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14、やはり良い先生
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「学校、休まなくて本当に大丈夫なのか?」
「うん。大きな怪我をしたわけじゃないから」
明けた朝、康介は楓に再三の確認をした。
パンとスープだけの簡素な食卓──昨日の事から楓を気遣い、康介がコンビニで買ってきた──それを挟んで、二人は向かい合っていた。
「なんか心配だなあ。無理してないか?」
「う……全く無理してないってわけじゃないけど」
気まずそうに目を伏せて、それから楓は顔を上げた。
「でも、昨日の事で先生にまともにお礼も言えてないし」
「ああ……」
「それに、体は本当に大丈夫だから。普通にしてた方が元気になれそうだし」
「そうか。分かった。楓がそう言うんなら、尊重しよう。
まあ、今日は金曜日だしな。今日だけ頑張れば休みだし……何とかなるか」
「うん」
「ただし、一つ条件を出そうかな」
「何?」
「朝メシはしっかり食っていけ。それが条件だ」
これまで僅かにスープに口を付ける程度にしか楓は朝食とっていなかった。
彼が昨夜から殆ど何も食べていない事も、康介は知っている。
心配に思わないはずがなかった。
「そうだなあ。このサンドイッチを二つ。最低でもこれを食べること。良いな?」
思いがけない条件にきょとんとする楓だったが、すぐに頷き微笑んで見せた。
「はい」
「よし、良い子だ」
言われた通りにサンドイッチを手に取る楓を見て、康介もにっこりと笑った。
学校に着くなり、楓は真っ先に職員室へ向かった。
昨日の件で担任の中岡にお礼を言う為だった。
「おはようございます、中岡先生」
「ああ、藤咲か」
「昨日はありがとうございました」
「いや、礼には及ばない。それより、もう大丈夫なのか?」
「はい。お陰様で」
「そうか。まあ、くれぐれも無理をしないように」
「はい」
「ところで、今日は補習は出られそうか?」
「はい。お願いします」
「そうか。分かった」
中岡は至って普段通りの対応だった。
気難しい顔のまま、淡々と必要なやり取りのみ交わす。
無関心というわけではないのだろうが、彼なりの気遣いだと思えた。
昨夜の件で何か聞かれると思っていた楓にとって、それはありがたいものだった。
「うん。大きな怪我をしたわけじゃないから」
明けた朝、康介は楓に再三の確認をした。
パンとスープだけの簡素な食卓──昨日の事から楓を気遣い、康介がコンビニで買ってきた──それを挟んで、二人は向かい合っていた。
「なんか心配だなあ。無理してないか?」
「う……全く無理してないってわけじゃないけど」
気まずそうに目を伏せて、それから楓は顔を上げた。
「でも、昨日の事で先生にまともにお礼も言えてないし」
「ああ……」
「それに、体は本当に大丈夫だから。普通にしてた方が元気になれそうだし」
「そうか。分かった。楓がそう言うんなら、尊重しよう。
まあ、今日は金曜日だしな。今日だけ頑張れば休みだし……何とかなるか」
「うん」
「ただし、一つ条件を出そうかな」
「何?」
「朝メシはしっかり食っていけ。それが条件だ」
これまで僅かにスープに口を付ける程度にしか楓は朝食とっていなかった。
彼が昨夜から殆ど何も食べていない事も、康介は知っている。
心配に思わないはずがなかった。
「そうだなあ。このサンドイッチを二つ。最低でもこれを食べること。良いな?」
思いがけない条件にきょとんとする楓だったが、すぐに頷き微笑んで見せた。
「はい」
「よし、良い子だ」
言われた通りにサンドイッチを手に取る楓を見て、康介もにっこりと笑った。
学校に着くなり、楓は真っ先に職員室へ向かった。
昨日の件で担任の中岡にお礼を言う為だった。
「おはようございます、中岡先生」
「ああ、藤咲か」
「昨日はありがとうございました」
「いや、礼には及ばない。それより、もう大丈夫なのか?」
「はい。お陰様で」
「そうか。まあ、くれぐれも無理をしないように」
「はい」
「ところで、今日は補習は出られそうか?」
「はい。お願いします」
「そうか。分かった」
中岡は至って普段通りの対応だった。
気難しい顔のまま、淡々と必要なやり取りのみ交わす。
無関心というわけではないのだろうが、彼なりの気遣いだと思えた。
昨夜の件で何か聞かれると思っていた楓にとって、それはありがたいものだった。
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