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30 内政バトルと魔王の双子姉妹
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「愚かな人間よ。お前ごときが魔界の内政に口を出すなど、笑止千万」
頭髪と顎ヒゲの白いじいさんが俺をせせら笑っている。周囲にいた議員らしき魔人たちもそれに続いた。はあ。俺っていつも疎まれるな……。
「ジン。すまないね。皆、君の実力がまだ理解できないんだよ。大目に見てほしい」
魔王リベルが微笑んでいる。彼の愛らしい笑顔を見ると、どんなに条件の悪い提案でも受け入れてしまいそうだ。
「ああ。まあ、いつものことだよ。気にすんな」
「ありがとう。ジン」
再びリベルが気高く笑う。うーん。魔性の笑顔。とろけそうです。
「あーにいさま、帰ってきてるじゃん!」
「あーにいさま、帰ってきてるじゃん!」
唐突にカナリアのような軽快な声が、重なり合うように響いてきた。振り向くと、そこには全く同じ顔の幼い美少女たちがいた。双子のようである。
二人ともピンク色の長い髪をサイドテールにまとめている。服はゴシックロリータ風で、口元から覗く八重歯が愛らしい。
「あー! 人間がいる! 供物だ、供物だ!」
「あー! 人間がいる! 供物だ、供物だ!」
双子は両手をつないで、頬を寄せ合いはしゃいでいる。よく見れば、その顔は――リベルと同じではないか!
「お、おいリベル。まさかこの子たち」
「そうだよ。ボクの妹たちさ。右がラル、左がエル。これでも国の政務を担当しているよ」
「へー。ということはリベルと同じで、ラルも、エルも優秀なんだな。おまけにこんなに可愛い双子とは」
そう言うと、双子たちが俺の肩にひょいと乗っかってきた。二人同時に。お、重いよ。
「おまえ、わかってるな! 気に入ったぞ! ラルも、エルも優秀で可愛い!」
「おまえ、わかってるな! 気に入ったぞ! エルも、ラルも優秀で可愛い!」
どうやら気に入ってもらえたようである。いいのか、悪いのか……。面倒事が増えるのはもう勘弁してもらいたい。
「おまえ、名前は?」
「おまえ、名前は?」
双子が俺におでこをくっつけて聞いてくる。近いにもほどがあるよ。お嬢さん方。俺は二人を降ろしてから自己紹介を始めた。
「俺はジン・カミクラ。西欧聖女騎士団の世話になっている竜騎士、なのかな」
「それでは情報が不足しているよジン。いいかいラル、エル。彼は現世でただ一人の存在、SSS級ドラゴンマスターさ」
リベルが補足すると、双子の姉妹は瞳をぱっと輝かせた。
「SSS! じゃあ、おまえが竜王バハムートなのか! すごいのだあ!」
「SSS! じゃあ、おまえが竜王バハムートなのか! すごいのだあ!」
竜王? バハムート? なんのことだろうか。しかし、その名が出た途端、先程の白ヒゲじいさんと議員たちがざわつき始めた。
「竜王!? あの人間が」
「ほ、ほんとかよ! だとすると……」
「バハムート……全てを統べる破壊の王」
部屋全体が騒がしくなっていく。何を盛り上がっているのか、俺にはさっぱりわからない。
「そ、そんなはずはありませんぞ! こ、こんな小童が竜王バハムートなどと、片腹痛い! こ、この国には、こんな怪しい人間は必要なああああい!」
白ヒゲじいさんは唾を飛ばして、激昂している。なんでそんなに俺を嫌うのだ。一緒に内政すればいいじゃん。
「ラル、エル。そうだね。ボクはジンが近い将来、竜王になると見ているよ」
リベルまでもがそんなことを言っている。
「にいさま! やっぱりそうなのか! じゃあ、なんだかんだでジンはすごいのだ!」
「にいさま! やっぱりそうなのか! じゃあ、なんだかんだでジンはすごいのだ!」
二人が俺の回りを駆け回り、歓喜している。うーん。とにかく一度落ち着いてもらおう。俺は二人の頭をぽんと撫でる。
「よろしくな。ラル、エル。リベルの可愛い双子たち」
すると双子は全く同じタイミングで、弾けるような笑顔を見せてくれた。
「うん! よろしくなジンジン!」
「うん! よろしくなジンジン!」
ジ、ジンジン……。よ、よろしく。
「ちょ、調子に乗るなよ! 小童! 貴様がどうしても内政をしたいというのであれば、ワシと勝負だあっ! ワシがこの国の宰相なのだっ!」
なるほど。どうやら白ヒゲじいさんは、今のポストを守りたいみたいだな。俺が来たことで役職を奪われるとでも思っているのか。安心しろよ。じいさん。俺はそんなことに興味はない。けど――。
「いいよ。じゃあ勝負といこうか。この国を他の勢力から守りつつ、豊かにできるのはどちらか。決めようじゃないか」
俺はそう宣言し、内政バトルを引き受けた。
リベルはもはや仲間だ。仲間の頼みを断る理屈は、俺にはない。
頭髪と顎ヒゲの白いじいさんが俺をせせら笑っている。周囲にいた議員らしき魔人たちもそれに続いた。はあ。俺っていつも疎まれるな……。
「ジン。すまないね。皆、君の実力がまだ理解できないんだよ。大目に見てほしい」
魔王リベルが微笑んでいる。彼の愛らしい笑顔を見ると、どんなに条件の悪い提案でも受け入れてしまいそうだ。
「ああ。まあ、いつものことだよ。気にすんな」
「ありがとう。ジン」
再びリベルが気高く笑う。うーん。魔性の笑顔。とろけそうです。
「あーにいさま、帰ってきてるじゃん!」
「あーにいさま、帰ってきてるじゃん!」
唐突にカナリアのような軽快な声が、重なり合うように響いてきた。振り向くと、そこには全く同じ顔の幼い美少女たちがいた。双子のようである。
二人ともピンク色の長い髪をサイドテールにまとめている。服はゴシックロリータ風で、口元から覗く八重歯が愛らしい。
「あー! 人間がいる! 供物だ、供物だ!」
「あー! 人間がいる! 供物だ、供物だ!」
双子は両手をつないで、頬を寄せ合いはしゃいでいる。よく見れば、その顔は――リベルと同じではないか!
