64 / 150
2章 領都
27 パスタ
しおりを挟む
「ばかやろう、うめえじゃねえかっ! なんで俺に食べさせなかったんだっ!」
「ええええ、お褒めいただきありがとうございます」
「こんなうめえもん作るために鍋が必要なら先に言えってんだっ!」
「あのー、マサトさん。このおじいさん、さっきまで文句しか言ってませんでしたよね?」
「ミーナ、レイジも覚えておくといい。年寄りとか職人にはこういった人間が結構な確率でいるからな」
別に老人や職人に対して偏見があるわけではないけれど、狭い世界で生きてきた人間が常識を変えるのは難しい。
特にこの世界では食料といえば生野菜という固定観念が生まれているから、むしろ今まで出会った人たちが柔軟すぎただけだ。
「鍋は平底じゃなきゃダメなのか? 浅底のほうも平底だが」
「そうですね、かまどに固定して使う分には調合用と一緒で丸底でもいいですけど、移動させる際に不便なので平底のほうがいいですかね」
フライパンも中華鍋は丸底だから別にこだわりはない。
ただ、保管や洗い物を考えると平底のほうが便利だろうというだけだ。
「ふむ、お前さんたちが使っている刃物はナイフとは違うが、それも作った方がいいか」
「包丁もそうですけど、フォークやスプーンのカトラリーを量産してほしいですね。生野菜と違って手づかみというわけにはいかないですから」
「それもそうか」
「あとは、粉ひきのために石臼を作ってもらえればいいんですが」
「石臼? どんなやつだ?」
食堂には小型の石臼も常備されているのでそれを見せる。
まあ、これを使うことはないな、食堂内には電動のミルとかミキサーもあるから使う意味がない。
「ふむふむ、石は専門外だが構造は分かった」
「上から穀物なんかを入れて回すことで粉にする道具です。ここにはないですが、鉄での制作も可能とか」
前の世界には鉄臼なんていうものもあったらしい。
まあ、ポピュラーなものじゃなかったらしいから石臼のほうが手軽なんだろうけど。
「鉄でか……。作れんこともないか」
「これがあれば、領地内で見つかった黒麦でパンを作れるようになりますからね」
「パンっちゅうと、あのふかふかしとったやつか」
「ええ、領主様の息女のイーリスもパンに特化した料理人ですので喜ぶかと」
「そうか、イーリス嬢ちゃんが……。よっしゃ、鉄臼も鍋も他のものも俺に任せとけっ!!」
「ええ、お願いしますよ。使うのはイーリスたちになりますので、女性でも使いやすいようにあまり重くしないでもらえると助かります」
イーリスもロバートもボブもどれだけ力のステータスが上がるかわからないから、あまり重くても困るだろう。
「よし、ウィリアム。設置するはずの騎士団の食堂とやらに案内せい」
「まだ建設中ですよ」
「それでも、寸法自体は分かるじゃろうがっ!」
「わかりましたよ。マサト君、あとで今日の分の収穫物を持ってくるからね」
「わかりました、ウィリアムさん。よろしくお願いします」
大声で怒鳴りながらベックさんはウィリアムさんを引き連れて出ていった。
別にことさら苦手なタイプではないけれど、朝っぱらから相手するのは疲れる相手だったな。
「さあ、レイジもミーナも少し早いけど食堂の準備を始めようか」
「「はい」」
今日はパンのほかにパスタも作ろうと思っているのでパスタマシンを出しておこう。
キラーバードの卵が継続的に供給されるようになったから、そろそろ主食に使っても大丈夫だろう。
ジョシュアさんからも定期的に紫トマトと水瓜と緑菜は供給されるから、キラーバードの肉と紫トマトを使ったスパゲッティにするかな。
「マサトさん、また新しい料理を作るんですね?」
「マサト兄ちゃん、わかりやすすぎだよ。ワクワクしてる顔だもん」
そんなにか?
いや、ワクワクというかやっと洋食っぽいものが食べられるとは思ったが、そんな風にみられるとは思わなかった。
「今回作るのはパンの代わりになる一品だよ。サンドイッチみたいに一品で一食になるものだから手軽に食べられていいんだ」
うどんもそうだが、麺類って他のなにかと合わせるってことが少ないよな。
ラーメンに餃子とかチャーハンを合わせるくらいか?
