悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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「待て!コイツがどうなっても良いのか!?」

 私にナイフを立てている男が叫ぶ。その声には威厳など無く、ただただ恐怖が支配していた。

 エヴェレットはサーベルを下げずにこちらに近づいてくる。それに恐怖した男たちは、2人ががりでエヴェレットに飛びつき、サーベルを取ろうとする。

 しかしその2人はエヴェレットの間合いに入った途端、エヴェレットは素早くサーベルの先を変えて、男の足を切る。  
 男が跪き、残りの男の方には首下にサーベルを向ける。

「いってえええ!!」

 男が叫ぶ。痛みに悶え、冷や汗と脂汗をかいている。
 もう1人の男は、今自分の運命を握られている最中だ。何も動けはしないし、何も発せない。
 ここまできて、勝てないと悟ったのだろう。私にナイフを立てている男は精一杯の強気の声を出す。

「こっちも前払金を貰ってんだよ。そしたら、ちゃんと依頼は果たさないとなぁ!!」

 私の首のナイフが一気に横にズレる。
 死を覚悟した私だったが、その瞬間私の肩には手が置かれ、エヴェレットに抱き締められていた。

「なっ……」

 男のナイフはいつの間にか弾き飛ばされ、エヴェレットの片手に収まっていた。

 武器が手元から無くなってしまった男は、拳を作りエヴェレットに殴りかかろうとするが、エヴェレットの回転蹴りが頭に直撃し、その場にバタリと倒れる。
 倒れ方からして、男は意識を飛ばしたのだろう。

「レイア」

「エ、エヴェレット様、」



    「誰から殺して欲しい?」



「え?」

 な、何を、何を言っているのだろうか。私は訳が分からず、困惑の目をエヴェレットに向ける。

「誰がいい?誰からでもいい。ただ、一人は証人として残しておきたい。誰を残して、誰を殺す?どうやって殺したい?」

 淡々と誰を殺すかを喋るエヴェレット。それが怖くて、私は泣きながらエヴェレットに言う。

「だ、誰も、殺しません、殺さなくていいです、」

「何故だ」

「だ、だって…、その人たちは、頼まれて、」

「だから許すのか!?」

 エヴェレットが叫ぶ。私はその声に怯み、また涙が出てくる。

「コイツらは、お前を凌辱しようとしたんだぞ!!その上殺されそうになって!!それなに、お前は!!何で、何で…!!!」

 私を抱きしめる力が強まる。力が強くて痛いくらいだ。

「エヴェレット様に、人殺しになって、欲しくない、からです。あの人たちと、一緒になって欲しくない、」

 私は嗚咽を漏らしながら一生懸命言葉を紡ぐ。エヴェレットはそれを聞いて、顔を悲しく歪める。そして私に白いマントを巻きつけた後、エヴェレットに抱き抱えられる。お姫様抱っこだ。

「俺の家に向かう。いいな。拒否権はない」

「……わ、かりました」

 エヴェレットは私を抱いて、小走りで馬車に向かう。この状況を見た馬車の人は驚いたが、何も聞かずにすぐに馬車を出してくれた。

 馬車に揺られている間、エヴェレットはずっと私を離さず、私もエヴェレットを離さなかった。
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