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「おい、何を考えてやがる」
下唇を噛み締めた蓮に気付き、嘉島は不機嫌な声を放つ。
はっとし、すぐに我に返った蓮は何も考えていないと告げるように、必死にかぶりを振ってみせた。
本音を決して打ち明けようとしないその姿に、嘉島は余計に苛立つ。
「人形は何も考えずに、じっとしていろ。」
冷ややかなその言葉に胸の奥が再度痛んで、蓮は目を瞑った。
……嘉島さんが、厭きて僕を捨てるまで、この苦痛はずっと続くのか。
だとしたら、ひどい人生だと、蓮は思う。
嘉島の言葉は、いつだって痛すぎて……この胸に、深い爪痕を残してゆく。
好きだからこそ余計に相手の言葉が痛く、辛く感じるのだと、初めて知った。
「蓮……目を開けろ」
骨格の細い蓮の顎を掴んで、嘉島が低く囁く。
命じられた通りに蓮が瞳を開くと顔を近付け、柔らかな唇をいささか乱暴に奪った。
深く口付けられ、早急に舌が差し込まれると、久し振りの感覚に蓮の背筋が震える。
それを見抜いた嘉島は喉奥で笑い、片手を動かして相手の服の釦へ手を掛けた。
服を脱がしながらも休む事無く口腔を探り、舌を絡め取って来る巧みさに、蓮はいつも経験の差を思い知らされる。
舌をきつく吸われただけで、自分は頭の中が真っ白になってしまうのにと、少し不満すら抱く。
微かに眉を寄せるものの、不満を抱く心とは裏腹に身体は火照り始め、欲情は強まってゆく。
同時に込み上げて来る強い羞恥心に耐えられず、青白く光る水槽へと視線を逃した。
蓮のその態度を前にすると拒まれた気になり、嘉島は胸中で舌打ちを零す。
――そんなに俺が嫌いか。見たくない程、憎いか。
そう尋ねてやりたい衝動に駆られるが、それを口にする己の姿はあまりにも情けない。
問いを押し殺しながら舌をゆっくりと抜き去ると、蓮は濡れた眼差しを此方へ向けて来る。
怯えた色を隠そうとしない蓮を前にして、嘉島は目を細め、微かに舌なめずりした。
嘉島のその姿が、狩りを愉しむ獰猛な獣のように見え、蓮の身体はぶるりと大きく震える。
怯えの色が一層強まった蓮に加虐心を煽られ、嘉島はうっすらと口元を緩ませた。
「そういえば俺が居ない間は、どうしていた。田岡を誘ったのか?」
蔑むような冷たい声音を掛けられ、蓮の目が見開かれる。
掛けられた言葉があまりにもショックで、遣る瀬無い。
自分は、そこまで節操の無い人間に見えるのかと、嘉島はそんな風に自分を見ているのかと思うと、胸がひどく痛んだ。
まるで汚い物でも見るかのような冷たい眼差しで見下ろされ、息苦しささえ感じる。
そんな目で見下ろされると、所詮自分は、ただの玩具でしか無いのだと厭でも思い知らされるから、辛すぎてたまらない。
「どうした、早く答えろ。……ああ、そうか。おまえ、まだ喋れないんだったな」
小馬鹿にするように鼻で笑われると、蓮は眉を寄せ、逃げるように視線を逸らす。
そんな風に言われると、喋れなくなってしまったのは心が弱いからだと責められているようで……悔しくて、泣きたくなる。
「まあいい……調べれば、すぐに分かる事だ」
目をきつく瞑った蓮を見下ろしながら嘉島は冷ややかな声を放ち、ヘッドボードの棚へ手を伸ばしてボトルを取った。
ささやかな抵抗とでも云うように、目を瞑っている蓮を見ていると、嘲笑ってやりたくなる。
気持ち好くって泣く癖に。すぐに快楽に負けて、俺に縋り付く癖に。
胸中で蔑み、喉奥で低く笑った後、蓮の下衣をいささか乱暴に下着ごと剥ぎ取った。
反応し始めていた性器が目に映ったが、それには触れず、ボトルを傾けて透明な液体を片手に垂らす。
下唇を噛み締めた蓮に気付き、嘉島は不機嫌な声を放つ。
はっとし、すぐに我に返った蓮は何も考えていないと告げるように、必死にかぶりを振ってみせた。
本音を決して打ち明けようとしないその姿に、嘉島は余計に苛立つ。
「人形は何も考えずに、じっとしていろ。」
冷ややかなその言葉に胸の奥が再度痛んで、蓮は目を瞑った。
……嘉島さんが、厭きて僕を捨てるまで、この苦痛はずっと続くのか。
だとしたら、ひどい人生だと、蓮は思う。
嘉島の言葉は、いつだって痛すぎて……この胸に、深い爪痕を残してゆく。
好きだからこそ余計に相手の言葉が痛く、辛く感じるのだと、初めて知った。
「蓮……目を開けろ」
骨格の細い蓮の顎を掴んで、嘉島が低く囁く。
命じられた通りに蓮が瞳を開くと顔を近付け、柔らかな唇をいささか乱暴に奪った。
深く口付けられ、早急に舌が差し込まれると、久し振りの感覚に蓮の背筋が震える。
それを見抜いた嘉島は喉奥で笑い、片手を動かして相手の服の釦へ手を掛けた。
服を脱がしながらも休む事無く口腔を探り、舌を絡め取って来る巧みさに、蓮はいつも経験の差を思い知らされる。
舌をきつく吸われただけで、自分は頭の中が真っ白になってしまうのにと、少し不満すら抱く。
微かに眉を寄せるものの、不満を抱く心とは裏腹に身体は火照り始め、欲情は強まってゆく。
同時に込み上げて来る強い羞恥心に耐えられず、青白く光る水槽へと視線を逃した。
蓮のその態度を前にすると拒まれた気になり、嘉島は胸中で舌打ちを零す。
――そんなに俺が嫌いか。見たくない程、憎いか。
そう尋ねてやりたい衝動に駆られるが、それを口にする己の姿はあまりにも情けない。
問いを押し殺しながら舌をゆっくりと抜き去ると、蓮は濡れた眼差しを此方へ向けて来る。
怯えた色を隠そうとしない蓮を前にして、嘉島は目を細め、微かに舌なめずりした。
嘉島のその姿が、狩りを愉しむ獰猛な獣のように見え、蓮の身体はぶるりと大きく震える。
怯えの色が一層強まった蓮に加虐心を煽られ、嘉島はうっすらと口元を緩ませた。
「そういえば俺が居ない間は、どうしていた。田岡を誘ったのか?」
蔑むような冷たい声音を掛けられ、蓮の目が見開かれる。
掛けられた言葉があまりにもショックで、遣る瀬無い。
自分は、そこまで節操の無い人間に見えるのかと、嘉島はそんな風に自分を見ているのかと思うと、胸がひどく痛んだ。
まるで汚い物でも見るかのような冷たい眼差しで見下ろされ、息苦しささえ感じる。
そんな目で見下ろされると、所詮自分は、ただの玩具でしか無いのだと厭でも思い知らされるから、辛すぎてたまらない。
「どうした、早く答えろ。……ああ、そうか。おまえ、まだ喋れないんだったな」
小馬鹿にするように鼻で笑われると、蓮は眉を寄せ、逃げるように視線を逸らす。
そんな風に言われると、喋れなくなってしまったのは心が弱いからだと責められているようで……悔しくて、泣きたくなる。
「まあいい……調べれば、すぐに分かる事だ」
目をきつく瞑った蓮を見下ろしながら嘉島は冷ややかな声を放ち、ヘッドボードの棚へ手を伸ばしてボトルを取った。
ささやかな抵抗とでも云うように、目を瞑っている蓮を見ていると、嘲笑ってやりたくなる。
気持ち好くって泣く癖に。すぐに快楽に負けて、俺に縋り付く癖に。
胸中で蔑み、喉奥で低く笑った後、蓮の下衣をいささか乱暴に下着ごと剥ぎ取った。
反応し始めていた性器が目に映ったが、それには触れず、ボトルを傾けて透明な液体を片手に垂らす。
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