悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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 「この度は本当にありがとうございました。わたくし、エリザベス・ヴィクトリア・ノアと申します」

 そう言ってまた頭を下げられる。
 ええ、存じております。なんてたって私の大好きなキャラですからね。

 肩よりも少し長めの金糸の髪を持ち、海のような大きな碧眼を持っている。
 肌は白すぎず、健康的な色をしていて、小鳥のような可憐な声を持ち合わせている美少女だ。

「いえ、無事で良かったです」

 本当に無事で良かった。
 今私達は医務室にいて、濡れてしまった服を着替えたところだ。
 体操着やジャージのようなものを着るのかと思ったが、流石貴族が通う学園だ。
 
 上は襟付きの白い服を渡されて、胸元にはヒラヒラとしたリボンが。下はプリーツが細かく入っているフワフワの黒いスカートを渡された。どちらも着心地が良い。これだけでも充分値段は張るだろう。
 
「あの、貴女のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「あ、はい、私は…」

 そうか、私はゲームで知っていたけれど、エリザベスはまだ私の名前を知らないのか。今日が初対面だし。

 そこで気づく。

 
     ゲームと流れが違う。


 ヒロインは入学式が終わり、その後は何もトラブルなく家へ帰ったはずだ。こんな池に落ちるイベントなんて無かった。


 私が知っているシナリオとズレている。


 たまたまなのだろうか?まぁ、橋の調子なんて変わるか。
 名前を言おうとしたが、そこで止まる。

 
 私の名前をそのまま言ってしまって良いのだろうか。


 リリー家はノア家とライバル関係だ。そのせいで、エリザベスはレイアから嫌がらせを受けていた。
 リリー家とノア家の関係が良くないことは、エリザベスも知っている。
 嫌がらせをして無いとはいえ、私の名前を名乗ったらどう思われるか。
 私は口を開けたまま、次の言葉を発せずにいた。

「あの…」

「す、すみません…」 

「…名前を、言いたくないのですか?」

「えっと…その…」

 どうせこの後バレるのだ。だって同じクラスだし。ならここで言ってもいいだろう。

「いえ、少し考え事を。私の名前はー」

 覚悟が決まり、名前を言おうとしたとき、バンと勢いよく医務室の扉が開いた。
 私達は急に響いた大きい音に驚いて、扉の方を見る。
 開けた先には男性が立っている。 
 それを見たエリザベスは驚きの声を上げる。



      「お、お兄様!?」

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