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アンリの二番目の物語
しおりを挟む似顔絵描きは結構やれた……………自尊心にちょいと目隠しすれば。
スパゲッティが食えるようになると、今度はやたらとさみしくなった……………
太陽のない春みたいに……………
女給にちょっとだけつけ届ければ、そんなお客を紹介してくれる。
肥満した金満家
個性の欠片もない老人
孫を描いてくれなんていう老婆
モデルには無理がある元気に動き回る子供
煙を吐きながら信号を無視する戦車に乗った昔の歴戦の勇士、妖しげな生業のセクシーなプロマイドもどき。その肉感的な躰をよりいっそう強調して。
写真にできなくても似顔絵であれば悪い面相でもそこそこに。そこそこな人なら美男美女に。
そんな時会ったんだ……………忘れもしない。
彼女がカフェにやって来て「描いて」と言った。
ぼくはてんで……………駄目だった
ぼくの頭とぼくの画面は千々に乱れて
収集不可能!
この世に本物の女神がいるなんてぼくは思わなかった。
完璧なアーモンド型の瞳に三日月の眉、白磁の肌は月よりも眩い。
こんもりと盛り上がった胸は匂い立つ色香を放ち
膝下から覗く美脚は神話の眷属の持ち物。
心臓は鷲掴みにされ
呼吸すら忘れ
僕は地上の女神に心酔するばかり。
完成不可能な破り捨てられた何枚かのキャンソンを見下ろしながら、彼女は天女の微笑みを浮かべて過分な金貨を一つ置き、花瓶に花を飾った豪奢な車で立ち去った。
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