからレイジとミーナは黙っていていいぞ。まあ、国王から何か質問されたら答える必要があるかもしれないが」

 言われそうなことといえば、俺がこの国に留まらないと答えた後に、レイジとミーナを引き留めることだろうが。

「マサト君には伝えてあるけれど、この国の国民の定義は国からポーションを受け取っている人間なんだ。シェリルバイト領に来てから一度もポーションを受け取っていないマサト君はもちろん、二年以上もポーションを受け取っていないレイジ君とミーナ君も国民とは呼べないから、何か言われたら本心を話していいからね」

 要するにそういうことらしい。
 国民の基準がポーションを受け取っているかどうかっていうのは、ガバガバじゃないかとも思ったのだが、ポーションなしで生きていける人間がいなかったから問題なかったらしい。
 他国からの来賓や旅商人なんかは、ポーションを金銭などで買い取っているから国民じゃないらしい。
 俺たちはポーションを買っているわけではないが、国から支給されているわけでもないから国民とは呼べない……ということらしい。

「このあたりの法律もマサト君たちが去っていったら陛下に奏上して変えてもらわないとダメだろうけどね。現に、シェリルバイト領ではポーションを必要としていない人も増えてきているし」

 シェリルバイト領だけの問題ならランドールさんの権限でどうにかできるのかもしれないが、周辺の領や王都にも料理が広がっていけばポーションで国民かどうかを判別するのは難しくなるだろう。
 前の世界では届を出したりして役所が把握していたけど、あれは情報通信網が整っていないと不可能だし、俺にアドバイスできるようなことでもないからランドールさんや国王に任せるしかないかな。

「マサトさん、お城についたみたいですよ」

 ミーナの言う通り、車は王城前まで到着したみたいだ。
 比べるのはかわいそうだけど、シェリルバイト領の領事館やタウンハウスとはやっぱり違うな。
 まあ、シェリルバイト家の人は自分たちの生活環境で見栄を張るよりも、領民の生活向上に金を使ってたっぽいから仕方がないか。

「あー、やっぱり緊張してきたな」

 緊張してきた、というか面倒で帰りたい、というのが本音だが流石にランドールさんが目の前で言うわけにもいかないしな。
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