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1章 名もなき村
05 斑芋
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そんなこんなで適当に引っこ抜いた斑芋をレイジたちの家の近くの森付近に適当に撒いた後、余分に持って帰ってきた斑芋を持って食堂へと帰ってきた。
本当はパンを焼くつもりだったが芋が手に入ったなら正直それでいいかなと思い始めている俺がいる。
まあ、本当に簡単に毒が除去できるかどうかはやってみないとわからないし無理そうならパンを焼くことにしよう。
ちなみにゴミ捨て場の近くを通ったら新しい獣の死体が何個かあったので肉自体は今日も手に入れられるだろう。
「さあて、今日はこの斑芋を料理してみようか」
「お兄さん、それ毒なのに大丈夫なのか?」
「肉だって火を通さなければ毒になるようなものだし、斑芋だってきちんと料理すれば美味しくなるさ」
「そういえば昨日もそういってたな。この芋も焼くのか?」
うーん、昨日みたいにフライパンで焼くと全体に熱が入らなさそうだな。
「そうだな、今回は茹でてみるか」
「茹で?」
「なに?」
「まずはこの深めの鍋に水をたっぷり入れる。で、この中に軽く洗って泥を落とした斑芋を入れる」
とりあえず俺は鍋に水を入れて、二人には斑芋を洗うのを手伝ってもらう。
土にまみれた状態ではよくわからなかったが、土をとってみると斑芋は綺麗な黄緑色をしている。
知識としてはジャガイモは黄色か黄土色、サツマイモなら紫色が一般的だからこの色には正直ビビった。
「じゃあ、二人ともこの鍋の中に斑芋を入れてくれるか?」
だからこの時の俺の声が多少震えて聞こえてもそれはしょうがないってことだ。
しかし、この斑芋だが火にかけ沸騰させると驚くべき変化を見せる。
なんとさっきまで確かに黄緑色をしていた表皮が黄色へと変化したのだ。
食材鑑定では熱を通すと中心に毒性が集まり、黄緑色に変色すると表示されていたのでこの色の変化が毒性が中心に集まった証拠なのかもしれない。
とにもかくにも小ぶりなものを一つ鍋から取り出し、二つに切ってみる。
すると中心は黄緑、その周りは黄色の見事な二層構造となっており、直径五センチほどの芋の内、直径一センチほどが毒性のある部分のようだ。
試しに包丁で黄緑色の部分を気持ち多めに切り出し、改めて食材鑑定してみると中心部分は食用:不可になっており、外側の黄色い部分は毒があるという表示が消えていた。
触感としては茹でたジャガイモというよりも生の状態に近く水気を拭き取ればフライドポテトやガレットなんかにも使えそうではある。
ただ粉ふきいもやボイルポテトなんかにしたりマッシュポテトなんかにする際にはもう一度茹でる必要があるのだろう。
「お兄さん、これで完成なの?」
「食べて平気?」
「毒は取れたけど、ここからさらに料理しないとね。……うーん、とりあえず粉ふきいもにでもするか」
昨日の肉であばら付近の肉が残ってるからそれをスペアリブっぽく濃い目の味付けにしてその付け合わせとして粉ふきいもを作るのがちょうどいいだろう。
二人は新しい料理の名前に目がキラキラしている。
「二人も手伝ってみるか?」
斑芋の毒部分をくりぬくだけなら包丁を使わずともスプーンで十分可能だし、斑芋を俺が半分に切っておけば二人でもできるだろう。
それになにより、天職が料理人のミーナの手際を見てみたいという欲求がある。
二人は自分たちの天職が農家ではないことに負い目を感じているみたいだが、俺はまだ天職が農家の人間が農作業をしている姿を見ていない。
だから、天職とかいうものでどれほどの違いが生まれるのかこの目で見てみたいというのが本音なのかもしれない。
「僕たちにもできる?」
「大丈夫?」
「そんなに難しい作業を任せるわけじゃないし、最後に俺がきちんと確認するから安心してやってみると良い」
「やってみたい」
「やるやる」
二人にはスプーンと乾いた布を渡す。
火は止めてあるとはいえ、さっきまで沸騰していた湯の中にあった斑芋は熱く火にさえ慣れていない二人には熱い芋を抑えるのさえ困難だろうと判断したからだ。
まあ、記憶がないからやってきたかどうかはわからないが、火にも熱にも接したはずの俺でさえ熱い芋を持ってくりぬくのは少々難儀したからな。
「さあ二人とも、俺が斑芋を二つに切っていくからその中心にある黄緑色の部分をこのスプーンでくりぬいてくれ。斑芋は熱いからこの布で掴むんだぞ?」
結果から言えば天職の力はすさまじいものがあった。
二人ともステータスの力や器用の数値にあまり違いがないからか、毒部分をくりぬくスピードはあまり違いはなかった。
だけど出来栄えには明瞭な違いが出てしまった。
まず、レイジがくりぬいたほうは俺と同じように毒部分を残さないようにくりぬいたものにも毒がない部分が全面的に付着している状態になっている。
そして、ミーナがくりぬいたほうは毒部分が丸々、つまりくりぬいたほうは完全に黄緑色一色で、くりぬかれたほうの表面は綺麗に黄色をしているのだ。
もちろん食材鑑定してみればレイジのはもちろん、ミーナのものもきちんと毒の表示が消えていた。
「二人ともすごいな、ちゃんと言われた通り毒の除去ができてるぞ。しかもミーナのほうは毒と可食部が綺麗に分けられているじゃないか。正直俺以上だよ。」
二人は俺の言葉に照れたようにはにかむ。
この調子なら皮むきとかも手伝ってもらってもいいかもしれない。
「二人ともナイフの使い方は知っているかな? できるようなら皮をむいてもらって一口大くらいに切ってほしいんだ」
「お兄さん、もし切ったとしてもポーション飲めば平気だよ」
ポーション、そういえばそんなものもあるって聞いていたな。
「ポーションは切り傷でも治せるのかい?」
「切り傷とかすり傷なら治せるよ。あとおなかがすいた時に飲めばおなか一杯になるし」
「なるほど、便利なんだな。でも、ポーションばっかり飲んでると力がつかないらしいよ」
「えっ!?」
「そうなの?」
「神様が言うにはね。いろんなものを食べることによって力がついたり早く動けたりするようになるのにみんなポーションばっかり飲むって愚痴ってたよ」
ここまで言っていいのかはわからないが正直ミーナの手際を見てしまったら、これからもミーナには料理の手伝いをしてほしいと思ってしまったのだ。
だからまあ、二人に教えたのは打算込みだ。
ミーナも知り合ったばかりの俺の手伝いを一人でしようとは思わないだろうけど、レイジと一緒ならしてくれる可能性は十分にあるだろう。
「じゃあ、今日のこれを食べれば強くなれるのか?」
「まあ、急に強くなることはないだろうけどずっと食べてれば食べてない人に比べて強くなれるらしいよ」
「ならこれからもお兄さんと同じものを食べてもいいかな?」
「二人がこれからも手伝ってくれるなら二人の分もきちんと作るよ。とりあえずはこのナイフで斑芋の皮をむいてもらっていいかな?」
二人には小ぶりの包丁を渡し、手本として斑芋を一つ手に取り皮をむき一口大に切っていく。
「さて、二人が芋を切ってくれている間に俺は肉を焼くかな」
昨日のうちにスペアリブは漬けダレに漬けて準備はしてある。
あとはこれをオーブンで焼くのと三人分には少し物足りないから肩肉と背中側の肉も焼いてしまうか。
基本的に肉はいくらでも手に入る状態だし、贅沢に使っても問題ないだろう。
「お兄さん、こっちは全部できたよ」
二日続けて塩コショウも何なのでオーブンに入れたスペアリブ以外は生姜焼き風味にしようと水、醤油、生姜で作った味付けだれをフライパンで焼き目を付けた肉に回し入れて蓋を閉めた時にレイジから声がかかった。
今回は刃物を使う作業だからかミーナとレイジの出来栄えにあまり差は見られず二人とも俺がやって見せた見本よりも薄く皮をむいていた。
「おお、二人とも俺がやるよりも上手にできてるな」
ここからは簡単だ、一度すべての斑芋を水にさらしてその水を捨てたら改めて水を張った鍋に斑芋を火にかける、沸騰したら中火くらいに火を落として10分弱ゆでた後に水をすべて捨て、斑芋の表面の水分が飛ぶまで鍋をゆすりつつ炒めれば完成だ。
斑芋を茹でている間に肉のほうは完成していたので、軽く温めなおした肉と斑芋の粉ふきいもを皿に盛り付けてテーブルへと持っていく。
肉は一口大に切ってあるのでナイフは無しでフォークを人数分出す。
「さあて、美味くできたかな? ふたりとも、斑芋は特に味付けしてないから肉のたれをつけたり、塩を振ったりして食べてみてくれ」
