【本編完結/番外編追加】真・誓いの指輪〜彼のことは家族として……そして、人生の伴侶として愛することを心に決めました〜

山賊野郎

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15、小悪党

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「おい、借りたものはちゃんと返せよ」
「や、だから今は手持ちがこれだけしかなくて……」
「だったら、他人からぶん取るなり内臓売るなりして金を作ってこいや!」
「ひいいっ」

大柄な男に胸ぐらを掴まれて、貧相な中年男性は怯えて身を縮こまらせる。
男が拳を振り上げて殴られる──次に来る衝撃を確信して、中年男性はぎゅっと目を閉じた。
が、しばらく待っても衝撃は降りてこなかった。
代わりに、男の悲鳴が耳に届いた。
不思議に思い目を開けると、険しい顔をした二人の男性によって大柄な男は取り押さえられていた。

「板呉剛、恐喝および暴行の現行犯で逮捕する」

大柄な男は後ろ手に手錠を掛けられた。
どうやら、彼を取り押さえていた二人の男は刑事だったらしい。
二人がかりで連行されていく板呉を眺めながら、貧相な中年男はへなへなとその場に崩れ落ちた。





「白昼堂々、路地裏で暴力行為とは呆れた奴だな」

杉並中央警察署の取調室にて、康介が大柄な男こと板呉剛に詰め寄る。
板呉剛(いたくれ ごう)【32】……半グレ組織に所属している男で、主に闇金の債務者からの取り立てを生業にしている。
強引で暴力的なやり方で、何度も警察に通報されている。
更に、この男の前科はそれだけに留まらない。
過去には性的暴行の罪で捕まったことがあった。
相手はいずれも未成年の男子だった。
本人の性的嗜好および、男子相手なら事件が明るみに出にくいという卑劣な考えのもとでの犯行だった。
被害に遭ったのはいずれも中性的な顔立ちの未成年男子ばかりだった。
そう、楓のような。

「別に、ちょっと胸ぐらを掴んだだけで殴ったりはしてねえよ」
「それでも立派な暴行罪になるんだよ」
「そもそも、借りた金をちゃんと返さない奴が悪いんだろうが」
「お前らが法外な利息を取ってるんだろう。そっちも取り締まってやろうか」
「勘弁してくれよ。
 つっても、ウチはヤクザじゃないんで暴対法には引っ掛からねえけど」
「クズが。要らん知恵だけは付けやがって」

一切悪びれる様子のない板呉に、康介が吐き捨てるように言う。

「まあ良いや。罰金なら払うからさ、さっさと外に出してくれよ」
「待て。お前の罪は今回のことだけじゃない」
「はあ?」
「昨日、夜の公園で高校生を襲ったな。
 彼を殴って無理やり車に連れ込もうとしただろう?」
「え? 何でそれを……」
「お前が過去に犯した罪はよく知っている。
 昨日の少年にも同じ事をしようとしていたんだろう」
「うっ……」
「邪魔が入ってその場から逃げたらしいが……運が良かったな、お前」
「は?」
「お前が昨日、連れ去ろうとした少年は俺の息子だったんだよ」
「え? 嘘だろ。全然似てねえのに」
「あのまま事に及んでいたら、今頃お前は生きてなかっただろうよ」
「…………」

康介の目には確かな殺意が宿っていた。
その迫力に気圧されて、さすがの板呉も押し黙る。
そんな中、突如として板呉は強烈な勢いで胸ぐらを掴まれた。

「分かったら、二度と楓に近付くなよ。次に何かしたら、殺す」

板呉の返事を待たずして、康介は彼の胸ぐらから手を離した。乱暴な手つきだった。
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