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(35)事件、解決する
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「というわけで、久須野良也も白井百合花も全面的に罪状を認めています。
ただ、我々の目では主導的立場は白井百合花で間違いありませんが、
直接的に殺人教唆となる言葉は使われていないようなので、
裁判ではどうなることやら……ってところですね」
「そうだな。過去の事例を見ても、
理解に苦しむ判決ってのは枚挙にいとまがねえからな」
「担当する裁判長がまともな人間であることを祈るばかりですね」
「全くだ」
深く頷きながら神里はコーヒーを啜る。
慶田大学の神里の研究室にて、神里と藤本、千波と深井がソファで向かい合わせに座っていた。
久須野と白井を逮捕してから2日後のこと、事の顛末を報告する為に千波と深井が研究室を訪れたのだ。
「そうそう、2年前に自殺として扱われた糸田悟郎さんの件も、
殺人事件として再捜査されるみたいですよ」
「そうか。そいつは良かったな。
息子の苦労も少しは報われるだろう。なあ、藤本」
「え? あ、そうですね」
突然話を振られて、藤本は曖昧に返事をする。
そんな彼の頭には白い包帯が巻かれていた。
「ところで、糸田さんのご家族は……どんな反応をしてましたか?」
「最初は泣いて困惑してましたが、“こんな事になったのは自分たちのせいでもあるから”と言ってました。これからは家族で糸田さんを支えるそうですよ」
「そうですか。それは良かった」
藤本がほっと息をつくと、神里がその背中をポンと叩いた。
更に千波が話を続ける。
「それから、ずっと鑑定中だった兼河さんの死因なんですが、
脳挫傷であることが確定しました」
「刺し傷の方は死因に当たらなかったのか」
「はい。だから糸田さんは殺人罪には問われないですね」
「そいつは朗報だな」
「まあ、さすがに無罪というわけにはいきませんが、
自首しているので大分罪は軽減されると思います」
「ほう。そうか」
「彼の場合、情状酌量の余地もありますからね」
「まあな」
神里が腕組みをして頷く。
その時、藤本が小さく挙手をした。
「あの、先生」
「何だ?」
「1つ、分からないというか、理解し難いことがあります」
「何だ? 言ってみろ」
「白井百合花は、糸田悟郎に別れを切り出されたことで憤慨して彼を殺害した、
とのことですが……交際相手から別れを告げられたぐらいで
殺意なんて抱くものでしょうか?」
藤本の質問に千波と深井も同調する。
神里は心得たとばかりに得意げに笑って見せた。
「その本質は彼女の幼少期の心の傷に起因してるな」
「幼少期の心の傷、ですか」
「白井百合花は幼い頃に両親が離婚している。
何でも父親が浮気して、相手のところに行ってしまったらしい。
妻と娘を捨ててな。
後に母親は金持ちの男と再婚して金銭的に困窮することはなかったようだが……
父親に捨てられたという思いは彼女の心に深い傷となって残った」
「そんなことが……」
「そんな心の傷を癒す為に、
大人になった彼女は父親の代わりになりそうな男と交際するようになった。
それが糸田悟郎だった」
「確かに、白井百合花と糸田悟郎は親子ほどの歳の差がありますね」
「だが、後に糸田悟郎から別れを告げられた。彼は妻子の元に帰ると言った。
その姿は、彼女にはかつて自分達を捨てた父親の姿と重なって見えたんだ」
「それで……殺意が湧いたんですね」
「そうだ。彼女が本当に殺したかったのは糸田悟郎じゃない。自分の父親だ」
きっぱりと言い切る。それから、神里は少しだけ目元を崩した。
「だが、そのもっと奥にあるのは愛されたかったという渇望だ」
神里の解説により、一同は納得する。
ただ、なんともやり切れない空気感が漂った。
少しの間沈黙が流れ、各々がコーヒーを口にする。
そんな中、これまで黙っていた深井が空気を変えるように話題を変えた。
「ところで藤本さん、本当に入院しなくて大丈夫なんですか?」
「え?」
「結構がっつり殴られてたみたいだったので」
「ああ……」
2日前、久須野によってスパナで頭を殴られた後、藤本は意識を失った。
治療を受けた彼が目を覚ましたのは翌朝のことだった。
その後の検査の結果、脳に大きな損傷は無いと判明したのは幸いだった。
が、それを知るや否や彼はさっさと退院してしまったのだ。
医者からはしばらく入院することを勧められたが断った。
そして現在に至る。
