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第1章
第17話 ククト
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「これが今ある作品。見たり触ったり自由にどうぞデス」
正直舐めていた。
緻密な縫い目、材質も高級感があった。
口にだすことはできないが、ぬいぐるみの方がマルルさんよりも風格があった。
これは決まりだ。マルルさんにお願いしよう。
ミアの顔を見ると、頷いて俺の考えに同意してくれた。
俺達はミアの描いた猫型ロボットのスケッチを見せ、ぬいぐるみの作成を依頼する。
「変わったぬいぐるみ…… 色とか希望あるデスか?」
「希望はこのスケッチ通りのぬいぐるみにしてください。可愛くするとかのアレンジは無しで」
ミアのイメージと一致することが一番大事なので、これについてはきっちりと伝えておく。
その他の詳細については、ミアとマルルさんで詰めてもらう。
材料費はサイズが小さいので、100ゴールドでいいそうだ。
予算的にも問題ない。注文書にサインし無事依頼できた。
「明日の夕方にはできるので、来てくださいデス」
「そんなに早くできるんですね。助かります。あっ、腕の良い鍛冶屋があれば紹介してもらえませんか?」
俺は近距離の武器が欲しかった。
腕の確かなドワーフの鍛冶職人って、冒険するには欠かせない存在だ。いろいろ相談したいこともある。
腕の確かなマルルさんのお眼鏡にかなう職人であれば、間違いはなさそうだし。
「うーん。ワチが知ってるのはドワーフだけど大丈夫デス?」
「はい。むしろその方が信頼できます」
「……人間はみんな嫌がるのに変わってるデスねぇ。ワチの父様なんだけど、腕は保証するデス」
マルルさんの父で名前はククト。凄腕の鍛冶師らしい。
この建物の裏に工房を構えているので行ってみることにした。
マルルさんはこれから依頼したぬいぐるみの製作に入るので、ここでお別れした。
◇
マルルさんの家を出て、ぐるりと外から裏に回ると工房があった。
二階建ての家で、1階部分を工房にしたような建物だ。
2つある煙突から煙は出ていなかった。
もしかして不在かな……
「ククトさんいますか? マルルさんからの紹介できました」
ん? 誰もいないのか。
もう一度呼んでみた。すると扉が勢いよく開く。
「なんでぇ、ワシになんか用かっ!?」
「あっ、忙しいところすみません。武器を作ってもらいたくて来ました」
「つまらん、そんなつまらんことやらんぞぉ。剣、槍、盾、鎧とかもうつまらん。ワシ、飽きちまった。だから帰れっ!」
え、何この人。怖いんですけど……
仕事と趣味がイコールのタイプだな。
「これを見てもらえますか?」
それならばと俺はミアが『デフォルメ』スキルで素材化した木の枝を見せた。
「ん? ただの木だな。それがどした」
ククトさんの目の前で、俺は木の先端を1メートルほど伸ばした。
「おおおおおおおっ、なんじゃこりゃ!!」
「すみませんでした。つまらない話だったようなので帰りますね」
「ちょ、ちょっと待て。ワシにその木を見せてくれ」
ふふふ、かかったな。意外にチョロかった。
俺は木をククトさんに渡した。
ククトさんは木を伸び縮みさせた後、突きのタイミングで伸ばしたり、振り下ろしの途中で伸ばしたりと、戦闘をイメージしながら有効な使い方を模索しているようだった。
「ふぅぅぅ、疲れた。けど、これ面白れぇな。この素材で武器作りたいんだろ? まぁ、ここでは落ち着かん。ちと汚いが工房に入ってくれ」
工房の中は、4人用のテーブルのまわり以外は武器や鍛冶に使う工具などで溢れていた。
「で、ワシに何作って欲しいんだ?」
「僕とそこにいるミア、それぞれに合う武器を作ってもらいたいです」
「武器の種類と素材は?」
「僕達は冒険者になりたての素人です。自分に合う武器が何かもわからない。けど、さっきのような素材を用意することはできます。だから自由な発想で僕達に合う装備を作ってくれる人を探しています」
「……お主らを見て、どんな素材でどんな武器を作るのか、ワシに考えろってことか?」
「それぐらいの職人じゃないと、僕達が用意する素材は任せられないですから」
「あれは古代文明や精霊のアーティファクトか何かなのか? ……たしかに、あんな素材を用意できるんなら、言われたことしかできない職人だと話にならんな」
「ククトさんどうですか? ちなみにマルルさんには別の仕事を依頼させてもらいました」
「む、娘にか!? なら、ワシにもやらせてくれ。絶対に満足できるモノを作ってやるっ!」
こうして、ククトさんに装備の製作を依頼することになった。
◇
――翌日
ククトさんが俺達の戦い方や動きを見たいということだったので、一緒に狩りへ出かけた。
俺とミアでゴブリンとコボルトを20匹近く倒した。
「そのスリングショットとか言う武器はエグいのぉ」
俺達の戦い方を見て、ククトさんは驚いていた。
まあ、強化石とセットじゃないとダメなんだけどね。
ククトさんからもう大丈夫と言われたので、俺達はバーセリーの街へ戻ることにした。
◇
バーセリーの街に入ると、冒険者ギルドで絡んできたおっさん一行がいた。
俺達を見るなりおっさんが近寄ってきた。
「おいおい、今度はドワーフと一緒か?」
正直舐めていた。
緻密な縫い目、材質も高級感があった。
口にだすことはできないが、ぬいぐるみの方がマルルさんよりも風格があった。
これは決まりだ。マルルさんにお願いしよう。
ミアの顔を見ると、頷いて俺の考えに同意してくれた。
俺達はミアの描いた猫型ロボットのスケッチを見せ、ぬいぐるみの作成を依頼する。
「変わったぬいぐるみ…… 色とか希望あるデスか?」
「希望はこのスケッチ通りのぬいぐるみにしてください。可愛くするとかのアレンジは無しで」
ミアのイメージと一致することが一番大事なので、これについてはきっちりと伝えておく。
その他の詳細については、ミアとマルルさんで詰めてもらう。
材料費はサイズが小さいので、100ゴールドでいいそうだ。
予算的にも問題ない。注文書にサインし無事依頼できた。
「明日の夕方にはできるので、来てくださいデス」
「そんなに早くできるんですね。助かります。あっ、腕の良い鍛冶屋があれば紹介してもらえませんか?」
俺は近距離の武器が欲しかった。
腕の確かなドワーフの鍛冶職人って、冒険するには欠かせない存在だ。いろいろ相談したいこともある。
腕の確かなマルルさんのお眼鏡にかなう職人であれば、間違いはなさそうだし。
「うーん。ワチが知ってるのはドワーフだけど大丈夫デス?」
「はい。むしろその方が信頼できます」
「……人間はみんな嫌がるのに変わってるデスねぇ。ワチの父様なんだけど、腕は保証するデス」
マルルさんの父で名前はククト。凄腕の鍛冶師らしい。
この建物の裏に工房を構えているので行ってみることにした。
マルルさんはこれから依頼したぬいぐるみの製作に入るので、ここでお別れした。
◇
マルルさんの家を出て、ぐるりと外から裏に回ると工房があった。
二階建ての家で、1階部分を工房にしたような建物だ。
2つある煙突から煙は出ていなかった。
もしかして不在かな……
「ククトさんいますか? マルルさんからの紹介できました」
ん? 誰もいないのか。
もう一度呼んでみた。すると扉が勢いよく開く。
「なんでぇ、ワシになんか用かっ!?」
「あっ、忙しいところすみません。武器を作ってもらいたくて来ました」
「つまらん、そんなつまらんことやらんぞぉ。剣、槍、盾、鎧とかもうつまらん。ワシ、飽きちまった。だから帰れっ!」
え、何この人。怖いんですけど……
仕事と趣味がイコールのタイプだな。
「これを見てもらえますか?」
それならばと俺はミアが『デフォルメ』スキルで素材化した木の枝を見せた。
「ん? ただの木だな。それがどした」
ククトさんの目の前で、俺は木の先端を1メートルほど伸ばした。
「おおおおおおおっ、なんじゃこりゃ!!」
「すみませんでした。つまらない話だったようなので帰りますね」
「ちょ、ちょっと待て。ワシにその木を見せてくれ」
ふふふ、かかったな。意外にチョロかった。
俺は木をククトさんに渡した。
ククトさんは木を伸び縮みさせた後、突きのタイミングで伸ばしたり、振り下ろしの途中で伸ばしたりと、戦闘をイメージしながら有効な使い方を模索しているようだった。
「ふぅぅぅ、疲れた。けど、これ面白れぇな。この素材で武器作りたいんだろ? まぁ、ここでは落ち着かん。ちと汚いが工房に入ってくれ」
工房の中は、4人用のテーブルのまわり以外は武器や鍛冶に使う工具などで溢れていた。
「で、ワシに何作って欲しいんだ?」
「僕とそこにいるミア、それぞれに合う武器を作ってもらいたいです」
「武器の種類と素材は?」
「僕達は冒険者になりたての素人です。自分に合う武器が何かもわからない。けど、さっきのような素材を用意することはできます。だから自由な発想で僕達に合う装備を作ってくれる人を探しています」
「……お主らを見て、どんな素材でどんな武器を作るのか、ワシに考えろってことか?」
「それぐらいの職人じゃないと、僕達が用意する素材は任せられないですから」
「あれは古代文明や精霊のアーティファクトか何かなのか? ……たしかに、あんな素材を用意できるんなら、言われたことしかできない職人だと話にならんな」
「ククトさんどうですか? ちなみにマルルさんには別の仕事を依頼させてもらいました」
「む、娘にか!? なら、ワシにもやらせてくれ。絶対に満足できるモノを作ってやるっ!」
こうして、ククトさんに装備の製作を依頼することになった。
◇
――翌日
ククトさんが俺達の戦い方や動きを見たいということだったので、一緒に狩りへ出かけた。
俺とミアでゴブリンとコボルトを20匹近く倒した。
「そのスリングショットとか言う武器はエグいのぉ」
俺達の戦い方を見て、ククトさんは驚いていた。
まあ、強化石とセットじゃないとダメなんだけどね。
ククトさんからもう大丈夫と言われたので、俺達はバーセリーの街へ戻ることにした。
◇
バーセリーの街に入ると、冒険者ギルドで絡んできたおっさん一行がいた。
俺達を見るなりおっさんが近寄ってきた。
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