料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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3章 王都

04 準備

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 あれから入れ代わり立ち代わりで見習いやベテランに対してパン作りとジュースづくりを伝授している。
 従者という立場ゆえなのか、皆覚えがよくて一部の人は俺よりも上手にパンを作っている。
 まあ、材料が万全なら俺のほうが上手かもしれないが、いかんせんこの世界の材料だけだと混ぜるタイミングや力加減がシビアに過ぎるのだ。

 そんなわけでタウンハウスでの食事は主にサンドイッチになっている。
 というのも、肉の在庫があまりないからだ。
 一応王都周辺でも獣や魔獣は出るらしいのだが、ライアンさんたちが雇い主であるランドールさんを放り出して狩りに行くこともできず、王城に呼ばれていない段階で兵士や騎士に肉を融通してくれというのも無理なのでこうなっている。
 シェリルバイト領でデビルボアのベーコンを作って、真空パックで保存したのちに冷凍しているのでベーコンはあるのだが、生肉のほうは冷凍含めてそこまでの量がない。
 王都までの旅程でも結構な量を使ってしまったしな。

 というわけで、野菜サンドとベーコンサンドが主になっているわけだが、タウンハウス内での評判は上々。
 この世界では存在しないからしマヨネーズやバターが好評の原因かもしれない。
 まあ、ランドールさんを含めた王都までの旅程に参加していた人には昼食として肉うどんやらミートソースパスタやらをふるまっているが。

 この世界ではやはり昼食をとる文化が浸透していないので、タウンハウス内でも昼食をとるのはシェリルバイト領での生活が長い人間に限られる。
 タウンハウス内にいる使用人は、俺たちがシェリルバイト領につく前からタウンハウスにいる人ばかりなので昼食をとる習慣はない。
 まあ、そうでなくても貴族や騎士でもないのにそこまでの贅沢はできない、みたいな考え方もありそうだが……。

「マサトさん、どうしてお昼は麺類ばかりなんですか?」

 今日も今日とてうどんをしこしこ踏みながら作っていたらミーナから質問された。

「いやあ、パンを食べ飽きたっていうのもあるけど、食堂を展開しないと裏庭畑の野菜が収穫できないからね」

 そう、レベル3以上の食堂を展開しないと畑には入れないのだ。
 まあ、シェリルバイト領にいる間にいろいろいじっていた結果、食堂を解体している間やレベル2以下で展開している間は畑の時間が止まることが分かったので野菜やキラーバードが知らないうちにダメになっているようなことはないのだが、収穫ができないのは困る。
 まあ、冷蔵庫内や冷凍庫内と同じように取り出すこと自体は可能なのだが、在庫管理ができないから全部収穫してしまった場合に復元に著しく時間がかかってしまうのだ。
 特にシェリルバイト領近郊でしか取れない作物に関しては、種を手に入れるのも一苦労だしな。

 というわけで、パン以外を食べたかったら麺を作るしかないのだ。
 まあ、レイジもミーナもシェリルバイト領で麺づくりに関しては慣れているから数人分なら簡単に作れるし。
 それに、うどんやパスタは発酵時間がいらないから隙間時間に作るのが楽なのだ。

「僕は三食パンでも飽きないけどなあ」

「俺がいたところではパンよりも米や麺のほうが主食として食べられてたからなあ。パンは朝以外には食べない感じだったし」

「? 一番作るのが大変なパンが朝なんですか?」

「ははっ、今考えるとそうなんだけど俺がいたところではパンは専門の人が毎日大量に焼いていたから簡単に手に入ったんだよ」

 レイジやミーナには神様関連のことは話しているが、前の世界のことを説明するのはやはり難しい。
 コンビニに行ったらパンはいつでも手に入るとか言っても二人には意味不明だろうし。
 まあでも朝に一番労力使うパンを食べて、昼や夜に簡単な米料理メインは確かに聞いてるだけだと意味不明だな。

「今日の麺には何を入れるんですか?」

「冷凍庫の奥の方にフライラットの肉が眠ってたからこれを使おうかな。多分最後だろうし、ステーキとかにすると争いになるから細かく刻んでうどんの具にしようかな」

 レイジやミーナは何でもいいという感じだが、ライアンさんたちは気に入った肉の料理だと取り合いになるからな。

「野菜はどうするの、マサト兄ちゃん?」

「適当に緑菜とか紫菜の外側の葉っぱを湯がくかな」

 緑菜や紫菜はキャベツに似た食感をしているが、外側の葉は湯がくとホウレンソウや小松菜みたいに柔らかくなるからこれでいいだろう。
 逆に中心の葉は湯がくと白菜のようにシャキシャキとした食感になるので、万能な葉野菜だと思う。

 というわけで、フライラットの肉を甘辛く煮たのと緑菜をホウレンソウに見立てた肉うどんを作ろう。
 色合い的にも紫菜よりも緑菜のほうが似合うだろうし。

「そういえばランドールさんは今日はどうしてるのかな?」

「ライアンさんに聞いたら今日は王城から使者? がくるから昼はいらないって言ってたらしいよ」

 お、ようやく王城からのお呼び出しがかかったのか。
 じゃあ、食堂を開ける日も近いかもなあ。

「じゃあ、ライアンさんたちの分もいらなかったかな?」

「いや、ライアンさんは昼も食べるって言ってたよ。なんか、使者の人がいるときには騎士は同席できないんだって」

 あー、反逆とかを恐れてるのかな?
 まあ、俺には直接は関係ない話か。

「じゃあ、とりあえず昼食は七人分だな」

「あ、そういえば食堂が開店したら手伝っていただける方が見つかったそうなのでその人たちもこれから昼食に参加するって言ってましたよ」

「お、ようやく決まったんだ。何人って言ってた?」

「二人だそうですよ。そこまで大々的に誘うつもりはないから大丈夫だろうって」

 ランドールさんから食堂を開店した暁には、同派閥というかシェリルバイト領近くの貴族を食事に誘うと言われていた。
 まあ、騎士団ほどの人数にはならないだろうから三人でもなんとかなるとは思うのだが、タウンハウスの食事もあることだし、見習いから何人か回してもらうことになっていたのだがそれが決まったようだ。

「メイド見習いから一人、執事見習いから一人って言ってましたよ」

「じゃあ、その二人の分も肉うどんを作るかな」

 レイジやミーナは箸で食べられるようになっているけど、見習いの二人はもちろんライアンさんたちも箸は使えないからフォークも準備しておかないとな。
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