5 / 76
第1章
第5話 スキル
しおりを挟む
冒険者カードは銅製で特殊な模様が描かれており、カードの裏面には俺の情報が彫られていた。
-----
名前:アライ タクミ
出身:ロゼッタ村
職業:ハッカー
ランク:F
-----
俺の日本での職業はSE(システムエンジニア)だった。
実際にハッカーだったわけじゃないが、セキュリティ対策とかで少しは知識がある。
スキルの素とも相性はいいはずだ。
「あんたは登録したばかりだから、冒険者ランクはFさ」
冒険者ランクは一番下からF、E、D、C、B、A、Sの7段階だった。
クエストなどで実績をあげるとランクは上がる。
クエストは、自分のひとつ上のランクまで受けられるそうだ。
「あと、貸出用の装備があるけど持っていくかい?」
奥の部屋から、ナイフ、革の胸当て、革靴、リュックを持ってきてくれた。
どれもボロボロとは言わないが、見るからに年季が入っていた。
「これらは、冒険者が古くなって捨てるものを、ギルドが買い取って整備し貸出用にしてるものさ。自分の装備が揃うまで、これでも使ってな」
俺はありがたく借りることにした。
レンタル料は、1日2ゴールド。スライム1匹倒せば払える額らしい。
しばらくは転生してきたときの部屋を使っていいそうだ。掃除するのが条件ではあるが。
お礼を言ってギルドを出た。
まずは、スキルについて調査するつもりだ。
――転生してきたときの部屋に戻り、ベッドに腰をおろした。
俺の職業は『ハッカー』、スキルの素は3つだ。
『接触』触っている対象への効果を上げる。
『変更』変更の効果。
『文字』文字の効果。
真っ白な空間で閃いたアイデア、それに必要なスキルの素を選択した。
そのアイデアが実際にできるのか。それを今から検証する。
俺はギルドから借りたナイフを取り出して、両手で包むように持ち、ナイフの情報が文字になるよう意識した。
――5分経過。
あれ、こんな感じでイメージすれば『鑑定』みたいなことができるかと思ったんだけどな。
そういえば、ハンナさんは『職業に関連したスキルが身につく』って言ってたな。
俺が今試したイメージは『鑑定』だ。
職業のハッカーを意識してやってみないとダメなのかもな。
……ナイフの中を巡る情報を『接触』した手で読み取り、それを『文字』にして見えるように意識する。
――3分経過。
俺の頭の中で何か閃いたような感覚がした。
ナイフを見つめると、ナイフのステータス画面が表示された。
------
名前:ナイフ
状態:古くてボロボロ
攻撃力:+3
------
うおおおおっ! できたっ!
ナイフのステータス画面に書かれている内容は、たぶん俺が認識しやすいようになっている気がする。
『古くてボロボロ』なんて表現はそれしか考えられない。
俺は自分のステータスも確認した。
-------
名前:アライ タクミ
職業:ハッカー
状態:正常
レベル:1
HP:10 / 10
SP:9 / 10
スキルの素:接触、文字、変更
スキル:分析(New)
-------
スキルの欄に『分析』ができてる、これが『スキルが生まれる』ってやつだな。
分析の文字を集中して見ると詳細が表示された。
『分析』:対象に触れて情報を取得する。取得した情報は表示できる。対象に触れている時間が長いほど詳しい情報を取得できる。
想像した通りのスキルだった。
スキルを使うとSPが減る。これも想定内だ。
さて、ここからが大事なところだ。
俺はナイフを持ち、『分析』スキルを使う。
すぐにステータス画面は表示されなかった。
一度『分析』が成功した対象でも、2回目以降も最低3分はかかるようだ。
――3分後、ナイフのステータス画面が表示された。
------
名前:ナイフ
状態:古くてボロボロ
攻撃力:+3
------
俺は攻撃力の『3』の文字を、『9』に書き換えてみる。
これが俺の閃いたアイデアだ。ステータスの文字を変更する。
職業のハッカーを意識して、『接触』した手で対象の『文字』を『変更』するように意識する。
ステータス画面に表示される攻撃力の文字は変わらず『3』のままだ。
これも成功するまでに時間がかかるかもしれないので、このままイメージし続けた。
また俺の頭の中で何かを閃いたような感覚がした。
ステータス画面を見ると、ナイフの文字が『9』に変わっていた。
やったぁぁぁぁぁ! これはすごい、凄すぎるっ!