「お、おいリベル。まさかこの子たち」
「そうだよ。ボクの妹たちさ。右がラル、左がエル。これでも国の政務を担当しているよ」
「へー。ということはリベルと同じで、ラルも、エルも優秀なんだな。おまけにこんなに可愛い双子とは」
そう言うと、双子たちが俺の肩にひょいと乗っかってきた。二人同時に。お、重いよ。
「おまえ、わかってるな! 気に入ったぞ! ラルも、エルも優秀で可愛い!」
「おまえ、わかってるな! 気に入ったぞ! エルも、ラルも優秀で可愛い!」
どうやら気に入ってもらえたようである。いいのか、悪いのか……。面倒事が増えるのはもう勘弁してもらいたい。
「おまえ、名前は?」
「おまえ、名前は?」
双子が俺におでこをくっつけて聞いてくる。近いにもほどがあるよ。お嬢さん方。俺は二人を降ろしてから自己紹介を始めた。
「俺はジン・カミクラ。西欧聖女騎士団の世話になっている竜騎士、なのかな」
「それでは情報が不足しているよジン。いいかいラル、エル。彼は現世でただ一人の存在、SSS級ドラゴンマスターさ」
リベルが補足すると、双子の姉妹は瞳をぱっと輝かせた。
「SSS! じゃあ、おまえが竜王バハムートなのか! すごいのだあ!」
「SSS! じゃあ、おまえが竜王バハムートなのか! すごいのだあ!」
竜王? バハムート? なんのことだろうか。しかし、その名が出た途端、先程の白ヒゲじいさんと議員たちがざわつき始めた。
「竜王!? あの人間が」
「ほ、ほんとかよ! だとすると……」
「バハムート……全てを統べる破壊の王」
部屋全体が騒がしくなっていく。何を盛り上がっているのか、俺にはさっぱりわからない。
「そ、そんなはずはありませんぞ! こ、こんな小童が竜王バハムートなどと、片腹痛い! こ、この国には、こんな怪しい人間は必要なああああい!」
白ヒゲじいさんは唾を飛ばして、激昂している。なんでそんなに俺を嫌うのだ。一緒に内政すればいいじゃん。
「ラル、エル。そうだね。ボクはジンが近い将来、竜王になると見ているよ」
リベルまでもがそんなことを言っている。
「にいさま! やっぱりそうなのか! じゃあ、なんだかんだでジンはすごいのだ!」
「にいさま! やっぱりそうなのか! じゃあ、なんだかんだでジンはすごいのだ!」
二人が俺の回りを駆け回り、歓喜している。うーん。とにかく一度落ち着いてもらおう。俺は二人の頭をぽんと撫でる。
「よろしくな。ラル、エル。リベルの可愛い双子たち」
すると双子は全く同じタイミングで、弾けるような笑顔を見せてくれた。
「うん! よろしくなジンジン!」
「うん! よろしくなジンジン!」
ジ、ジンジン……。よ、よろしく。
「ちょ、調子に乗るなよ! 小童! 貴様がどうしても内政をしたいというのであれば、ワシと勝負だあっ! ワシがこの国の宰相なのだっ!」
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「いいよ。じゃあ勝負といこうか。この国を他の勢力から守りつつ、豊かにできるのはどちらか。決めようじゃないか」
俺はそう宣言し、内政バトルを引き受けた。
リベルはもはや仲間だ。仲間の頼みを断る理屈は、俺にはない。
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