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圧倒的な力
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その瞳を見た瞬間、3人はこめかみに汗をかく。ただ1人、アンだけは目を細めその瞳に影を落とした。
「まずい……!」
ヴァルレイトのその言葉を引き金にしたように、男の方から動く。男は力任せの大振りでグリムに剣を振るうが、グリムは長身の刀を振ってそれを弾くとその勢いのまま刀で男の足を払う。
「まだまだ!」
男は体勢を崩しながらも剣を振るうが、グリムはそれをひらりと避けると刀をぐるりと回し、刀自体をポールの様にして棒高跳びの要領で飛び上がる。空中でグルグルと刀を回して勢いを付けたまま、グリムは男の脳天目掛けて刀をまっすぐ下す。
「ぐおっ!」
男はなんとかギリギリでそれを避ける。刀が床に刺さってしまい丸腰になったグリムを逃さんと男は剣を振おうとするが、グリムは素早く刀を床から引き抜きヒュンと素早く下から上へ振り上げ男を自分から遠ざける。
「ハッ、距離取りたいのかぁ!?そりゃそうだよなぁ!!」
男は一気にグリムと距離を縮め、剣を振るう。
「駄目だ!!」
ホークは叫ぶ。それはフェイクだ。長い刀はリーチがあるから距離を詰められると手出しが出来ないと思われがちだが、そんな事はない。持つ場所を変えてしまえば近接武器ともなりうる。グリムはそれを狙っていたのだ。グリムは素早く持つ位置を変えると、一気に奥の方にあった刃を自身の近くに持ってくる。
「は、」
刃はその勢いのままその男の首にかかる。今の男には、その刃を止める術は無い。
「殺しちゃ駄目!!」
ソレイユの声が響く。すると、男の首にあった刃はピタリと止まる。
「…………は?」
「僕の勝ちです」
「おい待て!正々堂々の勝負だろ!」
「僕はソレイユさんの為に戦ったんです。そして、今はソレイユさんが僕の主人なんです。その主人が言うんです、聞くのは当然です。僕はただ命令を聞くだけ。僕の事なんて、貴方の事なんてどうでも良いんです」
「お前…!!俺の命令は聞かないのかよ!」
「貴方の命令よりも、主人であるソレイユさんの言葉が優先されるのは当然です」
「コイツ……!!」
男はグリムを殴ろうとするが、その拳はグリムに降ることは無かった。男の手首はアンがガッチリと掴んでおり、男の力でもアンのその手を払うことは出来ない。
「下げろ。お前は負けたんだ」
「黙れ!正々堂々の勝負に水を刺すな!」
「お前、ソレイユの言葉が無ければ死んでいたぞ。それに、死ぬのが怖いのに何が正々堂々な勝負だ」
「俺は怖くなんか、」
「足が震えている」
「は!?」
男は言われるまで気づかなかった。自身の足はガクガクと震え、その場に立っているのがやっとな程だった。恐らく、この男は初めて「死」というもの生身で感じたのだろう。逆に言えば、これまでの戦場では感じてこなかったという事だ。生ぬるい奴だなとアンは思う。
「お、俺は、」
「認めろ、お前は弱い。グリムよりも、ソレイユよりも」
アンはそう言うと、その小さい体で男の体を投げ飛ばす。ドカンと床に叩きつけられた男は「ガハッ」と唾を交えた言葉を吐き、その場に蹲る。
「さ、約束だろ、ソレイユに謝れ」
「誰がアイツなんかに……」
「も、もう良いんです、ありがとうございます、グリムさん、アンさん」
「ソレイユ……」
「ソレイユさん……」
2人は似た様な瞳をソレイユに向けるが、ソレイユはそれ以降は何も男には言及せず、代わりにヴァルレイトに話しかける。
「自分の実力は、このくらいです」
「ああ、よく見させてもらった。ソレイユ、話がある。場所を変えよう」
「了解」
ソレイユはガーゼを貼ったところを押さえながら、4人の後に続いた。
「まずい……!」
ヴァルレイトのその言葉を引き金にしたように、男の方から動く。男は力任せの大振りでグリムに剣を振るうが、グリムは長身の刀を振ってそれを弾くとその勢いのまま刀で男の足を払う。
「まだまだ!」
男は体勢を崩しながらも剣を振るうが、グリムはそれをひらりと避けると刀をぐるりと回し、刀自体をポールの様にして棒高跳びの要領で飛び上がる。空中でグルグルと刀を回して勢いを付けたまま、グリムは男の脳天目掛けて刀をまっすぐ下す。
「ぐおっ!」
男はなんとかギリギリでそれを避ける。刀が床に刺さってしまい丸腰になったグリムを逃さんと男は剣を振おうとするが、グリムは素早く刀を床から引き抜きヒュンと素早く下から上へ振り上げ男を自分から遠ざける。
「ハッ、距離取りたいのかぁ!?そりゃそうだよなぁ!!」
男は一気にグリムと距離を縮め、剣を振るう。
「駄目だ!!」
ホークは叫ぶ。それはフェイクだ。長い刀はリーチがあるから距離を詰められると手出しが出来ないと思われがちだが、そんな事はない。持つ場所を変えてしまえば近接武器ともなりうる。グリムはそれを狙っていたのだ。グリムは素早く持つ位置を変えると、一気に奥の方にあった刃を自身の近くに持ってくる。
「は、」
刃はその勢いのままその男の首にかかる。今の男には、その刃を止める術は無い。
「殺しちゃ駄目!!」
ソレイユの声が響く。すると、男の首にあった刃はピタリと止まる。
「…………は?」
「僕の勝ちです」
「おい待て!正々堂々の勝負だろ!」
「僕はソレイユさんの為に戦ったんです。そして、今はソレイユさんが僕の主人なんです。その主人が言うんです、聞くのは当然です。僕はただ命令を聞くだけ。僕の事なんて、貴方の事なんてどうでも良いんです」
「お前…!!俺の命令は聞かないのかよ!」
「貴方の命令よりも、主人であるソレイユさんの言葉が優先されるのは当然です」
「コイツ……!!」
男はグリムを殴ろうとするが、その拳はグリムに降ることは無かった。男の手首はアンがガッチリと掴んでおり、男の力でもアンのその手を払うことは出来ない。
「下げろ。お前は負けたんだ」
「黙れ!正々堂々の勝負に水を刺すな!」
「お前、ソレイユの言葉が無ければ死んでいたぞ。それに、死ぬのが怖いのに何が正々堂々な勝負だ」
「俺は怖くなんか、」
「足が震えている」
「は!?」
男は言われるまで気づかなかった。自身の足はガクガクと震え、その場に立っているのがやっとな程だった。恐らく、この男は初めて「死」というもの生身で感じたのだろう。逆に言えば、これまでの戦場では感じてこなかったという事だ。生ぬるい奴だなとアンは思う。
「お、俺は、」
「認めろ、お前は弱い。グリムよりも、ソレイユよりも」
アンはそう言うと、その小さい体で男の体を投げ飛ばす。ドカンと床に叩きつけられた男は「ガハッ」と唾を交えた言葉を吐き、その場に蹲る。
「さ、約束だろ、ソレイユに謝れ」
「誰がアイツなんかに……」
「も、もう良いんです、ありがとうございます、グリムさん、アンさん」
「ソレイユ……」
「ソレイユさん……」
2人は似た様な瞳をソレイユに向けるが、ソレイユはそれ以降は何も男には言及せず、代わりにヴァルレイトに話しかける。
「自分の実力は、このくらいです」
「ああ、よく見させてもらった。ソレイユ、話がある。場所を変えよう」
「了解」
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