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3 チートスキル1:ドラゴンテイマー

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「お、お願いします! ぜひ聖女騎士団に入ってください! 私、高ランカーの竜騎士を探しているんです!」

 ふわふわ少女が胸の前で手を合わせて懇願している。瞳が艷やかに濡れ、美少女感がとてもアップしていた。

「ふむふむ。当然の願いだな。で、どうするのだ? マスター」

 デュランダルが横目で俺を見やる。

「いや。でもデュランダルは竜だし、俺は男だし、聖女騎士団には入れなくない?」

 俺の答えにゆるふわ聖女騎士が、首を高速で左右に振った。

「そんなことありません! 我が西欧聖女騎士皇国は、大聖女様を筆頭とした円卓聖女騎士が目立っているだけで、区別なくどなたでも楽しく、平等に暮らせる国なんです。実際、枢機卿には男性や他種族の方たちもいらっしゃいます!」

 ふうむ。なるほど。となると、竜でも男でも心配はないようだ。帝国を追い出されて行くあてもない。この提案を蹴る理由はなくなったな。

「わかった。こっちもありがたいし、行かせてもらうよ」

 俺の返事を聞くなり、聖女がぱっと笑顔を輝かせた。

「わあ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

「ときに聖女騎士よ。汝、名はなんというのだ?」

 デュランダルの問いに、聖女はふわりとお辞儀をしてから敬礼をした。

「申し遅れました。西欧聖女騎士団、第七小隊長のセシリー・ヴィーナと申します」

 第七小隊か。まさか帝国で属していた隊と同じとは。思わず苦笑が漏れる。

「ではセシリー。歳はいくつなのだ?」

「十六歳、あ、いえ先月、十七になりました」

 十七か。俺と同い年だ。容姿だけでいえば顔は少し幼い感じがする。が、身体のほうは……いや。なんでもない。

「なんですか?」

 セシリーが小首を傾げながら、俺を見上げている。

「い、いや。別に」

 咳払いで空気を誤魔化すと、デュランダルがいい具合に場を切り替えてくれた。

「そうと決まれば、とっと行こうなのだ。マスター、セシリー」

「はい! よろしくお願いします!」

 成り行きでおかしなことになったが、まあいい。少なくとも帝国でラウダたちの荷物持ちをしているよりはずっとマシだ。

「西欧聖女騎士皇国はここからおよそ十二キロぐらいです」

 十二キロか。なんとも微妙な距離だな。とはいえ歩いていくには遠い。さて。どうしたものか。

「マスター。ワイバーンを召喚するのだ」

 デュランダルが前髪をかき上げてから、蒼穹を指差した。

「おいおい召喚って、ついこの間までFランだった俺にそんな芸当出来るわけないだろ?」

「そんなことはないのだ。そもそもマスターは元からSSSランカーなのだから、低ランクドラゴンと竜化はできない。しかーし! 低ランクドラゴンを召喚して、助力を得ることはできるのだ!」

 何? そ、そうなのか。高ランカーって、なんでもありだな……。

「さあ。マスター! ワイバーンを呼ぶのだ!」

 デュランダルが何度も空を指差し続ける。

「……よし。やってみるか。こ、来い。ワイバーン!」

 しーん。静まり返る空。駆け抜けるそよ風。全てが虚しい。……なんだよ。やっぱり来ないじゃんか。

「お。来たようなのだ」

 落胆寸前だった俺は、デュランダルが見上げた空をふり仰いだ。

「え。ほんとに来たのか?」

 目を細めて雲間を見つめると、確かに蒼い飛翔体らしき物が近づいてくる。かなり速い! びゅんと風切り音を立てて、飛翔体が俺たちの頭上で停止した。


 それは――二対四枚の翼を広げたワイバーンだった。


 その姿は澄んだ硝子のように美しい。筋肉質な細身の体躯からは確かな「疾さ」を感じる。

「なんと。いきなり二本角であるバイワイバーンを呼び出すとは。さすがは我がマスターなのだ!」

 飛翔体は一度大きく旋回すると、ふわりと大地に舞い降りる。

「ぐるるるぁああああああああああああああああっ!」

 え!? おい、なんだよ! 攻撃してくるじゃんか!

「マスター、強く念じるのだ! そうすれば、そいつはマスターに従うのだ!」

 なんだよ、それ! そんなので言うこと聞くのかよ。この暴走竜が! 

「ぐるるああああああああああああああああっ!」

 ち! ええい! ワイバーン!! 俺がお前の主だ! 俺に従えええええええええええええっ!!

「ぐるる、ぐるう……ぐがああああああ!」

 だめか! どうも、こういうのは苦手だ。従うとか、従わせるとかじゃなくて、そうだ。こういうのはどうだ!

「なあワイバーン。ごめん。さっきのは忘れてくれ。俺はお前の主なんかじゃない。そんなんじゃなくてさ。俺を、お前の仲間にしてくれないか?」

 俺の投げかけに、翼竜は静かになっていく。

「ぐるるる。ぐるる……」

 ワイバーンの瞳から、敵意が薄らいでいくように感じる。

「お。い、いけたのか……?」

 さっきまで牙を剥いていた翼竜は喉を鳴らして頭を下げた。その額にはユニコーンの角のような物が二本、凛と伸びている。

「ぐるる」

 どうやら大丈夫そうだ。俺はワイバーンに近寄ると、その頭をがしがしと撫でてみた。すると、翼竜も頭を俺にすりつけてきた。どうにか受け入れてもらえたようだな。

「す、すごい。二本角のワイバーンを召喚して、しかも手懐けるなんて……。聖女騎士団でもこれだけの翼竜を呼び出せる人はいないです……」

 セシリーは口を開けたまま、呆けたようにワイバーンを見つめている。

 そんなにすごいことなのだろうか……。俺には比較する術がないので、全くわからない。

「はっはっはっ! そうであろう、そうであろう! 我がマスターはすごいのだ!」

 デュランダルは何が楽しいのか、自慢げに高笑いをしていた。


 一方その頃、俺を追放したラウダたち帝国竜騎士団第七小隊は……。
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