悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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説得

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ー「ノア家との関係を、考え直して欲しいのです」

 その言葉を聞いた両親は、顔をこれでもかと歪める。

「何を言っている、レイア」

「そのままの通りでございます」

「レイア、説明を」

 母が冷たい声で促す。

「はい。リリー家とノア家がライバル関係なのは充分存じております。しかし、ノア家はこちらと良好な関係を結びたいと思っております。どうか、話し合いだけでも、していただけないでしょうか」

「何故する必要がある」

「では逆に問います。何故、ノア家と競っているのですか?」

「そんなことも知らんのか!」

 大声をあげて父が椅子から立ち上がる。私はずっと頭を下げたままだ。

「ノア家とリリー家。この両家は始まりは同じだったのだ。同じスタートラインだったのに…!今ではノア家の方が良家とされ、優遇される。リリー家はいつもノア家の次だ!ノア家よりも劣っていると!そう思われている!そんなの許せないだろう!だから、何としてでもノア家を越えなければならないのだ!」

 リリー家がノア家を越えられないのは、この差だろう。目先のことしか考えず、後のことを考えていない。越えてどうするのか。越えて、何を手に入れる?手に入れて何になる?
 嫉妬に駆られ、我よ我よと先に行こうとする。周りと協力しようともせず。

「競っても、何も手に入りません」

「さっきのことを忘れたのか!越えた時、全てが手に入る!」

「手に入れて、どうするのですか。目先の宝に溺れ、滅びに向かうのですか」

「そんなことは言っていない!」

「それと、同じことです。何故、理解しようとしないのですか」

「お前……!!!」

 父がこちらにきて思い切り頬を叩かれる。
 しかし、私は目線を父から離さない。

「何だ、その目は…!そんなやつに育てた覚えは無いぞ!」

 当たり前だ。中の人物が変わっているのだ。知るわけがない。

「アンタなんて、産まなければよかった!この世に生まれてこなければ良かったのよ!」

 母が高い声で叫ぶ。耳がキーンとする。

 似たような言葉を、昔言われた気がする。
 両親が蒸発する前の言葉。


ー「アンタなんて、産まなきゃ良かった!」ー
ー「お前なんて、生まれてこなければ!」ー

 
 やっぱり私は、この世界でも要らないらしい。

「どうしても、聞いてくれませんか」

「当たり前だろう!」

「どうすれば、聞いてくれますか?」

「お前に何ができる」

 そう言われ、私は隠し持っていたナイフを取り出す。両親は驚き、一気に血の気が引いて恐怖の顔に変わる。

「ここに、切れ味の良いナイフがあります」

 そう言って私はナイフを持ったままその場に座る。


 「どこを切れば、何ヶ所切れば、本気だと、信じてくれますか?」

 
 自分に刃の先端を向ける。
 両親は黙ったままだ。
 そして、口を開く。



  
ー「お前が死ねば、考えてやらんこともない」

 


 私はナイフを握りしめる。
 想定していた回答だったからだ。

 本当は、もっと、やめてとか、言って欲しかった。
 でも、それはもう叶わないらしい。

 私は自分の首にナイフを当てる。
 ひんやりとした感覚と、少しの痛みが走る。死がすぐそこにある。

 グッと力を入れて、血が流れる。それを両親は引き攣った笑顔で見ている。

 

 ー本気で死ぬと、思っていないのだろう。

 
 
 私は覚悟を決め、ナイフを横に動かそうとしたその時、家の扉が開いた。
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