【本編完結/番外編追加】真・誓いの指輪〜彼のことは家族として……そして、人生の伴侶として愛することを心に決めました〜

山賊野郎

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25、追跡①

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女子高生の津木恋月つぎれんげは、親や先生の前では真面目な良い子の面を見せていた。
その一方で、予備校をサボってパパ活に勤しむ裏の顔も持ち合わせていた。
そんな生活の果てに失踪してしまった。
彼女が失踪する直前に会っていたのが、中岡恭志という中年男性だった。
津木恋月のパパ活の相手だと思われる。
彼女の失踪について何か知っているものと判断して、康介は同僚の刑事・高倍と共に中岡の元を訪れた。
彼の勤務先である、天津風高等学校に。
そこは康介の息子・楓が通う学校であり、奇しくも中岡は楓の担任の教師だった。

「え? 今日はもう帰ったんですか」
「はい。既に退勤されてますね」
「確か、6時ぐらいまでは生徒への補習があると聞いていたのですが」
「その辺は分かりませんが、とにかく5時30分にて退勤となってます」
「そうですか。分かりました」

担当の職員に頭を下げて、康介と高倍は事務室を出た。
6時過ぎに学校を訪れた時点で、中岡は退勤したとのことだった。
彼についての詳細は事務担当の知るところではない。

「空振りでしたね」
「そうだな。仕方ない、奴の自宅に向かうか」
「でも、普段より早い退勤ってことは、何か用事があるのかも」
「さあな。自宅に帰ってなかったら、改めて考えよう」

建物から出て、車に乗り込む。
次に向かうは中岡恭志の自宅アパートだ。

「…………」

運転を高倍に任せつつ、康介は自身の携帯端末を開く。
楓からの連絡を確認したかった……のだが。

(無いな)

電話もメッセージも、さっき康介が送ったままになっていた。

(補習はとっくに終わってるから、普通に考えれば気付かないはずが無いんだが)

友達と遊んでいて電話に気付かなかった──なら、それはそれで構わない。
だが、楓は補習があると嘯いて遊びに行くような子じゃない。

(津木恋月は、親の前では真面目な良い子として振る舞ってたが……。
 いや、楓に限っては絶対にそんな子じゃない)

では、なぜ楓は康介からの連絡に何も返さないのだろうか。

(何かあったのか? どこかで倒れた? 事件か事故に巻き込まれた?)

仕事柄、最悪の事態を想定することが癖になっているらしい。
康介は自分の思考回路に呆れ、小さくため息をついた。

「さっきから、よくため息をついてますね」
「え? そうだったか」
「しかも、ずっとスマホを気にしてるし」
「ああ、まあ……」
「楓くん絡みのことですか?」
「何で分かった?」
「藤咲さん、楓くんのことになるとすぐに雰囲気が変わりますから」

言い当てられて驚く康介に対し、高倍が苦笑する。
康介の態度は、運転中の高倍にすら分かってしまうほどにあからさまだった。
それなのに、当の本人は全く気付いてないらしい。

「でもまあ、今回は中岡が楓くんの担任だということもありますから。
 心配になるのも当然ですよね」
「そうなんだよなあ。俺自身、中岡にはちょっと引っ掛かることもあるし」
「引っ掛かること?」
「ああ。話せば長くなるから割愛するが、中岡は警戒するべき相手だと思う」
「そうですね。高校教師でありながら、女子高生を買ってたわけですからね」
「ああ」
「そういえば、中岡恭志の過去について少し調べたんですけど、
 奴は過去に何度か問題を起こしてますね。いずれも、生徒への暴行で」
「そうなのか?」
「ええ。学校側は行き過ぎた指導だったと被害者に謝罪して、
 警察沙汰にはしなかったようですが」
「へえ。見た目からはそういう印象は受けなかったが、分からんものだな」
「基本的には大人しいタイプなんですが、
 自分の思い通りにならないと豹変するっぽいですね」
「あー……支配欲が強いのか。DVとかやってそうだな」
「既にやってますよ。5年前、妻子へのDVが原因で離婚してます」
「まじか。ますます、楓とは関わらせたくない奴だ」

中岡恭志について、知れば知るほど碌でもない事実が浮上してくる。

(ここ数日、楓は中岡の元で補習を受けていたはずだが、本当に大丈夫だったのか?)

またもや、康介は刑事ではなく父親の顔になっていた。
そんな彼に気付き、高倍はやれやれと呆れながら微笑むのだった。
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