上 下
73 / 150
3章 王都

08 開店準備

しおりを挟む
「というわけで、今日からは食堂の運営について準備を始めていくぞ」

「具体的にはどうするの、マサト兄ちゃん?」

「レイジはこれまで通りライアンさんたちと組んで食材の採集をお願いするよ」

「わかった」

 俺の言葉にレイジが頷く。
 野菜中心の料理を並べてもいいのだが、やはりバランスを考えれば肉も欲しいからな。

「エリックとルッカは食堂で作れる料理も覚えていってほしい」

「マサトさん、どんな料理を基本にするんですか?」

「そうだな、サンドイッチとフルーツジュースは食堂でもメインにするつもりだ。あとは、ホーンピッグを中心にした料理だな。食堂を作った後は燻製室を使って加工肉も作ってみるつもりだ」

 ベーコンやソーセージを作ればパスタなんかも作りやすくなるしな。
 それに肉を運ぶ手段が少ないこの世界では燻製なんかは重宝するだろう。

「カツサンドはもう教えていますから、お米の炊き方とかを中心に教えますね。あと、燻製室の使い方はきちんとわたしにも教えてくださいね」

 やはりミーナはやることを伝えればすぐに応えてくれるのでやりやすい。
 まあ、燻製関連でチクチク言われ続けるのもつらいし、作ることになったらちゃんとミーナにも手伝ってもらおう。

「食堂の作成時期とかを中心にランドールさんとは話し合っておくから、みんなも自分のできることから始めておいてほしい」

 二人に後のことは任せて俺はランドールさんのところに行くとするか。
 食堂の作成場所についても聞かなきゃいけないし、食堂の内装についても相談しないとな。

「というわけで、食堂について相談に来ました」

「と言われてもね、食堂自体が王都でも初めてのものだからあまり気張らなくても大丈夫だよ?」

 いやいや、そんなことを言われても貴族のランドールさん目線の気張らないと庶民の俺たち目線の気張らないでは認識が違う可能性もあるからな。

「食堂のテーブルには布をひいておきたいのでその布と、椅子に置くクッションは準備してもらっていいですか?」

「ああ、そういうものは必要だな。シェリルバイト領からきている商会に頼んでおくよ。それと私が連れていく人間はカトラリーは使えるから普通に出して大丈夫だよ」

 確かに、貴族であるシェリルバイト家の人たちは使用人も含めてカトラリーは使えていたから他の貴族もそれくらいは使えるのか。

「それではフォークとナイフは準備しておきますね。皆さんと同じように箸は使えないでしょうから、メニューは箸を使わなくていいものにしますよ」

「そうだね、基本はサンドイッチでいいとは思うけど温かいものも用意してもらえると助かるかな。私たちもそうだったけど温かい食事は衝撃を受けるからね」

 この世界の人間は貴族も庶民も野菜か果物をそのまま食べる食生活だから、温かい料理を食べたことのある人間がいないんだよな。

「それと食堂の作成場所ですが……」

「それならきちんと用意してあるよ。シェリルバイト領で展開していた場所くらいの広さは確保してあるけど、それくらいの広さでよかったかな?」

「ええ、その広さなら十分です」

 領都で用意してもらった場所はかなり広かったからレベル4の食堂も十分作成できるだろう。

「あとは……食堂にくるお客様は」

「そうだね、マサト君にとっては不本意かもしれないけど、当分はシェリルバイト領の周辺貴族から始めさせてもらうよ。他派閥の貴族の中には難癖をつけてきそうな人もいるしね」

「いずれは王都の庶民にも広げていきたいのですが……」

「うん、それもいいだろうけど、貴族を先に案内しておかないといろいろ文句言ってくる人もいるからね。こちらの派閥の貴族に根回しをした後に他派閥の貴族を招待して……それからになるかな」

 あー、やっぱり貴族はめんどくさいんだな。
 シェリルバイト家の人たちは普通に庶民に混じっているような感じの人たちだったからあんまり気にしていなかったが、やはりこの世界で貴族にあんまりかかわるものじゃないかもしれないな。

「まあ、庶民に広げることに関してはタウンハウスの使用人に手伝ってもらってもいいから気長にやってくれると助かるかな」

 ランドールさん含めてシェリルバイト家の人たちにはお世話になっているし、そのくらいは仕方ないか。
 王国の周辺には帝国と聖王国、それに迷宮都市があるらしいから王都にある程度、料理についての知識が広まったら他に移ろうと思っていたのだけど結構時間がかかるかもな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生領主の領地開拓 -現代の日本の知識は最強でした。-

俺は俺だ
ファンタジー
 今年二十歳を迎えた信楽彩生《しんらくかやせ》は突如死んでしまった。  彼は初めての就職にドキドキし過ぎて、横断歩道が赤なことに気がつかず横断歩道を渡ってしまった。  そんな彼を可哀想に思ったのか、創造神は彩生をアルマタナの世界へと転生させた。  彼は、第二の人生を楽しむと心に決めてアルマタナの世界へと旅だった。  ※横読み推奨 コメントは読ませてもらっていますが、基本返信はしません。(間が空くと、読めないことがあり、返信が遅れてしまうため。)

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...