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3章 王都

14 召喚状

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「すまん、マサト君」

 王国からの出国準備も順調に進み、明日の朝一番でくるシェリルバイト領からの荷馬車の荷物を積み込めばいつでも出ていけるというときにランドールさんがやってきて謝罪し始めた。

「……召喚状ですか」

 ランドールさんが持ってきたのはこの国の国王からの召喚状で、シェリルバイト領の客人である俺を王城に呼び出すものらしい。

「おそらくはこの前やってきた令嬢の父、リッシー伯爵が国王陛下をそそのかしたのだろう」

「これって拒否はできないんですよね」

「できなくはないが、明確な理由もなく拒否すればこの国はおろか周辺国にも圧力がかかるだろうな」

 まあ、そうだろうな。
 国民ではないとはいえ、国王からの正式な召喚状を無視して何のお咎めもなければ、それは国としてはダメだろう。

「召喚される理由は何か書いてあるんですか?」

「いや、おそらく陛下はマサト君に会いたいだけだろう。まあ、できることならこの国に留まるか王城に勤めることを勧められるかもしれないが、強硬手段はとってこないだろう」

「結構信用してるんですね」

「わきまえておられる方だからね。もしも王族としての権力で人を縛るような方なら父が臣下としてきちんと諫めているよ」

 なるほど、ランドールさんとしては国王への信頼もあるけど、それ以上にジョシュアさんへの信頼があってのことか。
 まあ、ランドールさんは国王との付き合いはそれほど深くないだろうからそんなもんかな。

「でも、国王の要請を断ったらランドールさん……というか、シェリルバイト家に何かお咎めとかあるんじゃないですか?」

「ああ、そのあたりは心配しなくても大丈夫だよ。我が家は建国から王家を支えている重鎮だからね。陛下といえどもそう簡単に罰は下せないし、そもそも料理関連では我が家に頼るしかないからその辺をカードにすれば何も言えないよ」

 さらっと言ってるけど、それって国王を脅迫することになるんじゃ……。
 まあ、本人が大丈夫と言っているのなら俺が口を出すことでもないのかな。

「召喚状では明日の昼過ぎに登城するように書いてあるから、荷物を食堂に運んでそれから行こうか」

「ということは、国王に謁見してから国を去るということで大丈夫ですかね」

「ああ、陛下はともかく他の貴族がどう出るかはわからないからね。召喚に応えたら指名手配まではできないだろうし、この国からは手早く去った方がいいだろうね」

「わかりました。まあ、穀物関係以外は結構な量の備蓄ができているし、王都での用事も大体済ませましたからね」

 エリックやルッカもそれなりの料理はできるようになってきているし、これ以上の研鑽を積むのなら俺たちについてくるかシェリルバイト領に戻るかになるだろうな。
 爆弾米やホーンピッグなんかの王都でしか補充できない食材もかなりの量の備蓄ができたから、レイジとミーナと俺の三人なら数か月は旅をしても問題ないだろう。
 それ以上の日数になると、野菜や穀物はともかく肉類が不安だが、レイジの実力があれば三人が食べるのに困らない量の獲物をとるのもそう難しくないだろうしな。

「ああ、そうそう。このタウンハウスの人員もマサト君たちが去ったら私と一緒にシェリルバイト領に帰ることになっているから、その辺は心配しないでくれ」

 まあ、領の客人が国王の要請を断ったら領民に対して何らかの横暴な手段に出るような人間もいるだろうしな。
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