早く、早くスキルの詳細が知りたい。
俺は慌てて自分のステータスを確認した。
-------
名前:アライ タクミ
職業:ハッカー
状態:正常
レベル:1
HP:10 / 10
SP:7 / 10
スキルの素:接触、文字、変更
スキル:分析、改ざん(New)
-------
『改ざん』:触れた対象に書かれてある文字を1文字だけ変更できる。
これはあまりにチート過ぎる、何か制約がありそうだな。
俺はSPがゼロになるまで検証した結果を整理してみた。
・『分析』『改ざん』ともに1回成功するとSPを1消費する。失敗するとSPは減らない。
・『分析』『改ざん』は、対象にスキルを使うイメージをしながら最低3分間、素手や素足などで直接触り続けないと失敗する。
・『改ざん』は、対象に1文字しか書き換えられない。一度『改ざん』した対象に、別の文字をさらに『改ざん』しようとすると、最初に改ざんした文字は元に戻る。
検証の過程で、ナイフの攻撃力『3→9』、拾ってきた投げやすい石の攻撃力『1→9』に『改ざん』した。
このあたりで検証を終えることにした。
真っ白な空間で目が覚めてから、まだ1日も経っていないのが嘘のようだ。
……ずっと前の出来事のように思える。
あの真っ白な空間で。
余りモノから選んだスキルの素。
閃いたアイデアに人生を賭けた。
俺はこの勝負に勝ったんだ。
不安や喜びでいっぱいに詰まっていた胸が軽くなっていく。
-----
名前:アライ タクミ
出身:ロゼッタ村
職業:ハッカー
ランク:F
-----
俺の日本での職業はSE(システムエンジニア)だった。
実際にハッカーだったわけじゃないが、セキュリティ対策とかで少しは知識がある。
スキルの素とも相性はいいはずだ。
「あんたは登録したばかりだから、冒険者ランクはFさ」
冒険者ランクは一番下からF、E、D、C、B、A、Sの7段階だった。
クエストなどで実績をあげるとランクは上がる。
クエストは、自分のひとつ上のランクまで受けられるそうだ。
「あと、貸出用の装備があるけど持っていくかい?」
奥の部屋から、ナイフ、革の胸当て、革靴、リュックを持ってきてくれた。
どれもボロボロとは言わないが、見るからに年季が入っていた。
「これらは、冒険者が古くなって捨てるものを、ギルドが買い取って整備し貸出用にしてるものさ。自分の装備が揃うまで、これでも使ってな」
俺はありがたく借りることにした。
レンタル料は、1日2ゴールド。スライム1匹倒せば払える額らしい。
しばらくは転生してきたときの部屋を使っていいそうだ。掃除するのが条件ではあるが。
お礼を言ってギルドを出た。
まずは、スキルについて調査するつもりだ。
――転生してきたときの部屋に戻り、ベッドに腰をおろした。
俺の職業は『ハッカー』、スキルの素は3つだ。
『接触』触っている対象への効果を上げる。
『変更』変更の効果。
『文字』文字の効果。
真っ白な空間で閃いたアイデア、それに必要なスキルの素を選択した。
そのアイデアが実際にできるのか。それを今から検証する。
俺はギルドから借りたナイフを取り出して、両手で包むように持ち、ナイフの情報が文字になるよう意識した。
――5分経過。
あれ、こんな感じでイメージすれば『鑑定』みたいなことができるかと思ったんだけどな。
そういえば、ハンナさんは『職業に関連したスキルが身につく』って言ってたな。
俺が今試したイメージは『鑑定』だ。
職業のハッカーを意識してやってみないとダメなのかもな。
……ナイフの中を巡る情報を『接触』した手で読み取り、それを『文字』にして見えるように意識する。
――3分経過。
俺の頭の中で何か閃いたような感覚がした。
ナイフを見つめると、ナイフのステータス画面が表示された。
------
名前:ナイフ
状態:古くてボロボロ
攻撃力:+3
------
うおおおおっ! できたっ!
