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1章 名もなき村

08 デビルボアと緑菜の鍋

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 緑菜とデビルボアのバラ肉を使った鍋物はそんなにめんどくさいものにするつもりはない。

 いや、正直、肉の切り分けとパン作りで疲れ果てているというのもあるが、異界のレシピを見ても鍋物に難しい手順や力のいるものは少ないのだ。

 まずは二人が朝食べた残りの緑菜をざく切りにしていく。
 残りとはいったものの、二人で食べるのには大きすぎるのか、あるいは昨日食べた肉である程度腹が満たされていたのかざく切りにしていけばそこそこの鍋一杯になる。

 ちなみに、食事中に説明するのもなんだから今のうちに説明しておくと村でのトイレ洗濯事情はかなり前時代的というかなんというかな代物だ。

 トイレのほうは各家にぼっとん便所が設置してあってそこにするらしいが、食事が野菜だけなのでほとんど小のほうでしか使わないらしい。
 ちなみに井戸は村の何か所かに設置してあるのでそこから各々くみ上げて、家にある甕に保存する方式らしい。
 なんで、ポーションや水分はとっているので小は出すが野菜を食べるだけなので大は一週間に一回とかそのくらいらしい。

 洗濯のほうは村の中に川が流れているのでそこで各自汚くなったら洗う、もちろん洗剤なんかないので水と木の板でゴシゴシやるだけだそうだ。
 体のほうも汚くなってきたらその川で適当に洗うらしい。

 なんでこんな説明をいきなりしたかというと、この食堂には水洗のトイレが設置してあって、シャワー室前の脱衣所にはドラム式の洗濯機が設置してあることをみんなにも知ってほしかったからだ。
 だから、俺は村人と一緒に川で洗濯はしないし水浴びもしない。

 ただ、食堂で使っているガスや電気なんかの動力やいつまでも出続ける水がどこからきてどこに行っているのかは謎だ。
 外を見回っても食堂の中で使った水が排水されている気配はないし。

 そして、食堂内で使っている調味料だが使った分は翌日に、というか所定の場所に片づけたら補充される仕組みになっているらしい。

 スペアリブなんかに使った醤油とかパン作りに使った強力粉だが、かなりの量を使ったはずなのに片づけた後に見直したら元の分量に戻っていた。

 まあ、調味料がここにある分だけなら世界中をめぐって料理を教えるなんて不可能だし、この辺も神様のサービスかな。

 緑菜をざく切りにして芯のところ取り払ったら、鍋に次々と入れていく。
 そこにさっき用意した一口から二口さいずのバラ肉も三人分になるように入れていったら水と固形のコンソメを入れて煮立てていく。

 この辺の調味料も生活が安定して料理用の素材が集まってきたら作り方を調べないといけないんだろうな。

 肉や魚を食べる習慣をこの世界の人間に教えても、味が素材そのままじゃあのちにやってくる善人もつらいだろうし。

 まあ現状では醤油や味噌なんかの発酵食品はおろかマヨネーズなんかの混ぜるだけのものも作り出すのは無理なんだが。
 卵が手に入ってないし、お酢やレモン汁なんかの酸味も足りない。

 適当に異界のレシピで調味料やら料理やらのレシピを検索してみるも現状手に入るものではほとんど作るのは難しい。
 もちろん食堂内の調味料やらを使えば作れるものは多いがそれでは神様の意図した通りにはならないだろうし。

 小麦粉だけでも薄力粉、中力粉、強力粉がそろっているしスパイス類もカレーに使えるのが一通りそろっているのにカレー粉自体もあったのでほんとに調味料だけでスープカレー(具無し)とパンとかカレーうどん(具無し)とか作れるんだよなあ。

 とりあえず目標を設定しよう。

 短期的にはこの村で食用にされていない植物や動物で食用可能なものを見つける。
 中期的には村人に料理の方法を教えるとともに村人が食べられるものを増やす。
 それとかまどやらを設置して火の使い方、包丁やナイフなんかを渡して食材の切り方なんかも教えないといけないかな。
 長期的には調味料の開発や主食になるような植物の発見。
 具体的には米か小麦を見つけるのが最優先で、あとは大豆とか各種香味野菜とスパイス見つけていく感じか。

 多分、斑芋と一緒で毒性があるものや地面に埋まっているものは見逃されている可能性が高いと思うんだよな。
 あとは火を通さないと食べられないもの。
 肉や芋類、あとは魚や茹でないと苦みやえぐみの強いほうれんそうや小松菜なんかか。

 あとは卵や乳製品が手に入れば万々歳なんだが、さすがにこの世界の獣も卵を産んだり乳を出したりはするよな。

 そんなこんなで鍋をくつくつと煮込んでいるとレージとミーナが帰ってきた。
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