のだが、時折頭をふらつかせているので深井が心配したのだった。
「大丈夫ですよ」
「ならいいですけど……」
「取り敢えず医者から許可はもらってるから大丈夫だ。
何より、こいつが居ねえと俺の腰痛生活がままならないからな。
医者の許可が無くても無理やり連れて帰ってたよ」
「えぇ……」
明らかに冗談ではあるが、とんでもないことを言って豪快に笑う神里を見て、
深井がやや引き気味の声を漏らす。
神里の隣では、藤本が困り顔で微笑んでいた。
「とにかく、これで事件の方は解決しました。
神里先生、藤本君、ご協力ありがとうございました」
「おう。また何かあったらいつでも来い」
「ありがとうございます」
千波が深々と頭を下げる。深井もそれに合わせる。
「それじゃあ、我々はこれで」
「ああ、ご苦労さん」
ソファから立ち上がる刑事2人に労いの言葉を掛ける。
それから神里は藤本の方に顔を向けた。
「さて、俺たちも行くか。藤本、肩を貸してくれ」
「はい」
神里がゆっくりと立ち上がる。
ぎっくり腰発症から4日目だからか、これまでより幾分かスムーズに立てているようだった。
「先生たちもこのあと用事ですか?」
「3時から講義があるんだ」
「ああ、そうでしたか」
神里の足取りに合わせて4人でゆっくりと廊下に出た。
講義室へ向かう神里たちと出口へ向かう千波たちとは方向が逆なので、ここでお別れだ。
「では、失礼します」
「おう、宇崎にもよろしく……言わなくていいな」
「あはは」
「さてと。行くぞ、藤本」
「はい、先生」
挨拶もそこそこに神里は千波たちに背を向ける。
そんな神里を支えながら歩く藤本の後ろ姿を見て、深井が呟いた。
「本当に大丈夫なんですかね。
自分も怪我人なのにあんな大柄な人を支えたりして」
「んー……でもよく見て」
「はい?」
「見ての通り、藤本君は先生の体を支えながら歩いてる。
先生は先生で、藤本君がふらつかないように彼の肩を支えてる。
ああ見えて、ちゃんとお互いに支え合ってるのよ」
ゆっくりと歩く2人の後ろ姿を、千波が微笑ましそうに見つめる。
すると深井も納得したように頷いた。
「なるほど」
「さてと。じゃあ、私たちも行きましょう」
「はい」
千波と深井は、神里たちに背を向けて歩き出した。
それぞれの行くべき場所へ。
窓から差し込む春の陽気が眩しい。
大学構内では、学生たちの賑やかな声があちこちで響いていた。
(終)
ただ、我々の目では主導的立場は白井百合花で間違いありませんが、
直接的に殺人教唆となる言葉は使われていないようなので、
裁判ではどうなることやら……ってところですね」
「そうだな。過去の事例を見ても、
理解に苦しむ判決ってのは枚挙にいとまがねえからな」
「担当する裁判長がまともな人間であることを祈るばかりですね」
「全くだ」
深く頷きながら神里はコーヒーを啜る。
慶田大学の神里の研究室にて、神里と藤本、千波と深井がソファで向かい合わせに座っていた。
久須野と白井を逮捕してから2日後のこと、事の顛末を報告する為に千波と深井が研究室を訪れたのだ。
「そうそう、2年前に自殺として扱われた糸田悟郎さんの件も、
殺人事件として再捜査されるみたいですよ」
「そうか。そいつは良かったな。
息子の苦労も少しは報われるだろう。なあ、藤本」
「え? あ、そうですね」
突然話を振られて、藤本は曖昧に返事をする。
そんな彼の頭には白い包帯が巻かれていた。
「ところで、糸田さんのご家族は……どんな反応をしてましたか?」
「最初は泣いて困惑してましたが、“こんな事になったのは自分たちのせいでもあるから”と言ってました。これからは家族で糸田さんを支えるそうですよ」
「そうですか。それは良かった」
藤本がほっと息をつくと、神里がその背中をポンと叩いた。
更に千波が話を続ける。
「それから、ずっと鑑定中だった兼河さんの死因なんですが、
脳挫傷であることが確定しました」
「刺し傷の方は死因に当たらなかったのか」
「はい。だから糸田さんは殺人罪には問われないですね」
「そいつは朗報だな」
「まあ、さすがに無罪というわけにはいきませんが、
自首しているので大分罪は軽減されると思います」
「ほう。そうか」
「彼の場合、情状酌量の余地もありますからね」
「まあな」
神里が腕組みをして頷く。
その時、藤本が小さく挙手をした。
「あの、先生」
「何だ?」
「1つ、分からないというか、理解し難いことがあります」
「何だ? 言ってみろ」
「白井百合花は、糸田悟郎に別れを切り出されたことで憤慨して彼を殺害した、
