悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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 随分と泣いてしまった。
 目の縁がヒリヒリと痛む。
 ようやく涙が止まったのは良いが、これでは外を歩けない。
 私がどうしようと悩んでいると、ドアがノックされる。

「アルフィー・ベースティア・ユニコーンと、ウィリアム・ウヴェーリ・ペガサスです。リーダー、そこに居ますか?」

 エヴェレットはこちらを見る。居留守を決め込むか、素直に返事をするか。
 私が頷くと、エヴェレットは返事をする。

「やはり、ここにいましたか」

「ああ。ちょうど終わったところだ」

 ガチャリとドアを開けると、2人が入ってきて、すぐに鍵を閉める。
 ペガサスは私を見て、目を見開いた後、全てを察したように、悲しそうに眉を下げる。

「これが結果だ」

 エヴェレットがアルフィーに紙を渡し、それを2人が見る。そして、2人とも眉を下げる。

「………わかりました。リリー嬢」

「な、何で、しょうか…」

「………、この結果は、貴女を襲った暴漢の証言と一致します」

 ああ、やっぱりそうなのか。
 あの言葉は、私を怖がらせるための嘘だと、信じたかった。


 しかし、その願いは今打ち砕かれた。


「この事は、上に報告しなければなりません。すれば、貴女はもう両親と会うのは厳しいでしょう」

「……覚悟の上です」

「……分かりました。…何か、両親に伝えることなどは、ありますでしょうか」

「……伝え、られるのですか?」

「ええ、まぁ…。このような状況で、貴女の立場だと面会は難しいですが、言葉を伝えることなら、私たちでも出来ますから。何か、ありますか?」

 そう言われ、私は考える。
 私は、自分の心の内を全て吐き出した。

「嫌い、大嫌い、大っ嫌い、大っ嫌い!大っ嫌い!!大嫌いです、お父様も、お母様も。愛してなんかいません。好きでもありません。でも…。…でも、ただ、あの熱が、抱きしめてくれた温かさが、偽物でも、私は嬉しかったと。
ーそう、伝えてください」

 あまりにも感情的に叫んだ私に、2人は驚く。
 エヴェレットは黙って胸ポケットからハンカチを取り出す。

「ほら」

「……?」

「ーまた、泣いているぞ」

「ーえ?」

 頬を触ると、先程と同じような生暖かい涙が伝う。

「あ、あれ、私、さっきで、あれ?」

 涙は止まらない。さっきあれだけ泣いたのに。声をあげて泣いているわけでは無い。ただ、涙が止まらないだけなのだ。

「す、すみま、す、すぐ止めますので、」

 一生懸命涙を拭っていると、エヴェレットはまた私を抱きしめる。

 それを見た2人は大きく目を見開き、ペガサスに至っては口が開けっぱなしだ。

「いい。今は、存分に泣け」

「…そうですよ、レイアお嬢さん。両親に裏切られて、悲しく無いわけが無いですよ…」

「ええ。ここには私たちしかいません。外に漏らすこともないですから」

 みんなが私に優しい言葉を投げかける。その言葉が温かくて、痛くて、どうしよもなくて。
 私はエヴェレットに縋り、声を殺して泣いた。


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