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アンリの五番目の物語
しおりを挟むたちまちぼくらは深い仲。
ああ、ほかに何をすればよいのか
夜の帳は降りていた。
何をすればよいのか
ぼくら愛しあっていた。
深夜の屋敷の階段で
川辺の花畑の木陰でリュートを弾いて
彼女はぼくの胸に顔を埋め
甘く切ない口づけを交わす
陶酔……………
この女神を前にして
ぼくは火の前の子供のようだ。
抱きすくめる肉体は焼きたてのマフィンのように
編み込まれた金糸の髪は薔薇の香りを秘めて
かくも僕の魂を震わせる。
「見極められた星!」
天にも上る幸福感はぼくを歓びの歌を歌わせる。
勝ち誇った心は罵倒を繰り返す。
「ざまあみろあのくそおやじ!」
そして楡の木にその硝子細工のような指を這わせて彼女は。
翠色の瞳を潤ませて一筋の涙を流した。
「……………好きよ……………自由に……なりたい」
あの夜彼女はそう言った
彼女へのいとおしさは知事閣下への憎悪を育てる。
限りなく狂おしく
限りなく残酷に。
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