機動幻想戦機

神無月ナデシコ

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第一章 閃血の復讐者《アヴェンジ》

アヴェンジの本領

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アンダーゲット北部 鉱山跡地。

かつてはHARBTのAM(アンチマジック)装甲に使用されるルミナリス鉱石を採掘するのに多くの下民(ノーメイク)が奴隷として帝国軍の管理下の下で働かされた。が、

数年前にフェンリルが施設を奇跡的に奪取に成功。現在ではフェンリルの補給基地として稼働している。

だが、稼働できるのも時間の問題である。帝国軍が基地の奪還の為、襲撃に来たのだ。

『畜生!!増援はまだかクソッタレ!」

『耐え凌げ!!ここを奪わらたら俺たちは大打撃だぞ!』

迫り来るM2ドレッド-T型の軍勢をたった2機の有人機であるAS-97エレファント、AS-98ライノよりも旧式の機体が応戦していた。

ライノに比べてマッシブなエレファントはライノに比べ機動性は劣るが装甲が厚く各レジスタンス組織が今でも重宝している。

が、それでも帝国軍の現主力機であるM2ドレッドにはスペックで劣ってしまうのが現実である。

『所詮は下民(ノーメイク)の寄せ集めw、旧式のHARBTで挑んでくるとは滑稽だなw』

『どうせ、我々が制圧するのも時間の問題w、少しは楽しませてもらうとしようかw』

ドレッドに乗っている帝国兵はまるでいたぶるかのようにレジスタンスへの攻撃を続ける。

『ダメだ!弾薬が切れた!』

『このままじゃ機体が保たない!!』

『クソ、このままじゃ……』

レジスタンスの団員達が絶望に瀕していたその時だった。

『後方から熱源反応!!』

『ちくしょう!!新手か!?』

『いや違う……!!、増援だ!助けが来た!!』

エレファントの後方からライノが5機、敵に向かって60mm電磁機関砲(レールガンライフル)を発砲する。

『敵の増援か』

『なに焦るなw下民がいくら増えた所で…』

ドォカァーン!!

敵が油断している瞬間、M2ドレッドの一機に爆裂弾が被弾し機体の上半身が大破した。

『なっ!?何が起こっ』

ドゴォォン!!!

続いてもう一機撃墜された。そして次の瞬間、ドレッドの頭上から降りてきた赤い機体、アヴェンジによる超振動剣(バイヴレーションブレード)による斬撃がドレッドの一機を真っ二つに切り裂いた。

『コイツ!もしや!?』『あぁ、例の赤兜(あかかぶと)だ!!』

(知るかよ、そんな名前)

どうやら敵では赤兜の通称で呼ばれているらしい、が、そんな事はアヴェンジのコックピット内にいるビョルンにはどうでもいい事だった。

ビョルンの駆るアヴェンジは剣を手にドレッドの軍勢へと弾丸の雨を避けながら駆け出す。

一太刀アヴェンジが剣を振ればドレッドの図体が切り裂き、オイルが血液のように飛び散る。

『コイツ、化け物か!?』

『怯むな!囲んで追い込め!』

ドレッドが攻撃の体制(フォーメーション)を変える。

アヴェンジを囲ってサブマシンガンに付属しているオプショングレネードを上下左右から打ち込んでいく。が、

『効くかよ』

アヴェンジは勢いよく100m前後の高さまでジャンプして回避。

すかさずライフルの弾丸タイプを貫通弾に変更し、上からドレッド数機に撃ち込む。

弾丸は百発百中、頭から股の間一直線に貫通していき、そして、

ドスン!!

アヴェンジが着地するからと同時にドカァーン!!と爆発しながら大破していったのだ。

(クロエの言う通りら前に乗った時より機動性が上がってやがる…….すげぇ乗りやすい…)

コックピット内でビョルンは新調したアヴェンジの性能を改めて感心したのだ。

『なんだあの機体?何処の新型だ?』

『なんでもいい!!援軍ならこれ以上ありがたい事はない!!このまま一気に畳み掛けるぞ!』

『了解だ!あの赤い機体に続け!!』

アヴェンジの活躍に心動かされたレジスタンス小隊もアヴェンジに続いて攻撃を再開する。

その時、新手のドレッドが攻撃を仕掛けてきた。

肩にキャノン砲とミサイルポッドを装着した深緑色の機体、M2ドレッド-S型だ。

ドレッド-S型のキャノン砲がアヴェンジに照準をロック後、砲撃を開始した。

砲口から発射される42ポンド以上の重さの弾丸がアヴェンジに向けて放たれるも、

「当たってたまるかよ!!」

アヴェンジは自らの機動性を活用し、軽やかな弾丸を避けていく。

ビョルンはライフルの発射設定を単発、弾を追尾弾に変更すると。

「破裂しやがれ!!!」

照準をドレッド-S型のキャノン砲の砲口に向けてロックオン、ライフルの銃口から放たれる追尾弾がキャノン砲を穿つ。

キャノン砲が爆発し、右半身が大破。ミサイルを撃ち込もうにも時すでに遅しでアヴェンジの超振動剣により一機づつ切り裂かれていく。

(本当にすげぇよ!!コレが本来のアヴェンジの性能、コレならやれる、どこまでもやれるぞ!!)

ビョルンの興奮が昂っていく。アヴェンジがどこまでも敵を駆逐しようと突撃しようとした、その時だった。

バキャーン!!

何処からともなく紫の屈折した光がアヴェンジ向かって放たれた。

「!?」

アヴェンジはギリギリのタイミングで避けるも、光は後ろにいたライノ一機に命中。機体を大破したのだった。

(なんだ?……今のは!?…)

アヴェンジは放たれた方向にカメラを向ける。そこにいたのは、

『チッ、避けたか』

赤いドレッド、いや、ドレッドより微かにマッシブで両肩に丸い円状の盾を装備し、その右手には見たこともない銃火器が装備されていた。

『よもやこの、ドレッドノータスの攻撃を交わすとはな、多少はやるようだな』

機体の遥か後方に位置する移動装甲車、その中に設置された、M3ドレッドノータスのコックピットカプセルの中でニヒルに笑うのは、

ヴルキューレ帝国の貴族(ティアラー)にして軍将校、ファークラッド・フォン・イシュベルドであった。
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