悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

文字の大きさ
上 下
28 / 76

検診

しおりを挟む
 また椅子に座り、エヴェレットは私の体を見る。
 私の前で片膝を立て、私の足をじっと見る。何だかとても恥ずかしい。

「あ、あの…」

「何だ」

 エヴェレットは私の足から目を離さず返事をする。これがまだタイツを履いているなら良いのだが、運動をするということで今日はタイツではなく、短い靴下を履いてきてしまった。
 つまり、今私は生足を見られていることになる。ここだけ聞くと、犯罪チックな感じになってしまうが、今回は決してそんなことではないから誤解しないでほしい。

「そ、そんなに見られると、恥ずかしいです…」

「よく見ないと駄目だろう」

「そ、それはそう…なんですけど」

 私の言葉は届かず、エヴェレットは私の足を自分の足の上に乗せる。
 何だか、ガラスの靴を履く時のシンデレラになった気分だ。
 私の足首を掴み、慎重な手つきで足を見て行く。指が足の上を滑り、くすぐったい。

「ふ、ふぁ、」

 つい声が出てしまう。「我慢しろ」と言われたが、くすぐったいものはくすぐったい。

 エヴェレットの手はふくらはぎから太ももへ移って行く。外側はまだ良いのだが、内腿を触られるとビクリと肩が跳ねてしまう。

「ん、んんっ、エ、エヴェレット様っ、も、そこはだ、大丈夫ですので、」

「………確かに、足は…大丈夫そうだな…」

 相変わらず目を離さずにぶつぶつと言う。心配してくれているのに、声を上げてしまって申し訳ない。

「じゃ、じゃあもう…」

「腕を見てないだろ」

「だ、大丈夫です!ほら!どこも傷なんて…」

 パッと腕を前に出しエヴェレットに見せる。が、それがいけなかった。
 片方の腕をガシリと掴まれた後、本当に隅々まで見られた。
 な、何でそんなに見るのだろう。一目見れば分かるのに。
 エヴェレットは私の手首を掴むと、ボソリと一言言う。

「細い…」

「?、エヴェレット様?」

「………なんでもない。ほら、顔を見せろ」

「え!?」

 か、顔!?顔なんて怪我してないぞ!?だって私はエリーの前には出たけれど、反射的に自分の頭は守っていたし、落ちてきたサーベルの角度的にも当たってないはずだ。

「顔は怪我してません!なので見る必要は…」

 私は両腕で顔を隠すが、いとも簡単に腕は振り払われてしまう。
 端麗な顔がすぐ目の前にある。後少しで鼻の先が触れそうだ。
 キリッとしたアーモンド型の瞳に私の姿が映っている。
 見つめていると、その碧眼の瞳に吸い込まれそうになる。

「いいから。後、首の傷も確かめておきたい」

 首…、首の傷なら、そうか。昨日のガーゼから変えてないから、私も今どうなっているか知らない。でも多分、結構ふさがっている気がする。

「ガーゼ外すぞ。新しいのに変える」

「それなら私1人でも…」

「俺がやった方が早い」

 私が次の言葉を言おうとする間に、エヴェレットは首のガーゼを外して状態を見る。
 傷近くを触られる。痛くはないが、くすぐったい。

「んっ…、」

「痛くないか」

「だ、大丈夫です。ただ、少し、くすぐったい…です、」

「痛くないなら大丈夫だな」

 くすぐったいと言った私の言葉は華麗に無視され、新しいガーゼを貼られる。
 エヴェレットはそのガーゼを指でなぞり、そして止まる。

「……?エヴェレット様…?」

 どうしたのだろうか。私が問いかけると、エヴェレットは少しの沈黙の後、神妙な声色で口を開いた。



 「レイア。少し、聞いて欲しいことがある」
 




しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出して平穏に生きていたが。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※話数は多いですが、1話1話は短め。ちょこちょこ更新中です! 【2025年1月3日追記】 ストーリーの見直しにあたり、137話からのくだり、特に138話をかなり手直ししております。このあたりは割と二人にとって大事な場面となりますので、よろしければお暇なときにでも読み返していただけると幸いです(#^^#) なろうさんにも同作品を投稿中です。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

精霊に転生した少女は周りに溺愛される

紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。 それを見た神様は新たな人生を与える 親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。 果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️ 初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...