まあ、本場だとコースになるからスパゲッティにも前菜とかメインとか合わせるのかもしれないけど。
「ミーナにも作り方を教えてくれますよね?」
「マサト兄ちゃん、僕食べたい」
「はいはい、今日の昼飯はソレにするから準備を手伝ってくれ。パンみたいに生地を作らないといけないからな」
「「はい」」
そんなこんなで今日の昼飯はスパゲッティだ。
この世界の人は二食が基本だから、昼には騎士の人はほとんど来ないしな。
来るのは非番の人くらいだから、朝と夜に比べれば微々たるものだ。
「まあ、昼のことよりも朝飯だ。もうすぐイーリスも来るし、昨日のロバートとボブも来るから二人とも頼んだぞ」
とりあえず俺は昼のスパゲッティの分の食料だけとり分けておこう。
寝かせる時間を考えても朝の営業が終わってから作るので十分に間に合うしな。
「ええええ、お褒めいただきありがとうございます」
「こんなうめえもん作るために鍋が必要なら先に言えってんだっ!」
「あのー、マサトさん。このおじいさん、さっきまで文句しか言ってませんでしたよね?」
「ミーナ、レイジも覚えておくといい。年寄りとか職人にはこういった人間が結構な確率でいるからな」
別に老人や職人に対して偏見があるわけではないけれど、狭い世界で生きてきた人間が常識を変えるのは難しい。
特にこの世界では食料といえば生野菜という固定観念が生まれているから、むしろ今まで出会った人たちが柔軟すぎただけだ。
「鍋は平底じゃなきゃダメなのか? 浅底のほうも平底だが」
「そうですね、かまどに固定して使う分には調合用と一緒で丸底でもいいですけど、移動させる際に不便なので平底のほうがいいですかね」
フライパンも中華鍋は丸底だから別にこだわりはない。
ただ、保管や洗い物を考えると平底のほうが便利だろうというだけだ。
「ふむ、お前さんたちが使っている刃物はナイフとは違うが、それも作った方がいいか」
「包丁もそうですけど、フォークやスプーンのカトラリーを量産してほしいですね。生野菜と違って手づかみというわけにはいかないですから」
「それもそうか」
「あとは、粉ひきのために石臼を作ってもらえればいいんですが」
「石臼? どんなやつだ?」
食堂には小型の石臼も常備されているのでそれを見せる。
まあ、これを使うことはないな、食堂内には電動のミルとかミキサーもあるから使う意味がない。
「ふむふむ、石は専門外だが構造は分かった」
「上から穀物なんかを入れて回すことで粉にする道具です。ここにはないですが、鉄での制作も可能とか」
前の世界には鉄臼なんていうものもあったらしい。
まあ、ポピュラーなものじゃなかったらしいから石臼のほうが手軽なんだろうけど。
「鉄でか……。作れんこともないか」
「これがあれば、領地内で見つかった黒麦でパンを作れるようになりますからね」
「パンっちゅうと、あのふかふかしとったやつか」
「ええ、領主様の息女のイーリスもパンに特化した料理人ですので喜ぶかと」
「そうか、イーリス嬢ちゃんが……。よっしゃ、鉄臼も鍋も他のものも俺に任せとけっ!!」
「ええ、お願いしますよ。使うのはイーリスたちになりますので、女性でも使いやすいようにあまり重くしないでもらえると助かります」
イーリスもロバートもボブもどれだけ力のステータスが上がるかわからないから、あまり重くても困るだろう。
「よし、ウィリアム。設置するはずの騎士団の食堂とやらに案内せい」
「まだ建設中ですよ」
「それでも、寸法自体は分かるじゃろうがっ!」
「わかりましたよ。マサト君、あとで今日の分の収穫物を持ってくるからね」
「わかりました、ウィリアムさん。よろしくお願いします」
大声で怒鳴りながらベックさんはウィリアムさんを引き連れて出ていった。
別にことさら苦手なタイプではないけれど、朝っぱらから相手するのは疲れる相手だったな。
「さあ、レイジもミーナも少し早いけど食堂の準備を始めようか」
「「はい」」
今日はパンのほかにパスタも作ろうと思っているのでパスタマシンを出しておこう。
キラーバードの卵が継続的に供給されるようになったから、そろそろ主食に使っても大丈夫だろう。
ジョシュアさんからも定期的に紫トマトと水瓜と緑菜は供給されるから、キラーバードの肉と紫トマトを使ったスパゲッティにするかな。
「マサトさん、また新しい料理を作るんですね?」
「マサト兄ちゃん、わかりやすすぎだよ。ワクワクしてる顔だもん」
そんなにか?
いや、ワクワクというかやっと洋食っぽいものが食べられるとは思ったが、そんな風にみられるとは思わなかった。
「今回作るのはパンの代わりになる一品だよ。サンドイッチみたいに一品で一食になるものだから手軽に食べられていいんだ」
うどんもそうだが、麺類って他のなにかと合わせるってことが少ないよな。
ラーメンに餃子とかチャーハンを合わせるくらいか?
まあ、本場だとコースになるからスパゲッティにも前菜とかメインとか合わせるのかもしれないけど。
「ミーナにも作り方を教えてくれますよね?」
「マサト兄ちゃん、僕食べたい」
「はいはい、今日の昼飯はソレにするから準備を手伝ってくれ。パンみたいに生地を作らないといけないからな」
「「はい」」
そんなこんなで今日の昼飯はスパゲッティだ。
この世界の人は二食が基本だから、昼には騎士の人はほとんど来ないしな。
来るのは非番の人くらいだから、朝と夜に比べれば微々たるものだ。
「まあ、昼のことよりも朝飯だ。もうすぐイーリスも来るし、昨日のロバートとボブも来るから二人とも頼んだぞ」
とりあえず俺は昼のスパゲッティの分の食料だけとり分けておこう。
寝かせる時間を考えても朝の営業が終わってから作るので十分に間に合うしな。
5
お気に入りに追加
610
あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる