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叔父の心配
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ぐぐぐぐぐ、言えっていうの?本気で涙腺、崩壊するよ?いいの……?いいから、こんな意地悪をするのか。私は、今井先生の背中に一発だけ頭突きをして、小声で言った。
「わ、たしも、今井先生のことが、」
「僕のことが?」
「……好きじゃ言い表せないくらい好き、です」
言って、顔が熱くなって、視界がぐにゃりと歪んだ。涙で世界がゆらゆら揺れる。面倒に思われているんじゃないか、とか、嫌われたんじゃないか、とか、もうそんなことは考えられなくなった。
チョコレートのプレートに書かれていたのは、I love you……あのプレート、ものすごく食べづらい。カビが生えるまで取っておきたい、それくらい嬉しくて、嬉しくて……あぁ、もう、言葉にならないよ。
コトン。今井先生は、静かにデスクの上にコーヒーのカップを戻すと、私の手に自分の手を重ねた。いつもひんやりしている今井先生の手が、少し熱い。
「雛ちゃん、君に手を出す前に、確認しておきます。いいんですか?佐藤先生の方は」
「はい、ゆきちゃ……じゃなくて、佐藤先生には話してきました、きちんと」
「そうですか」
……そんなやり取りをしてから、少しの間、私も今井先生も無言になった。
「これ、受け取ってください」
先に口を開いたのは今井先生で、今井先生は口を開くと同時に、白衣のポケットからなにかを取り出した。そして、それを私の手に握らせる。手のひらに冷たくて硬い感触。なんだろう……?
私は今井先生の背中から離れると、握らされたものを確認した。私の手の中にあったのは、黒猫のマスコットが付いたキーホルダーだった。付いている鍵は、一本だけ。
「どこの鍵ですか?これ」
「ここの、です」
そっか、ここの、か……ん?ここの?保健室の?え、ちょっと、私はとんでもない物をもらっちゃったんじゃ!?
「い、いま、今井先生?なんで保健室の鍵を私に!?私がもらっちゃったら、今井先生はどうするんですか!」
「なんで、って、これからもここに入り浸ってくれるんですよね?鍵がないと、不便なこともあるでしょう?それと、僕の分は心配はいりませんよ。それ、学校から勝手に鍵を持ち出して作った、スペアキーですので」
勝手に持ち出して作った、なんて、堂々と言えちゃう今井先生は強い。色んな意味で。私が「でも」とか「やっぱり」とか、なんとか言って鍵を返そうとしているうちに、私はいつの間にか今井先生の腕の中に収まってしまった。ヤバい、ドキドキしているのがバレる。
「おや、緊張しています?」
「し、しないわけないじゃないですか……こんなに、くっついて……」
「ふふ……それだけじゃない、でしょう?昨日の続き、したいですか?」
僕は、素直な子が好きなんです。昨日、今井先生から言われた言葉が頭の中に浮かぶ。今井先生には、もっと私のことを好きになってほしい。私も今井先生のことを、もっと好きになりたい。ここで素直になれたら、今井先生、喜んでくれる……かな。
「……たい、です」
「もう一度、はっきりと」
「したい、です……」
あぁ、でも、恥ずかしいものは恥ずかしい!たぶん、私は今、耳まで赤くなっているだろう!!
今井先生の手が、私の頬を撫でる。そして、ゆっくりと顎を持ち上げられて、今井先生の唇が、私の唇を塞いだ。
今井先生にもらったキーホルダーの黒猫の鈴が、チリンと鳴った。あまい甘い時間の、始まりを告げるかのように。
「わ、たしも、今井先生のことが、」
「僕のことが?」
「……好きじゃ言い表せないくらい好き、です」
言って、顔が熱くなって、視界がぐにゃりと歪んだ。涙で世界がゆらゆら揺れる。面倒に思われているんじゃないか、とか、嫌われたんじゃないか、とか、もうそんなことは考えられなくなった。
チョコレートのプレートに書かれていたのは、I love you……あのプレート、ものすごく食べづらい。カビが生えるまで取っておきたい、それくらい嬉しくて、嬉しくて……あぁ、もう、言葉にならないよ。
コトン。今井先生は、静かにデスクの上にコーヒーのカップを戻すと、私の手に自分の手を重ねた。いつもひんやりしている今井先生の手が、少し熱い。
「雛ちゃん、君に手を出す前に、確認しておきます。いいんですか?佐藤先生の方は」
「はい、ゆきちゃ……じゃなくて、佐藤先生には話してきました、きちんと」
「そうですか」
……そんなやり取りをしてから、少しの間、私も今井先生も無言になった。
「これ、受け取ってください」
先に口を開いたのは今井先生で、今井先生は口を開くと同時に、白衣のポケットからなにかを取り出した。そして、それを私の手に握らせる。手のひらに冷たくて硬い感触。なんだろう……?
私は今井先生の背中から離れると、握らされたものを確認した。私の手の中にあったのは、黒猫のマスコットが付いたキーホルダーだった。付いている鍵は、一本だけ。
「どこの鍵ですか?これ」
「ここの、です」
そっか、ここの、か……ん?ここの?保健室の?え、ちょっと、私はとんでもない物をもらっちゃったんじゃ!?
「い、いま、今井先生?なんで保健室の鍵を私に!?私がもらっちゃったら、今井先生はどうするんですか!」
「なんで、って、これからもここに入り浸ってくれるんですよね?鍵がないと、不便なこともあるでしょう?それと、僕の分は心配はいりませんよ。それ、学校から勝手に鍵を持ち出して作った、スペアキーですので」
勝手に持ち出して作った、なんて、堂々と言えちゃう今井先生は強い。色んな意味で。私が「でも」とか「やっぱり」とか、なんとか言って鍵を返そうとしているうちに、私はいつの間にか今井先生の腕の中に収まってしまった。ヤバい、ドキドキしているのがバレる。
「おや、緊張しています?」
「し、しないわけないじゃないですか……こんなに、くっついて……」
「ふふ……それだけじゃない、でしょう?昨日の続き、したいですか?」
僕は、素直な子が好きなんです。昨日、今井先生から言われた言葉が頭の中に浮かぶ。今井先生には、もっと私のことを好きになってほしい。私も今井先生のことを、もっと好きになりたい。ここで素直になれたら、今井先生、喜んでくれる……かな。
「……たい、です」
「もう一度、はっきりと」
「したい、です……」
あぁ、でも、恥ずかしいものは恥ずかしい!たぶん、私は今、耳まで赤くなっているだろう!!
今井先生の手が、私の頬を撫でる。そして、ゆっくりと顎を持ち上げられて、今井先生の唇が、私の唇を塞いだ。
今井先生にもらったキーホルダーの黒猫の鈴が、チリンと鳴った。あまい甘い時間の、始まりを告げるかのように。
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