俺がそういうと二人はフォークをもって食べ始める。
どうやらこの世界では食前に祈りをささげる習慣はないようで、前の世界ではよくみかけたいただきますなどの言葉はない。
これはこの村特有なのか世界全体でそうなのかはわからないが、俺が頼まれたのが料理の技術向上なのだからあまり触れないほうが良いのだろう。
神様には悪いが宗教関係の問題に軽々しく首を突っ込むのはまずい気がする。
まあ、この二人に俺がやっている作法として教えるくらいは問題ないだろうが、これをしないと食べさせないとか、教えないとかすると神様の意図とも外れるだろうし。
それよりなにより、今は肉と芋だ。
早く手を付けないと二人に食べつくされてしまう。
肉のほうは昨日と違って味付けをしているおかげか、微かにあった肉の臭みが感じにくくなっている。
残念ながら香りのほうは味付けに使った醤油や生姜で消えているが、よく噛むと肉の香りも感じ取れるし、やはり塩コショウで済ませるよりは事前に味付けをしておいたほうが良いようだ。
斑芋のほうもうまくできていて、外側は水分を飛ばしたのでややパサついている感があるが、塩を振ればそれも気にならない。
中はホクホクサクサクな感じで、これはやはりジャガイモの近縁種というかこの世界でのジャガイモの位置づけにある植物なのだろう。
「斑芋ってこんな味だったんだ」
「こんなに美味しいなら獣も寄ってくるよね」
「毒もあるし、生のままじゃあ獣はともかく人間はおいしく食べられないけどな」
毒抜きに加熱が必須条件の植物だから獣が食べているのを見て餌に使えるとは思っても食べようとは思わないだろう。
万が一、何も知らずに食べてしまった人間はもれなく死んでいるだろう。
まあ、この世界にはポーションがあるから食べても助かっている可能性もあるが、食べるたびにポーションを飲まなければならないなら食事の候補には入らないだろう。
「そういえば二人は……というかこの村の人たちは普段どんなものを食べているんだ?」
気になったのは村人たちの普段の食生活だ。
神様は調理しない果物や野菜を食べていると言っていたがいまいち想像がつかない。
「畑で採れるモノを村長が分けてくれるからそれを食べてるよ」
「あと、ポーション」
「見せてもらってもいいか?」
本当はパンを焼くつもりだったが芋が手に入ったなら正直それでいいかなと思い始めている俺がいる。
まあ、本当に簡単に毒が除去できるかどうかはやってみないとわからないし無理そうならパンを焼くことにしよう。
ちなみにゴミ捨て場の近くを通ったら新しい獣の死体が何個かあったので肉自体は今日も手に入れられるだろう。
「さあて、今日はこの斑芋を料理してみようか」
「お兄さん、それ毒なのに大丈夫なのか?」
「肉だって火を通さなければ毒になるようなものだし、斑芋だってきちんと料理すれば美味しくなるさ」
「そういえば昨日もそういってたな。この芋も焼くのか?」
うーん、昨日みたいにフライパンで焼くと全体に熱が入らなさそうだな。
「そうだな、今回は茹でてみるか」
「茹で?」
「なに?」
「まずはこの深めの鍋に水をたっぷり入れる。で、この中に軽く洗って泥を落とした斑芋を入れる」
とりあえず俺は鍋に水を入れて、二人には斑芋を洗うのを手伝ってもらう。
土にまみれた状態ではよくわからなかったが、土をとってみると斑芋は綺麗な黄緑色をしている。
知識としてはジャガイモは黄色か黄土色、サツマイモなら紫色が一般的だからこの色には正直ビビった。
「じゃあ、二人ともこの鍋の中に斑芋を入れてくれるか?」
だからこの時の俺の声が多少震えて聞こえてもそれはしょうがないってことだ。
しかし、この斑芋だが火にかけ沸騰させると驚くべき変化を見せる。
なんとさっきまで確かに黄緑色をしていた表皮が黄色へと変化したのだ。
食材鑑定では熱を通すと中心に毒性が集まり、黄緑色に変色すると表示されていたのでこの色の変化が毒性が中心に集まった証拠なのかもしれない。
とにもかくにも小ぶりなものを一つ鍋から取り出し、二つに切ってみる。
すると中心は黄緑、その周りは黄色の見事な二層構造となっており、直径五センチほどの芋の内、直径一センチほどが毒性のある部分のようだ。
