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「プロビデンスの眼」のウディ・アレン
しおりを挟む「まさかオタクが事業を展開しているとはね。この事業は探偵事務所にあたるのかい?それとも興信所?」
「この「プロビデンスの眼」は世界を俯瞰する万能の瞳に過ぎませんよ?やだなあ、何か勘違いしていない?俺ってナイーヴだからさ、あんま「オタク」呼ばわりされるのは心外なんだけどね。それでもアメリカじゃ「アメリカにはハッカーがいる。しかし日本にはオタクがいる」なんて評価してくれているけどね。あ、一応は探偵事務所で登記してあるけど、そんな当たり前の依頼は受けないね。「朱色の首輪をつけたシャム猫が行方不明」なんてのは受けるけど」
「思いっきりマイナーな探偵事務所の仕事じゃない?」
「伊集院は相変わらず頭が硬い。硬度9のコランダム並みだね。おっと、硬度の基準が変わったからいまどき言わないよね。
ウディ・アレンと瓜二つの男はその貧弱な髪の毛を業務用の強力な冷房の風に揺らしている。事務所(?)の三面には無数の液晶モニタが並び、それぞれ無数のアセンブリ・スクリプトを高速にスクロールしていた。
「君の依頼は興味があった。なんてもんじゃない。これ、都市伝説じゃない?っていうか「猟奇」だよね。俺、昔「猟奇王」なんて呼ばれていた時期があってさ。たまに「江戸川さん」なんて言われていたんだよ。それなりに目立っていたのに、なんで伊集院みたいにモテないかねえ?ま、女とイチャイチャするよりか最近買ったクラウドの最新鋭エンジン12800系とイチャイチャするのが楽しくってそれどころじゃないしねえ」
「それより依頼した車両の特定とその所属とか履歴とか、わかった?」
ウディ・アレンはとぼけた顔をして画面のヘクサデシマルを眺める。
「あのさあ、都内に仕掛けてある「プロビデンスの眼」は256の三乗。つまり16,777,216箇所さあ。東京電力に裏の家賃けっこう払っているんだから調査料金はひっじょうに高くなるの。
伊集院は髭面を柔和にして言い放つ。
「金に糸目はつけるなとのお達しでね」
ウディ・アレンは黒い小さなUSBメモリを伊集院にひょいと放り投げた。
「依頼はこなしたよ。でもねえ、これ以上はワカンナイ。家系図はデジタルになっていないしね。草冠と大島がくっついてるのはわかる。でも天羽というか「鳳仙花」の方はさっぱりだ。それは稗田の専門だからね。そっちあたってみて」
「ああ、…………稗田か。コンタクト方法は?」
「そんなものオールインワンだよ?「プロビデンスの眼」の微に入り細に渡るすっばらしいサービスを甘く見ないでね」
伊集院は懐から小切手を取り出してデスクの上に置く。
「あらあら、値段の交渉はないの?俺、それが楽しみなんだけどな」
「よく見てからそう言いな」
ウディ・アレンと瓜二つの男はその小切手を手にとって目を見開く。
小切手の金額欄は白紙だった。
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