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恐怖
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レイアは夜明けまで酷い状態だった。
両親が殺され、その事実を受け入れられなかった。ようやくそれを受け入れ、寝静まったと思っても魘されて起きてしまう。
その度に俺はレイアを抱きしめる。レイアは毎回涙を流しながら俺にしがみつく。何か、縋るものを見つけるように。
「エヴェ、エヴェレット様、」
「大丈夫だレイア。だからゆっくり息をしろ」
「ヒュー、ヒュー、」
レイアは浅い呼吸を繰り返す。顔は蒼白で、握る手は氷のように冷たい。自分で分かっていても、呼吸が整えられないのだろう。ずっと辛そうにしている。
「ゆめ、夢を、」
「夢?」
「寝ても、目を閉じていても、出てくるのです、両親が」
「リリー夫妻が?」
「血だらけで、私の方に手を伸ばすのです。私の手を取ろうと、その手が、怖くて、」
「俺がいる。レイアの手は俺が取る」
「エヴェレット様…」
レイアは俺の胸に顔を埋める。俺が代わってやれたらどれだけいいだろうか。しかし、それが出来ない。
「エヴェレット様、寒い」
レイアはずっとカタカタと震えている。今の時期はそれほど寒くない。半袖を着ている奴もいるほどだ。それなのに、レイアは寒いと言う。毛布もかけているのにも関わらず。
「なら、もっと近寄ろうか」
俺はもっとレイアを抱き寄せる。いつもはレイアの方が体温が高いのに、今は俺の方が高い。
「落ち着くまで、手を、握っていて欲しいです、」
「最初からそのつもりだ」
指を絡めてギチリと音が鳴るほど強く握る。その小さく白い手に、赤く痕がついてしまうかもしれない。それ程、強い力だった。
「離さないで」
「離すものか」
リリー夫妻の怨霊にレイアを連れて行かれるなんて、そんなの真っ平ごめんだ。
レイアを抱きしめる腕に力が入る。ギシリと骨が鈍い音を立てそうなほど、強く抱きしめる。
「ぅぐ、え、えゔぇれっと、さま、」
「離さないからな。絶対に、離さない」
離したら、取られてしまう。連れて行かれてしまう。
「私は、駄目ですね。覚悟を決めたはずなのに、こんなことになって」
「お前のせいじゃない。お前は、1人で抱え込みすぎだ。頼れ、俺を。そんなに、俺は頼りないか?」
「そんな、ことではないのです。ただ、、迷惑になって、しまうから」
「迷惑などではない。俺は、お前が傷つく方が迷惑だ。もっと、頼ってくれ、」
あわよくば、俺の手を取って、その手に溺れて、俺なしでは生きていけない体になってほしい。そうすれば、お前は俺から離れて行かないだろう。
「……エヴェレット様、」
「何だ?」
「キス、して」
「はっ?、」
「前の、おまじない」
「………ああ、」
俺は前と同じようにレイアの額にキスを落とす。本当にこれだけでいいのだろうか。もっと、何かしてあげたい。しかし、何も思いつかない。
レイアは先程よりも顔つきが柔らかくなる。
「……また、起きた時、そばにいて下さい」
「ああ。ずっと、ずっとそばにいる。だから、今は安心して眠れ」
「…はい」
レイアはゆっくり目を閉じる。しばらくして、寝息が聞こえてくる。ふと窓を見ると、もう陽が登りそうだ。
かなり長い時間、苦しんでいた。
やはり、まだ言わない方が良かっただろうか。しかし、何日も両親の死を隠し続けられた方が辛いだろう。
「レイア…」
俺は小声でその名を呼ぶ。本人は何も反応しない。手は冷たい。今、レイアが生きていると感じられるのはこの小さな鼓動だけだ。
俺も寝てしまおうか。いや、出来ないな。もしも俺が眠ってしまって、その間にレイアが消えてしまったりしたら。