試しに包丁で黄緑色の部分を気持ち多めに切り出し、改めて食材鑑定してみると中心部分は食用:不可になっており、外側の黄色い部分は毒があるという表示が消えていた。
触感としては茹でたジャガイモというよりも生の状態に近く水気を拭き取ればフライドポテトやガレットなんかにも使えそうではある。
ただ粉ふきいもやボイルポテトなんかにしたりマッシュポテトなんかにする際にはもう一度茹でる必要があるのだろう。
「お兄さん、これで完成なの?」
「食べて平気?」
「毒は取れたけど、ここからさらに料理しないとね。……うーん、とりあえず粉ふきいもにでもするか」
昨日の肉であばら付近の肉が残ってるからそれをスペアリブっぽく濃い目の味付けにしてその付け合わせとして粉ふきいもを作るのがちょうどいいだろう。
二人は新しい料理の名前に目がキラキラしている。
「二人も手伝ってみるか?」
斑芋の毒部分をくりぬくだけなら包丁を使わずともスプーンで十分可能だし、斑芋を俺が半分に切っておけば二人でもできるだろう。
それになにより、天職が料理人のミーナの手際を見てみたいという欲求がある。
二人は自分たちの天職が農家ではないことに負い目を感じているみたいだが、俺はまだ天職が農家の人間が農作業をしている姿を見ていない。
だから、天職とかいうものでどれほどの違いが生まれるのかこの目で見てみたいというのが本音なのかもしれない。
「僕たちにもできる?」
「大丈夫?」
「そんなに難しい作業を任せるわけじゃないし、最後に俺がきちんと確認するから安心してやってみると良い」
「やってみたい」
「やるやる」
二人にはスプーンと乾いた布を渡す。
火は止めてあるとはいえ、さっきまで沸騰していた湯の中にあった斑芋は熱く火にさえ慣れていない二人には熱い芋を抑えるのさえ困難だろうと判断したからだ。
まあ、記憶がないからやってきたかどうかはわからないが、火にも熱にも接したはずの俺でさえ熱い芋を持ってくりぬくのは少々難儀したからな。
「さあ二人とも、俺が斑芋を二つに切っていくからその中心にある黄緑色の部分をこのスプーンでくりぬいてくれ。斑芋は熱いからこの布で掴むんだぞ?」
結果から言えば天職の力はすさまじいものがあった。
二人ともステータスの力や器用の数値にあまり違いがないからか、毒部分をくりぬくスピードはあまり違いはなかった。
だけど出来栄えには明瞭な違いが出てしまった。
まず、レイジがくりぬいたほうは俺と同じように毒部分を残さないようにくりぬいたものにも毒がない部分が全面的に付着している状態になっている。
そして、ミーナがくりぬいたほうは毒部分が丸々、つまりくりぬいたほうは完全に黄緑色一色で、くりぬかれたほうの表面は綺麗に黄色をしているのだ。
もちろん食材鑑定してみればレイジのはもちろん、ミーナのものもきちんと毒の表示が消えていた。
「二人ともすごいな、ちゃんと言われた通り毒の除去ができてるぞ。しかもミーナのほうは毒と可食部が綺麗に分けられているじゃないか。正直俺以上だよ。」
二人は俺の言葉に照れたようにはにかむ。
この調子なら皮むきとかも手伝ってもらってもいいかもしれない。
「二人ともナイフの使い方は知っているかな? できるようなら皮をむいてもらって一口大くらいに切ってほしいんだ」
「お兄さん、もし切ったとしてもポーション飲めば平気だよ」
ポーション、そういえばそんなものもあるって聞いていたな。
「ポーションは切り傷でも治せるのかい?」
「切り傷とかすり傷なら治せるよ。あとおなかがすいた時に飲めばおなか一杯になるし」
「なるほど、便利なんだな。でも、ポーションばっかり飲んでると力がつかないらしいよ」
「えっ!?」
「そうなの?」
「神様が言うにはね。いろんなものを食べることによって力がついたり早く動けたりするようになるのにみんなポーションばっかり飲むって愚痴ってたよ」
ここまで言っていいのかはわからないが正直ミーナの手際を見てしまったら、これからもミーナには料理の手伝いをしてほしいと思ってしまったのだ。
だからまあ、二人に教えたのは打算込みだ。
ミーナも知り合ったばかりの俺の手伝いを一人でしようとは思わないだろうけど、レイジと一緒ならしてくれる可能性は十分にあるだろう。
「じゃあ、今日のこれを食べれば強くなれるのか?」
