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アンリの四番目の物語
しおりを挟むところで知事閣下の絶望的な趣味の悪さ
人使いのあらさときたら!
「肩書きが多い 肩がこる」
葉巻の紫煙に目を痛めながらの知事閣下の肩のマッサージは、絨毯もかくやという分厚い服と分厚い脂肪に阻まれて意味をなさない拷問に等しく。
知事閣下の部屋はその俗悪趣味の権化の名にふさわしく。
金と銀と真紅の色彩の爆発には今でも目がくらむばかり。
そんなときだ。窓辺にいた夢のヴィーナスに声をかけられたのは。
「あら、あのときのえかきさん!」
天にも上る気持ちを伝える言葉をぼくは持たない
ぼくの髪の毛は静電気を帯びて逆立つありさま。
その風を呼ぶばかりの長い睫毛の瞬きに煽られたぼくは嵐の海に漂う難破船のごとく
コンパスを失った船の船長のようだった。
それから始まったぼくと彼女は、美術という名の夢と憧れを語るラプソディを奏でる。
束の間の時間とはいえ、それはぼくのダイアモンド。
ダイスの模様の階段で、庭のライラックの茂みの影で。
ぼくは描いた絵を彼女に見せては語り、彼女はその夢を愛した。
なぜならぼくは想像という翼を持ち、彼女はそれに魅了されたから。
そう信じて何が悪い?
その翠に輝く瞳に宿したのは好奇心の輝き
その唇が奏でるのは未知への憧れ
その美貌に隠された光と影
その肢体が織りなす物憂げな不安
自由と言う名の形のない野望への憧憬だった。
そして彼女にその気があれば。
むろんぼくは全てを投げ打っても。
彼女との時間のためだったら惜しむものなんかない。
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