そんなの考えたくもない。
俺はその恐怖に怯え、一睡も出来なかった。
両親が殺され、その事実を受け入れられなかった。ようやくそれを受け入れ、寝静まったと思っても魘されて起きてしまう。
その度に俺はレイアを抱きしめる。レイアは毎回涙を流しながら俺にしがみつく。何か、縋るものを見つけるように。
「エヴェ、エヴェレット様、」
「大丈夫だレイア。だからゆっくり息をしろ」
「ヒュー、ヒュー、」
レイアは浅い呼吸を繰り返す。顔は蒼白で、握る手は氷のように冷たい。自分で分かっていても、呼吸が整えられないのだろう。ずっと辛そうにしている。
「ゆめ、夢を、」
「夢?」
「寝ても、目を閉じていても、出てくるのです、両親が」
「リリー夫妻が?」
「血だらけで、私の方に手を伸ばすのです。私の手を取ろうと、その手が、怖くて、」
「俺がいる。レイアの手は俺が取る」
「エヴェレット様…」
レイアは俺の胸に顔を埋める。俺が代わってやれたらどれだけいいだろうか。しかし、それが出来ない。
「エヴェレット様、寒い」
レイアはずっとカタカタと震えている。今の時期はそれほど寒くない。半袖を着ている奴もいるほどだ。それなのに、レイアは寒いと言う。毛布もかけているのにも関わらず。
「なら、もっと近寄ろうか」
俺はもっとレイアを抱き寄せる。いつもはレイアの方が体温が高いのに、今は俺の方が高い。
「落ち着くまで、手を、握っていて欲しいです、」
「最初からそのつもりだ」
指を絡めてギチリと音が鳴るほど強く握る。その小さく白い手に、赤く痕がついてしまうかもしれない。それ程、強い力だった。
「離さないで」
「離すものか」
リリー夫妻の怨霊にレイアを連れて行かれるなんて、そんなの真っ平ごめんだ。
レイアを抱きしめる腕に力が入る。ギシリと骨が鈍い音を立てそうなほど、強く抱きしめる。
「ぅぐ、え、えゔぇれっと、さま、」
「離さないからな。絶対に、離さない」
離したら、取られてしまう。連れて行かれてしまう。
「私は、駄目ですね。覚悟を決めたはずなのに、こんなことになって」
「お前のせいじゃない。お前は、1人で抱え込みすぎだ。頼れ、俺を。そんなに、俺は頼りないか?」
「そんな、ことではないのです。ただ、、迷惑になって、しまうから」
「迷惑などではない。俺は、お前が傷つく方が迷惑だ。もっと、頼ってくれ、」
あわよくば、俺の手を取って、その手に溺れて、俺なしでは生きていけない体になってほしい。そうすれば、お前は俺から離れて行かないだろう。
「……エヴェレット様、」
「何だ?」
「キス、して」
「はっ?、」
「前の、おまじない」
「………ああ、」
俺は前と同じようにレイアの額にキスを落とす。本当にこれだけでいいのだろうか。もっと、何かしてあげたい。しかし、何も思いつかない。
レイアは先程よりも顔つきが柔らかくなる。
「……また、起きた時、そばにいて下さい」
「ああ。ずっと、ずっとそばにいる。だから、今は安心して眠れ」
「…はい」
レイアはゆっくり目を閉じる。しばらくして、寝息が聞こえてくる。ふと窓を見ると、もう陽が登りそうだ。
かなり長い時間、苦しんでいた。
やはり、まだ言わない方が良かっただろうか。しかし、何日も両親の死を隠し続けられた方が辛いだろう。
「レイア…」
俺は小声でその名を呼ぶ。本人は何も反応しない。手は冷たい。今、レイアが生きていると感じられるのはこの小さな鼓動だけだ。
俺も寝てしまおうか。いや、出来ないな。もしも俺が眠ってしまって、その間にレイアが消えてしまったりしたら。
そんなの考えたくもない。
俺はその恐怖に怯え、一睡も出来なかった。
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