「まあ、急に強くなることはないだろうけどずっと食べてれば食べてない人に比べて強くなれるらしいよ」
「ならこれからもお兄さんと同じものを食べてもいいかな?」
「二人がこれからも手伝ってくれるなら二人の分もきちんと作るよ。とりあえずはこのナイフで斑芋の皮をむいてもらっていいかな?」
二人には小ぶりの包丁を渡し、手本として斑芋を一つ手に取り皮をむき一口大に切っていく。
「さて、二人が芋を切ってくれている間に俺は肉を焼くかな」
昨日のうちにスペアリブは漬けダレに漬けて準備はしてある。
あとはこれをオーブンで焼くのと三人分には少し物足りないから肩肉と背中側の肉も焼いてしまうか。
基本的に肉はいくらでも手に入る状態だし、贅沢に使っても問題ないだろう。
「お兄さん、こっちは全部できたよ」
二日続けて塩コショウも何なのでオーブンに入れたスペアリブ以外は生姜焼き風味にしようと水、醤油、生姜で作った味付けだれをフライパンで焼き目を付けた肉に回し入れて蓋を閉めた時にレイジから声がかかった。
今回は刃物を使う作業だからかミーナとレイジの出来栄えにあまり差は見られず二人とも俺がやって見せた見本よりも薄く皮をむいていた。
「おお、二人とも俺がやるよりも上手にできてるな」
ここからは簡単だ、一度すべての斑芋を水にさらしてその水を捨てたら改めて水を張った鍋に斑芋を火にかける、沸騰したら中火くらいに火を落として10分弱ゆでた後に水をすべて捨て、斑芋の表面の水分が飛ぶまで鍋をゆすりつつ炒めれば完成だ。
斑芋を茹でている間に肉のほうは完成していたので、軽く温めなおした肉と斑芋の粉ふきいもを皿に盛り付けてテーブルへと持っていく。
肉は一口大に切ってあるのでナイフは無しでフォークを人数分出す。
「さあて、美味くできたかな? ふたりとも、斑芋は特に味付けしてないから肉のたれをつけたり、塩を振ったりして食べてみてくれ」
俺がそういうと二人はフォークをもって食べ始める。
どうやらこの世界では食前に祈りをささげる習慣はないようで、前の世界ではよくみかけたいただきますなどの言葉はない。
これはこの村特有なのか世界全体でそうなのかはわからないが、俺が頼まれたのが料理の技術向上なのだからあまり触れないほうが良いのだろう。
神様には悪いが宗教関係の問題に軽々しく首を突っ込むのはまずい気がする。
まあ、この二人に俺がやっている作法として教えるくらいは問題ないだろうが、これをしないと食べさせないとか、教えないとかすると神様の意図とも外れるだろうし。
それよりなにより、今は肉と芋だ。
早く手を付けないと二人に食べつくされてしまう。
肉のほうは昨日と違って味付けをしているおかげか、微かにあった肉の臭みが感じにくくなっている。
残念ながら香りのほうは味付けに使った醤油や生姜で消えているが、よく噛むと肉の香りも感じ取れるし、やはり塩コショウで済ませるよりは事前に味付けをしておいたほうが良いようだ。
斑芋のほうもうまくできていて、外側は水分を飛ばしたのでややパサついている感があるが、塩を振ればそれも気にならない。
中はホクホクサクサクな感じで、これはやはりジャガイモの近縁種というかこの世界でのジャガイモの位置づけにある植物なのだろう。
「斑芋ってこんな味だったんだ」
「こんなに美味しいなら獣も寄ってくるよね」
「毒もあるし、生のままじゃあ獣はともかく人間はおいしく食べられないけどな」
毒抜きに加熱が必須条件の植物だから獣が食べているのを見て餌に使えるとは思っても食べようとは思わないだろう。
万が一、何も知らずに食べてしまった人間はもれなく死んでいるだろう。
まあ、この世界にはポーションがあるから食べても助かっている可能性もあるが、食べるたびにポーションを飲まなければならないなら食事の候補には入らないだろう。
「そういえば二人は……というかこの村の人たちは普段どんなものを食べているんだ?」
気になったのは村人たちの普段の食生活だ。
神様は調理しない果物や野菜を食べていると言っていたがいまいち想像がつかない。
「畑で採れるモノを村長が分けてくれるからそれを食べてるよ」
「あと、ポーション」
「見せてもらってもいいか?」
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