悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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いつの日か

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 そこから数日が経ったが、何も変わらずじまいだった。
 騎士団本拠地で、4人で集まり話す。

 両親はそれぞれ別のところで殺されたらしく、父は物置の奥で、母は奥の庭園で殺されたことがわかった。
 両親の遺体に付いていたであろう指紋や手形は全て水で洗い流され、何も痕跡が残っていないと言う。かなりの手練れだと聞くが、なら何故浴槽に移動させたのか。殺されたところから浴槽はかなりの距離があるし、運ぶのも大変だ。その観点から、複数人のグループで間違いないだろうと踏んでいる。
 
 リリー家の使用人に連絡を取ったところ、使用人は私が殺される予定だったその日に皆家に帰るようにと言われたらしい。
 急なことで皆慌てていたが、次の日の早朝には皆帰ったと。
 両親の寝室をよく調べると、まとめられた荷物があり、逃亡する予定だったということも発覚した。重なった札束を見る限り、これで検問を潜り抜ける予定だったのだろう。

「さて、ここまで話したが何か質問は?」

「その札束も、金目の物も、何も取られていなかった。ならば、泥棒が入ってそれを見られて口封じに殺された線は消えますね」

 ユニコーンが言う。あくまで、両親を殺すために家に入ったと。

「こんな、何の形跡も無いなんて、あり得るのですか?」

「………事例が無い、ということではない。力不足だが、未解決事件は歴史を振り返れば幾つとある」

 私が聞くと、エヴェレットは苦々しく言う。

「それでも、俺らは犯人を見つけ出さなくてはならない」

「やはり、私1人で登下校した方がよろしいのでは?」

「やめろ。それをやったら俺は暴れるぞ」

「リーダーが暴れたらマジで手が付かなくなるのでやめましょう」

 ペガサスが急いで言う。そんなになのか。  

「ああー!もー!犯人もう雲隠れしたんじゃないんですか?」

「その可能性も大いにあるが、何しろリリー夫妻に恨みを募りに募らせた犯人だ。一人娘のレイアだけを逃すのも考えずらい」

「ま、愉快犯の犯行じゃなければの話ですけどね、それ」

 どの可能性も捨てきれず、何も絞れない。
 結局、この日は情報共有だけで終わった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「エリー?」

「………」

 エリーに呼びかけても反応しないなんて珍しい。私が肩を叩くと、エリーはビクッと反応する。

「すっ、すみません!レイ、何か?」

「いえ、ただ、少し珍しいと思いまして。何を見ていたのですか?」

「いっいえ!そんな、」

 エリーが視線を送っていた方を見ると、そこには黒髪の青年が立っている。
 この人物は…

「あの方が、エリーの好きな人ですか?」

 私が聞くと、恥ずかしそうに目を伏せてコクリと頷く。やはりそうか。
 彼はゲームでも立ち絵があったから直ぐにわかった。誰にでも優しく、情が厚い人物で、ゲーム内ではエリーの心の支えとなっていた。

「かっこいい人ですね」

「ええ!とてもカッコよくて、見惚れてしまいます」

 そう言って、エリーはまた彼に視線を移す。彼はこちらに気づくと、気さくな笑顔でハラハラと手を振る。
 エリーは少し顔を赤らめながらも笑顔で振り返すと、彼の笑顔がもっと綻ぶ。
 ああ、2人はもうこの時から両思いだったんだ。それを、ゲーム内でのレイアは取ろうと邪魔していたのか。自分の立場を弁えないのにも程があるぞ。

「ふふ、お似合いですね」

「もう、レイったら!」

 ぷくりと頬を膨らますエリーが可愛くて余計に笑ってしまう。エリーは私の背中を軽く叩く。

「何だか、とても友人らしい会話でわたくし嬉しいです!」

「そうですね!」

 私とエリーは笑い合う。この学園にいるときだけは、エリーといるときだけは、ただの女の子として、エリーの友人としていたい。

 前を向くと、そこには最近見た人物が。

「あっ…」

「?、エリー?」

 前には、エミリアがいた。エミリアはこちらに気付くと、にっこりと笑って去っていく。

「いえ、何でもありません。あの、エリー」

「はい?」

「エリーには、婚約者や許婚は居ないのですよね?」

「ええ、私にはいません。しかし、貴族の子供…、特に、長男はつける家が多いですね。というか、殆どそうですね」

 そうか。エヴェレットもノア家の長男だ。ならば婚約者がいて当然だ。将来騎士団団長にもなる者として、早めに身を固めたいのも現状だろう。

「レイ?」

「……いえ、私にも、婚約者や許婚はいないもので」

「そうなのですね!わたくしと一緒です。共に愛する人を見つけましょう!」

「ふふっ、エリーはもう見つけていますから、私が追いつかないとですね」

 私は何事もなく笑い合うが、胸の中は少し重い。
 私なんかに、そんな人はできるのだろうか。恋さえしたことがない、愛されたことがない私に、そんな人ができて、愛せる日が、愛される日が来るのだろうか。

 気分が沈むのを悟られないよう、私は必死に口角を上げた。
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