ナイフのステータス画面に書かれている内容は、たぶん俺が認識しやすいようになっている気がする。
『古くてボロボロ』なんて表現はそれしか考えられない。
俺は自分のステータスも確認した。
-------
名前:アライ タクミ
職業:ハッカー
状態:正常
レベル:1
HP:10 / 10
SP:9 / 10
スキルの素:接触、文字、変更
スキル:分析(New)
-------
スキルの欄に『分析』ができてる、これが『スキルが生まれる』ってやつだな。
分析の文字を集中して見ると詳細が表示された。
『分析』:対象に触れて情報を取得する。取得した情報は表示できる。対象に触れている時間が長いほど詳しい情報を取得できる。
想像した通りのスキルだった。
スキルを使うとSPが減る。これも想定内だ。
さて、ここからが大事なところだ。
俺はナイフを持ち、『分析』スキルを使う。
すぐにステータス画面は表示されなかった。
一度『分析』が成功した対象でも、2回目以降も最低3分はかかるようだ。
――3分後、ナイフのステータス画面が表示された。
------
名前:ナイフ
状態:古くてボロボロ
攻撃力:+3
------
俺は攻撃力の『3』の文字を、『9』に書き換えてみる。
これが俺の閃いたアイデアだ。ステータスの文字を変更する。
職業のハッカーを意識して、『接触』した手で対象の『文字』を『変更』するように意識する。
ステータス画面に表示される攻撃力の文字は変わらず『3』のままだ。
これも成功するまでに時間がかかるかもしれないので、このままイメージし続けた。
また俺の頭の中で何かを閃いたような感覚がした。
ステータス画面を見ると、ナイフの文字が『9』に変わっていた。
やったぁぁぁぁぁ! これはすごい、凄すぎるっ!
早く、早くスキルの詳細が知りたい。
俺は慌てて自分のステータスを確認した。
-------
名前:アライ タクミ
職業:ハッカー
状態:正常
レベル:1
HP:10 / 10
SP:7 / 10
スキルの素:接触、文字、変更
スキル:分析、改ざん(New)
-------
『改ざん』:触れた対象に書かれてある文字を1文字だけ変更できる。
これはあまりにチート過ぎる、何か制約がありそうだな。
俺はSPがゼロになるまで検証した結果を整理してみた。
・『分析』『改ざん』ともに1回成功するとSPを1消費する。失敗するとSPは減らない。
・『分析』『改ざん』は、対象にスキルを使うイメージをしながら最低3分間、素手や素足などで直接触り続けないと失敗する。
・『改ざん』は、対象に1文字しか書き換えられない。一度『改ざん』した対象に、別の文字をさらに『改ざん』しようとすると、最初に改ざんした文字は元に戻る。
検証の過程で、ナイフの攻撃力『3→9』、拾ってきた投げやすい石の攻撃力『1→9』に『改ざん』した。
このあたりで検証を終えることにした。
真っ白な空間で目が覚めてから、まだ1日も経っていないのが嘘のようだ。
……ずっと前の出来事のように思える。
あの真っ白な空間で。
余りモノから選んだスキルの素。
閃いたアイデアに人生を賭けた。
俺はこの勝負に勝ったんだ。
不安や喜びでいっぱいに詰まっていた胸が軽くなっていく。
13
お気に入りに追加
3,213
あなたにおすすめの小説
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる