悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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猫のような馬

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「げっ、やばっ!」

 エヴェレットは、その人物を見て逃げようとするペガサスの首根っこを掴む。

「ぎゃああ!!リーダー離して!!俺死ぬ!」

「何をしでかしたんだ、こんなときに」

「ペガサス!お前は!」

 メガネを掛けた人物はカツカツとこちらに近づいてくる。そして、エヴェレットの前で敬礼をすると、私の方を見る。

「初めまして。私は、アルフィー・ベースティア・ユニコーンです。貴女のことは存じております、レイア・ルーナマリア・リリー嬢」

「は、初めまして」

 ペガサスの次はユニコーンか。此処はどうなってるんだ?よく分からないが、今はそんなこと置いといていいだろう。

「アルフィー、ウィリアムに何の要件だ?」

「今日までの資料を提出していません。それも3件」

「お前…」

「ちがっ、今日までですよね!?これからやります!もうほぼ終わってるんですよ!」

 ペガサスはバタバタと足を動かし訴える。
 エヴェレットはそのままペガサスをグイッとユニコーンの前に持ってくると、ユニコーンはペガサスの腕を掴んで何処か行ってしまった。

「待って!待ってよ!!リーダー!!レイアお嬢さん!!助けてよー!!」

「黙れ!リーダー達に迷惑をかけるな!大人しく連行されていろ!!」

 ユニコーンがペガサスにそう言ったのを見送ると、エヴェレットはまた歩き出す。何だか、さっきよりも歩幅が大きいというか、ペースも早い気がする。私が小走りで追いかけていると、ぴたりと止まって私を抱き上げる。本日2回目のお姫様抱っこだ。
 私が状況が理解出来ないまま、エヴェレットは走り出す。廊下にいる人々は驚きと奇妙な目を向ける。

「エヴェレットさまっ、お、降ろしてっ、」

「ダメだ。遅い」

「ちがっ、エヴェレット様が速いだけですっ、」

「五月蝿い、舌を噛むぞ」

 そう言われて口を結ぶ。エヴェレットは厳重そうな部屋の前に立つと、遠慮なくその扉を開けてすぐに鍵をかける。

「此処までくれば良いだろう」

 エヴェレットは私を優しく降ろす。私はエヴェレットにさっきのことを聞く。

「あ、あの2人は…?」

「騎士団の団員だ。俺がリーダーを務めている騎士のグループがあるんだが、そのグループの組員でもある。ああ見えてかなり優秀な奴らでな。俺も助かっている」

 少しややこしくなっていたので一旦整理しよう。

 エヴェレットは騎士のみで作られるグループのリーダで、2人はその組員。2人はエヴェレットの両翼のポジションらしい。

 ウィリアム・ウヴェーリ・ペガサスは、蒲公英たんぽぽのような日の光を充分に浴びた明るい黄色の髪をしている。
 可愛らしい顔だが、眉は太くキリッと上がっている。瞳は栗色の優しい色をしており、二重のタレ目だ。
 背が大きくて、エヴェレットよりも少し高めだ。185くらい?だろうか。
 感情豊かでコロコロと表情を変え、大型犬みたいな感じだ。犬種は何だろう、ゴールデン・レトリバーとか?

 一方、アルフィー・ベースティア・ユニコーンは、光など知らない、漆黒の髪色をしている。
 キリッと釣り上がった目と細めの眉が厳格な彼の性格を表している。そして、黒の細いフレームの眼鏡が余計にそれを助長する。瞳は翠色で力強く、一重のツリ目だ。
 背はエヴェレットとほぼ同じだが、少しエヴェレットの方が大きい。
 何事にも冷静に判断するように見えるが、さっきは凄く怒っていた。まるで威嚇する猫みたいな。ロシアンブルーに近いかな?

 と、此処まで2人の紹介をしたが、今の本題はそれじゃない。

「あの、此処には事情聴取のために来たのでは…?」

「その通りだ。さあ、始めるぞ」

「え?」

エヴェレットは部屋にあった椅子に腰掛ける。目の前の椅子に座れと催促され、私も座る。私とエヴェレットの間には高級そうな黒の机が1つ。

「此処でするのですか?」

「此処でするために、此処に来た。」

「か、勝手に始めてよろしいのですか?」

「話を聞くのは俺だと事前に決まっている。それに、後は事実確認だけなんだ。どこで、いつやろうと関係ない。ただ、すぐに確認できるように此処に来ただけだ」

 もうそこまで来ていたのか。私は手を握りしめる。嘘を言うつもりは無い。全て、真実を話すつもりだ。

 しかしー


「ーさあ、話してもらうぞ、レイア」


「……はい」


 私はその覚悟が出来ないまま、返事を返した。








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