とのことですが……交際相手から別れを告げられたぐらいで
殺意なんて抱くものでしょうか?」
藤本の質問に千波と深井も同調する。
神里は心得たとばかりに得意げに笑って見せた。
「その本質は彼女の幼少期の心の傷に起因してるな」
「幼少期の心の傷、ですか」
「白井百合花は幼い頃に両親が離婚している。
何でも父親が浮気して、相手のところに行ってしまったらしい。
妻と娘を捨ててな。
後に母親は金持ちの男と再婚して金銭的に困窮することはなかったようだが……
父親に捨てられたという思いは彼女の心に深い傷となって残った」
「そんなことが……」
「そんな心の傷を癒す為に、
大人になった彼女は父親の代わりになりそうな男と交際するようになった。
それが糸田悟郎だった」
「確かに、白井百合花と糸田悟郎は親子ほどの歳の差がありますね」
「だが、後に糸田悟郎から別れを告げられた。彼は妻子の元に帰ると言った。
その姿は、彼女にはかつて自分達を捨てた父親の姿と重なって見えたんだ」
「それで……殺意が湧いたんですね」
「そうだ。彼女が本当に殺したかったのは糸田悟郎じゃない。自分の父親だ」
きっぱりと言い切る。それから、神里は少しだけ目元を崩した。
「だが、そのもっと奥にあるのは愛されたかったという渇望だ」
神里の解説により、一同は納得する。
ただ、なんともやり切れない空気感が漂った。
少しの間沈黙が流れ、各々がコーヒーを口にする。
そんな中、これまで黙っていた深井が空気を変えるように話題を変えた。
「ところで藤本さん、本当に入院しなくて大丈夫なんですか?」
「え?」
「結構がっつり殴られてたみたいだったので」
「ああ……」
2日前、久須野によってスパナで頭を殴られた後、藤本は意識を失った。
治療を受けた彼が目を覚ましたのは翌朝のことだった。
その後の検査の結果、脳に大きな損傷は無いと判明したのは幸いだった。
が、それを知るや否や彼はさっさと退院してしまったのだ。
医者からはしばらく入院することを勧められたが断った。
そして現在に至る。
のだが、時折頭をふらつかせているので深井が心配したのだった。
「大丈夫ですよ」
「ならいいですけど……」
「取り敢えず医者から許可はもらってるから大丈夫だ。
何より、こいつが居ねえと俺の腰痛生活がままならないからな。
医者の許可が無くても無理やり連れて帰ってたよ」
「えぇ……」
明らかに冗談ではあるが、とんでもないことを言って豪快に笑う神里を見て、
深井がやや引き気味の声を漏らす。
神里の隣では、藤本が困り顔で微笑んでいた。
「とにかく、これで事件の方は解決しました。
神里先生、藤本君、ご協力ありがとうございました」
「おう。また何かあったらいつでも来い」
「ありがとうございます」
千波が深々と頭を下げる。深井もそれに合わせる。
「それじゃあ、我々はこれで」
「ああ、ご苦労さん」
ソファから立ち上がる刑事2人に労いの言葉を掛ける。
それから神里は藤本の方に顔を向けた。
「さて、俺たちも行くか。藤本、肩を貸してくれ」
「はい」
神里がゆっくりと立ち上がる。
ぎっくり腰発症から4日目だからか、これまでより幾分かスムーズに立てているようだった。
「先生たちもこのあと用事ですか?」
「3時から講義があるんだ」
「ああ、そうでしたか」
神里の足取りに合わせて4人でゆっくりと廊下に出た。
講義室へ向かう神里たちと出口へ向かう千波たちとは方向が逆なので、ここでお別れだ。
「では、失礼します」
「おう、宇崎にもよろしく……言わなくていいな」
「あはは」
「さてと。行くぞ、藤本」
「はい、先生」
挨拶もそこそこに神里は千波たちに背を向ける。
そんな神里を支えながら歩く藤本の後ろ姿を見て、深井が呟いた。
「本当に大丈夫なんですかね。
自分も怪我人なのにあんな大柄な人を支えたりして」
「んー……でもよく見て」
「はい?」
「見ての通り、藤本君は先生の体を支えながら歩いてる。
先生は先生で、藤本君がふらつかないように彼の肩を支えてる。
ああ見えて、ちゃんとお互いに支え合ってるのよ」
ゆっくりと歩く2人の後ろ姿を、千波が微笑ましそうに見つめる。
すると深井も納得したように頷いた。
「なるほど」
「さてと。じゃあ、私たちも行きましょう」
「はい」
千波と深井は、神里たちに背を向けて歩き出した。
それぞれの行くべき場所へ。
窓から差し込む春の陽気が眩しい。
大学構内では、学生たちの賑やかな声があちこちで響いていた。
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