憧れの君と密室に閉じ込められたけど性愛じゃないから逃げないで!

真冬のラズビ

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憧れの君は遠くから見つめてたいの

図書館

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今日こそ勇気を出すんだ。

校門へ一歩踏み出した。

1ヶ月色々考えて、破廉恥な夢をたくさん見て、1人で悶々としていた。
そろそろ踏み出すべきじゃないのか?

まずは魔族とかについて調べる事からでも始めよう。昼休みになったら必ず図書館に行こう。

そう決意すると、決めた通り昼休みに真っ直ぐ図書館に向かった。


そして、今、魔物や魔族について書かれている本のある棚と聖書などが置いてある棚を往来している。

昔ながらの魔の生き物について書かれてる本と、現代的な本の棚。
知識がないからどっちも参考になりそう。


1ヶ月前の生々しい"妄想"以来、特にこれら棚が気になってしまっていた。

けれども、勇気が出なくてどっちも読まなかった。何1つ情報収集なんてしなかった。
『悪い夢を見ない方法』とか『思春期、性との向き合い方』なんて本も勇気がなくて手に取れなかった。

正直、1ヶ月も経ってるのに憧れてる人と性行為をするのを想像してしまったのを引き摺り続けてるのは間違いなく問題ではあると思う。
ほぼ連日のようにエッチする夢を見るのも、ご馳走様と多少はなるけど、疲れてきた。

だってどう考えても病的妄想痴女。完全にヤバイ女。

1ヶ月だよ、1ヶ月。
好きな映画や音楽ですらそこまで好きを維持出来る気がしない。

ただ、もしかしたら本当は妄想ではなかったのでは?

とか思う日もある。

繰り返しになるが1ヶ月も妄想してる。連日のように夢に出てくる。

やっぱり妄想の可能性も捨てきれないけど。

でも、ここまでアレンくんとの性行為した妄想に対してここまで執着するのは本当に3大欲求の1つ性欲を満たしたからでまた似たような体験をしたいから…ってもう現実であることを期待し過ぎている。

アレンくんの態度が軟化したのも現実だったかもと多少思う理由だ。

ただアレンくんの態度は、激変した訳ではなく、8割9割無視するのから無視しなくなるぐらいに軟化しただけ。時々会話のようなものが成立するようになっただけ。

もしかして私の鬱陶しい態度が控えめになっただけなんじゃないのか?
それか、アレンくんがこの鬱陶しい女に慣れたんじゃないのか?

とも思う。

それか、もしかして、夢悪とか聞いたことあるからそれが見せてるとか。

とりあえず考えすぎだよ私。
勇気出すって決めたんだ。
まずは1冊借りよう。
悩んでてもしかないから、とりあえず『魔族その性格』という本を手に取った。

私たちの世界は科学も魔法もなんでもありだが、ずっと昔からそうだったわけではない。僅か半世紀前からだ。

歴史の授業で習ったことだが、ある時天から空想上の生き物だと思っていたドラゴンが落ちてきたそうだ。その後を追って無数の生き物たちが襲来し、そしてそこから侵略が始まった。そしていつのまにか地球の半分は、異世界の住人に占拠されていたそうだ。

色々あって今は共存している。

次回のテスト範囲なのに曖昧にしか覚えてないが、大体はこんな感じだ。

改めて勉強しないと不味いな、卒業がかかった試験なのに緩く生きすぎているのかも。
あといらない事で頭を悩ませている。

本当は、有名な魔族絡みの事件なんかについての本があれば借りたかったが、流石に高校だからか置いてなかった。

魔族は、欲求に忠実だと聞いているから人が想像できないこととか、高校生の教育に悪いこととか色々やっちゃってるんだろうなって思う。


本を開きながら大して前も見ずに歩いてると誰かにぶつかった。

「うわぁっ、ごめんなさい!!」
反射的に謝って、恥ずかしさのあまり顔を下げながらそのまま進もうとした。

「え?リリアナ?」
聞こえて欲しくなかったテノールボイス。
これは間違いなく「あ、アレンくん!?」

咄嗟に手に持ってる本を背中に隠す。
なぜだかわからないけど、見られちゃいけない気がした。

アレンくんが現れたらすべきことはただ一つ。

「今日もとても美しい声してるね!何してたの?自習室に向かってた感じかな?」
「ありがとう。少し図書館に寄ろうかと思ってたんだよね。」

アレンくんが穏やかに微笑む。

アレンくん図書館利用するんだ。あんまり図書館は使わないイメージがあった。

「何か本とか借りたかったの?」

プロストーカーとして聞かなければなりませんよ。

「ちょっとね。リリアナは何してたの?」
「本借りてたよ!」
「どんな本?」
「まあ、まあ、ね?」

ニコニコ笑いながら頭を少し傾ける。
許してアレンくん、到底人には言えないの。

「ふーん」
アレンくんがそういって興味を失くした。

セーフ。心の中でそう言いながら安堵の溜息をついた。セーフばれませんでした。

「じぁ、ね!」
そう言って貸出カウンターに向かおうとしたら。

ふっ、と手に持ってる本の重さが消えた。

「え?」

え?え?え?

もしかして…?恐る恐る、後ろを向くとアレンくんが本の表紙を見ていた。

そして表情は、真剣だったが、

口だけが弧を描いていた。

「俺もちょうど魔族について調べようと思ってたんだよね。これから一緒に調べない?」
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