31 / 73
意地悪
しおりを挟む
首のガーゼを外すと、まだ傷は完治してはいないが昨晩よりも良くなっていた。
これなら傷跡は残らなそうだ。
傷口付近を触っても痛みは無く、くすぐったいと言うので、無視して進める。
俺は新しいガーゼに張り替えて、そこをなぞる。俺らしくない。そう、感じてはいる。
ただ。
俺が最初からエリーとの関係を認めていれば、こんなことにはならなかった。
俺が拒絶したから、レイアは自分の身を張って証明しようとしたのだ。本気でこの関係を変えたいと、エリーと仲良くなりたいと。
俺がそこまで追い詰めてしまった。人を助ける立場だと言うのに。
エリーの言う通りだ。俺は何も変わろうとしなかった。全てを決めつけて、変わることを拒否した。エリーもレイアも、変わろうとしたのに。
「レイア。少し、聞いて欲しいことがある」
俺は両膝をついて謝罪した。これで許されるなんて思っていない。
ただ、言いたかっただけだ。俺のエゴだ。 自分勝手極まりないこの行動を、レイアは受け止めて許してくれた。
何回も謝られるのは性に合わないレイアだ。俺は見切りをつけて、元の体制に戻る。
顔に手を伸ばすと、またレイアの顔が赤くなる。それが面白くて、さっきの感情が湧き戻る。
少しイタズラしてやろうと顔を近づける。すると、レイアは目を瞑る。
そのまま手を頬に掠めて耳に伸ばす。熱い耳に触れたとき、レイアの肩が跳ねる。耳まで真っ赤になっていて、唇は小さく噛んでいる。
胸を小さな手で押されたが、俺の体はびくともしない。当たり前だ。俺は鍛えているし、ガタイも良い。一方、レイアの方は女の中でも小柄だ。
「…本当に、小さいな…」
俺は気になってレイアの身長を聞く。150ちょっとだと聞いて、俺と30センチも差があることに驚く。
そんな体で生きていけるのか。今まで死ななかったのは奇跡なのではないか。そう思えてしまう。
手は小さいし首も細い。肩幅は全然ないし、体は薄い。肌は全然日に焼けていない陶器のような白さと滑らかさで、女性特有の柔らかさが余計に拍車を掛ける。
もう少し揶揄おうとしたが、チャイムがなってしまう。
「ここまでか」
「こ、ここまで…?」
「時間だぞ、早く戻った方がいい」
そう急かすと、レイアは律儀にお辞儀をしてからグラウンドに向かった。
何だか貴族っぽくない奴だ。と思う。誰に対しても物腰低い態度で、使用人に対しても敬語を外さない。
それにしても、あんな反応をされるとは思わなかった。男に慣れてない、初々しい反応が楽しくてついちょっかいをかけてしまった。小さい子がやるようなことを、18のやつがやっているなんて馬鹿馬鹿しい。
何だか、俺の方が掌の上で遊ばれてないか?
