79 / 150
3章 王都
14 召喚状
しおりを挟む
「すまん、マサト君」
王国からの出国準備も順調に進み、明日の朝一番でくるシェリルバイト領からの荷馬車の荷物を積み込めばいつでも出ていけるというときにランドールさんがやってきて謝罪し始めた。
「……召喚状ですか」
ランドールさんが持ってきたのはこの国の国王からの召喚状で、シェリルバイト領の客人である俺を王城に呼び出すものらしい。
「おそらくはこの前やってきた令嬢の父、リッシー伯爵が国王陛下をそそのかしたのだろう」
「これって拒否はできないんですよね」
「できなくはないが、明確な理由もなく拒否すればこの国はおろか周辺国にも圧力がかかるだろうな」
まあ、そうだろうな。
国民ではないとはいえ、国王からの正式な召喚状を無視して何のお咎めもなければ、それは国としてはダメだろう。
「召喚される理由は何か書いてあるんですか?」
「いや、おそらく陛下はマサト君に会いたいだけだろう。まあ、できることならこの国に留まるか王城に勤めることを勧められるかもしれないが、強硬手段はとってこないだろう」
「結構信用してるんですね」
「わきまえておられる方だからね。もしも王族としての権力で人を縛るような方なら父が臣下としてきちんと諫めているよ」
なるほど、ランドールさんとしては国王への信頼もあるけど、それ以上にジョシュアさんへの信頼があってのことか。
まあ、ランドールさんは国王との付き合いはそれほど深くないだろうからそんなもんかな。
「でも、国王の要請を断ったらランドールさん……というか、シェリルバイト家に何かお咎めとかあるんじゃないですか?」
「ああ、そのあたりは心配しなくても大丈夫だよ。我が家は建国から王家を支えている重鎮だからね。陛下といえどもそう簡単に罰は下せないし、そもそも料理関連では我が家に頼るしかないからその辺をカードにすれば何も言えないよ」
さらっと言ってるけど、それって国王を脅迫することになるんじゃ……。
まあ、本人が大丈夫と言っているのなら俺が口を出すことでもないのかな。
「召喚状では明日の昼過ぎに登城するように書いてあるから、荷物を食堂に運んでそれから行こうか」
「ということは、国王に謁見してから国を去るということで大丈夫ですかね」
「ああ、陛下はともかく他の貴族がどう出るかはわからないからね。召喚に応えたら指名手配まではできないだろうし、この国からは手早く去った方がいいだろうね」
「わかりました。まあ、穀物関係以外は結構な量の備蓄ができているし、王都での用事も大体済ませましたからね」
エリックやルッカもそれなりの料理はできるようになってきているし、これ以上の研鑽を積むのなら俺たちについてくるかシェリルバイト領に戻るかになるだろうな。
爆弾米やホーンピッグなんかの王都でしか補充できない食材もかなりの量の備蓄ができたから、レイジとミーナと俺の三人なら数か月は旅をしても問題ないだろう。
それ以上の日数になると、野菜や穀物はともかく肉類が不安だが、レイジの実力があれば三人が食べるのに困らない量の獲物をとるのもそう難しくないだろうしな。
「ああ、そうそう。このタウンハウスの人員もマサト君たちが去ったら私と一緒にシェリルバイト領に帰ることになっているから、その辺は心配しないでくれ」
まあ、領の客人が国王の要請を断ったら領民に対して何らかの横暴な手段に出るような人間もいるだろうしな。
王国からの出国準備も順調に進み、明日の朝一番でくるシェリルバイト領からの荷馬車の荷物を積み込めばいつでも出ていけるというときにランドールさんがやってきて謝罪し始めた。
「……召喚状ですか」
ランドールさんが持ってきたのはこの国の国王からの召喚状で、シェリルバイト領の客人である俺を王城に呼び出すものらしい。
「おそらくはこの前やってきた令嬢の父、リッシー伯爵が国王陛下をそそのかしたのだろう」
「これって拒否はできないんですよね」
「できなくはないが、明確な理由もなく拒否すればこの国はおろか周辺国にも圧力がかかるだろうな」
まあ、そうだろうな。
国民ではないとはいえ、国王からの正式な召喚状を無視して何のお咎めもなければ、それは国としてはダメだろう。
「召喚される理由は何か書いてあるんですか?」
「いや、おそらく陛下はマサト君に会いたいだけだろう。まあ、できることならこの国に留まるか王城に勤めることを勧められるかもしれないが、強硬手段はとってこないだろう」
「結構信用してるんですね」
「わきまえておられる方だからね。もしも王族としての権力で人を縛るような方なら父が臣下としてきちんと諫めているよ」
なるほど、ランドールさんとしては国王への信頼もあるけど、それ以上にジョシュアさんへの信頼があってのことか。
まあ、ランドールさんは国王との付き合いはそれほど深くないだろうからそんなもんかな。
「でも、国王の要請を断ったらランドールさん……というか、シェリルバイト家に何かお咎めとかあるんじゃないですか?」
「ああ、そのあたりは心配しなくても大丈夫だよ。我が家は建国から王家を支えている重鎮だからね。陛下といえどもそう簡単に罰は下せないし、そもそも料理関連では我が家に頼るしかないからその辺をカードにすれば何も言えないよ」
さらっと言ってるけど、それって国王を脅迫することになるんじゃ……。
まあ、本人が大丈夫と言っているのなら俺が口を出すことでもないのかな。
「召喚状では明日の昼過ぎに登城するように書いてあるから、荷物を食堂に運んでそれから行こうか」
「ということは、国王に謁見してから国を去るということで大丈夫ですかね」
「ああ、陛下はともかく他の貴族がどう出るかはわからないからね。召喚に応えたら指名手配まではできないだろうし、この国からは手早く去った方がいいだろうね」
「わかりました。まあ、穀物関係以外は結構な量の備蓄ができているし、王都での用事も大体済ませましたからね」
エリックやルッカもそれなりの料理はできるようになってきているし、これ以上の研鑽を積むのなら俺たちについてくるかシェリルバイト領に戻るかになるだろうな。
爆弾米やホーンピッグなんかの王都でしか補充できない食材もかなりの量の備蓄ができたから、レイジとミーナと俺の三人なら数か月は旅をしても問題ないだろう。
それ以上の日数になると、野菜や穀物はともかく肉類が不安だが、レイジの実力があれば三人が食べるのに困らない量の獲物をとるのもそう難しくないだろうしな。
「ああ、そうそう。このタウンハウスの人員もマサト君たちが去ったら私と一緒にシェリルバイト領に帰ることになっているから、その辺は心配しないでくれ」
まあ、領の客人が国王の要請を断ったら領民に対して何らかの横暴な手段に出るような人間もいるだろうしな。
6
お気に入りに追加
610
あなたにおすすめの小説

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる