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アンリの三番目の物語
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ぼくの心をかくまで乱したあの美女が名だたる俗物・知事閣下の後妻だったなんて。
エメラルドよりも眩しく翠の湖底よりも深い瞳は
無邪気であり明晰なる知性を秘め
異国の白磁もかくやというほどの艶やかな肌は
匂い立つほどの色香を放ち
黄金の髪は金糸で編まれた奇跡のように。
俗悪極まる知事閣下の御殿は街の中央に広大な敷地を持って、けばけばしい色彩に彩られたいくつもの尖塔を抱えてアンリを見下ろしていた。
この街に作り上げたささやかな人間関係を頼りになんとか御殿に潜り込む。
広大な屋敷を常に磨き込むために、下働きはいつだって必要だったから。
腰がおかしくなるほどにモップを使い、醜悪な装飾品の埃を払い、大量のゴミを運び蝋燭一本だけの小さなベッドで眠る日々。
決して爽快ではなかったけれど
夢見るのはあの完全な弧を描く艶やかな唇であり
知事閣下の俗悪とは無縁のつつましくも洗練された服であり
ヴィーナスそこのけの美貌であり
心を乱す絶品の肢体だった。
一センチでも近くにいたかった。
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