そう思ったが、レイアはそんな気はさらさら無いのだろう。俺がただ勝手に振り回されているだけだ。
俺はこの時、レイアにかなり心を許していることを自覚した。
これなら傷跡は残らなそうだ。
傷口付近を触っても痛みは無く、くすぐったいと言うので、無視して進める。
俺は新しいガーゼに張り替えて、そこをなぞる。俺らしくない。そう、感じてはいる。
ただ。
俺が最初からエリーとの関係を認めていれば、こんなことにはならなかった。
俺が拒絶したから、レイアは自分の身を張って証明しようとしたのだ。本気でこの関係を変えたいと、エリーと仲良くなりたいと。
俺がそこまで追い詰めてしまった。人を助ける立場だと言うのに。
エリーの言う通りだ。俺は何も変わろうとしなかった。全てを決めつけて、変わることを拒否した。エリーもレイアも、変わろうとしたのに。
「レイア。少し、聞いて欲しいことがある」
俺は両膝をついて謝罪した。これで許されるなんて思っていない。
ただ、言いたかっただけだ。俺のエゴだ。 自分勝手極まりないこの行動を、レイアは受け止めて許してくれた。
何回も謝られるのは性に合わないレイアだ。俺は見切りをつけて、元の体制に戻る。
顔に手を伸ばすと、またレイアの顔が赤くなる。それが面白くて、さっきの感情が湧き戻る。
少しイタズラしてやろうと顔を近づける。すると、レイアは目を瞑る。
そのまま手を頬に掠めて耳に伸ばす。熱い耳に触れたとき、レイアの肩が跳ねる。耳まで真っ赤になっていて、唇は小さく噛んでいる。
胸を小さな手で押されたが、俺の体はびくともしない。当たり前だ。俺は鍛えているし、ガタイも良い。一方、レイアの方は女の中でも小柄だ。
「…本当に、小さいな…」
俺は気になってレイアの身長を聞く。150ちょっとだと聞いて、俺と30センチも差があることに驚く。
そんな体で生きていけるのか。今まで死ななかったのは奇跡なのではないか。そう思えてしまう。
手は小さいし首も細い。肩幅は全然ないし、体は薄い。肌は全然日に焼けていない陶器のような白さと滑らかさで、女性特有の柔らかさが余計に拍車を掛ける。
もう少し揶揄おうとしたが、チャイムがなってしまう。
「ここまでか」
「こ、ここまで…?」
「時間だぞ、早く戻った方がいい」
そう急かすと、レイアは律儀にお辞儀をしてからグラウンドに向かった。
何だか貴族っぽくない奴だ。と思う。誰に対しても物腰低い態度で、使用人に対しても敬語を外さない。
それにしても、あんな反応をされるとは思わなかった。男に慣れてない、初々しい反応が楽しくてついちょっかいをかけてしまった。小さい子がやるようなことを、18のやつがやっているなんて馬鹿馬鹿しい。
何だか、俺の方が掌の上で遊ばれてないか?
そう思ったが、レイアはそんな気はさらさら無いのだろう。俺がただ勝手に振り回されているだけだ。
俺はこの時、レイアにかなり心を許していることを自覚した。
436
お気に入りに追加
1,744
あなたにおすすめの小説
魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!
まるねこ
ファンタジー
エフセエ侯爵家に産まれたばかりのマーロアは神殿で魔力判定を行い、魔力なしと判定されてしまう。
貴族は皆魔力を持っているのが当たり前のこの世の中。
侯爵は貴族社会では生き難いと考え、領地の端にある小さな村へマーロアを送る事を決めたのだった。
乳母兼侍女のビオレタの息子ファルスと共に成長していく。
ある日、ファルスと私は村の畑で魔獣に遭遇する。
魔獣と目が合い、攻撃されかけた時、マーロアの身体から光の玉が飛び出した。
もしかして……。
魔獣を倒すので人によってはグロと感じるかもしれません。
Copyright©︎2022-まるねこ
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。
今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
王太子殿下が卒業パーティーで婚約破棄をするとか言い出したのでお説教をしてみました
星名こころ
恋愛
「来月の卒業パーティーでセレイラに婚約破棄を突きつけ、君との交際宣言をしようと思う」
王太子殿下がそう言った瞬間に、ここが前世の自分が中学生のときに書いた痛い逆ハー小説の世界であることを思い出した。自作の逆ハー小説のヒロインに転生してしまうなんて。しかも王太子殿下が婚約者である公爵令嬢と婚約破棄!?そんなの困る。殿下にえらそうにお説教をしてでも止めなければ!
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
【完結】政略結婚だからこそ、婚約者を大切にするのは当然でしょう?
つくも茄子
恋愛
これは政略結婚だ。
貴族なら当然だろう。
これが領地持ちの貴族なら特に。
政略だからこそ、相手を知りたいと思う。
政略だからこそ、相手に気を遣うものだ。
それが普通。
ただ中には、そうでない者もいる。
アルスラーン・セルジューク辺境伯家の嫡男も家のために婚約をした。
相手は、ソフィア・ハルト伯爵令嬢。
身分も年齢も釣り合う二人。
なのにソフィアはアルスラーンに素っ気ない。
ソフィア本人は、極めて貴族令嬢らしく振る舞っているつもりのようだが。
これはどうもアルスラーンの思い違いとは思えなくて・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる