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第27話、義妹ドラベッラ、終わりの始まり
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ドラベッラは逃げていた。振り返る余裕はない。もしかしたらすぐうしろまで魔女アルチーナの手が迫っているかもしれない。
「何者だ! 止まれ!」
王家の私有地まで走ってくると、ドラベッラでさえドレスを脱ぎ捨てたら飛び越えられそうな簡易的な柵の前に、見張りが二人立っていた。
「助けて下さい、魔女から逃げているんです!」
長いスカートの裾は、豪華で重そうな生地には不釣り合いな泥はねで汚れている。決して庶民には見えないものの髪は乱れ、いかにも訳ありな様子の少女に見張りたちは顔を見合わせた。
「魔女だと?」
もちろん二人とも王宮の地下牢から魔女母娘が脱走した事件については知っていたが、ここは王都から遠く離れている。
「嬢ちゃん、村の教会にでも行ってくんな。ここから先は国王陛下の土地だから、むやみに部外者を入れるわけにはいかねぇんだ」
「王族の方々がいらっしゃるからお願いしているんです! 私、第二王子殿下の居場所を知っていますからっ!」
「何を言っているんだ?」
見張りは怪訝そうに眉根を寄せた。下っ端の彼らには、王子二人が消えてしまったなどという極秘情報は伝わっていない。
それを察したドラベッラが、しまったという顔をしたとき、
「おい、そこの小娘」
湖の方から近付いて来た騎士団の一人が、馬上から声をかけた。
「王子の居場所だと? 貴様、何を知っている?」
「よくぞ訊いてくださいました」
ドラベッラは侯爵令嬢らしく背筋をぴんと伸ばして、
「私を国王陛下のもとへ案内なさいまし。カルロ殿下の居場所をお伝えしましょう」
ドラベッラは離宮に国王が来ていないことまでは知らなかった。
上官らしき男の馬が、一歩進み出た。
「お前が小脇に抱えている、その汚い布包みはなんだ?」
「これこそが、カルロ様につながる重要な証拠ですわ」
上官は部下の騎士を振り返ると、一言命じた。
「連れて行け」
「ロミルダ様、いらっしゃいますか?」
離宮に与えられた自室で、紐を振り回して三毛猫ミケを遊ばせていたロミルダは、廊下からかかった声に顔を上げた。侍女のサラが扉を開けると、ミケーレ殿下の侍従が立っていた。道を封鎖するため手の空いている使用人がかり出されたので、どうも人が足りていないようだ。
「ドラベッラを名乗る小娘が捕らえられました」
「えぇっ!?」
驚いて大きな声を出したら、ミケがぴゅーっと走ってベッドの下に隠れてしまった。
「本人かどうか確認するため、謁見の間へ来ていただきたいとのことです」
「分かりました。すぐ行きますわ」
立ち上がったロミルダは、手にしていた紐をクローゼットにかけた。
「その紐、どこから持ってきたんですか?」
こそっと尋ねたサラに、
「私のコルセットの紐よ」
しれっと答えるロミルダ。
「やっぱり。そんなもので猫を遊ばせないでください」
「いいじゃないの。今、着ているものじゃないんだから」
「そういう問題じゃありません」
部屋を出るとなぜかしっかりミケもついてきた。
「あの、ミケ――猫ちゃんも一緒で構いませんか?」
「ロミルダ様、ミケーレ殿下みたいですね。猫ちゃんも連れてきて大丈夫ですよ。あ、ついでにサラさんも」
「私をおまけみたいに言わないでください」
大理石の床に赤いじゅうたんが敷かれた謁見の間は、王都の王宮内のものと比べると半分ほどの広さだった。本来国王が座るべき正面の玉座には誰も座っておらず、一段下がったところに王妃殿下が座しておられた。挨拶するロミルダに、
「ロミルダ様はあちらへ」
侍従が王妃殿下のはす向かいの椅子を示した。ロミルダが腰かけると、待ってましたとばかりに、その膝の上にミケが飛び乗ってきた。
(私のお膝は自分専用って顔ね)
ロミルダは、ぴりっとした空気に配慮して笑いたいのをこらえた。
「入りなさい」
侍従が声をかけると、うしろの扉が開いて騎士二人に両脇を抱えられ、ドラベッラが引き立てられて入ってきた。
「お久しぶりねえ、お義姉様。小汚い野良猫なんかお膝に乗せちゃって、お似合いよ」
不敵な笑みを浮かべるドラベッラに、ロミルダはほっと胸をなで下ろした。逃亡生活でやせ衰えているのではないかと心配していたが、悪態をつくほど元気だった。だが大切なミケの悪口を言ったことは、全く許していない。
「小汚さではあなたのお洋服には及びませんわ。でもかわいらしさでは、ミケちゃんの圧倒的勝利ですけれどね、これっぽっちも可愛げのないドラベッラ」
毒舌を披露するロミルダを、驚いたようにミケが見上げた。
(思わず言い返しちゃった!)
猫の丸い瞳にまじまじと見られて、ロミルダは気まずくなって目をそらした。
「本人のようですな?」
椅子に座らず立ったままの侍従が振り返って尋ねる。
「はい、間違いありません」
ロミルダがしっかりうなずくと、侍従が拘束されたままのドラベッラに向きなおって、
「魔女の娘ドラベッラよ、王太子殿下の婚約者であるロミルダ様への無礼、謝罪せよ!」
高らかに言いつのった。
「はぁ? その肝心の王太子殿下が行方不明なんでしょう? このまま本人が見つからなければ、お義姉様は婚約者でもなんでもないわ」
ドラベッラの言葉に、王妃殿下は不愉快そうに眉をひそめた。それに気付いたロミルダ、
「言葉を慎みなさい、ドラベッラ。王妃殿下の御前ですよ」
「お義姉様ったら何よ偉そうに。私はカルロ様の居場所を知っているのよ」
「それを早く言え」
侍従が先をうながすが、
「私を火あぶりにしないと誓ってください。私は魔女の娘ではなく、モンターニャ侯爵の娘です」
(どっちもでしょうが)
ロミルダは胸の内でつぶやいた。ドラベッラが実の母親であるアルチーナを裏切ってここへ来たのか、それともアルチーナの差し金なのかは分からない。だが会ったことのない母を慕い続けるロミルダにとって、気持ちの良い言葉ではなかった。
「分かりました」
王妃殿下の落ち着いた声が響いた。
「ドラベッラ、あなたを火あぶりにしないよう、私から陛下にお願い申し上げます」
「王妃様――」
侍従が小さくつぶやいた。
「ありがとうございます、王妃様!」
目をらんらんと輝かせて礼を言うとドラベッラは、脇を押さえる騎士に自分の使用人に対して言うかのように命じた。
「さっき私から奪った懐中時計をお渡しして」
ムッとしながらも騎士の一人が、麻の布に包まれた懐中時計を侍従に手渡し、それは侍従から王妃に差し出された。
(あれはカルロ殿下の懐中時計? なぜもう一つあるのかしら)
ロミルダは目をこらして王妃の手の中の時計をみつめる。
(王妃様、懐中時計のまわりに全てのダイヤが嵌まっているか、確かめていらっしゃる?)
「それで、この時計がなんだと言うのですか?」
懐中時計をじっと見つめていた王妃が、顔を上げてドラベッラに尋ねた。
「驚かないでくださいまし、王妃様。魔女は恐ろしい魔法で、カルロ殿下をその懐中時計に変えてしまったのです!」
その言葉に、王妃以外の全員が息をのんだ。
(まさか、嘘でしょう!?)
ロミルダと侍従、騎士二人は目と目で会話する。王妃だけは変わらぬ口調で、
「事の真偽は宮廷魔術師に確認させましょう。あなたにもう一つ尋ねたいことがあります」
「なんでしょうか?」
訊き返すドラベッラの声が、わずかに緊張する。
「ミケーレ第一王子の居場所は知らないのですか?」
「何者だ! 止まれ!」
王家の私有地まで走ってくると、ドラベッラでさえドレスを脱ぎ捨てたら飛び越えられそうな簡易的な柵の前に、見張りが二人立っていた。
「助けて下さい、魔女から逃げているんです!」
長いスカートの裾は、豪華で重そうな生地には不釣り合いな泥はねで汚れている。決して庶民には見えないものの髪は乱れ、いかにも訳ありな様子の少女に見張りたちは顔を見合わせた。
「魔女だと?」
もちろん二人とも王宮の地下牢から魔女母娘が脱走した事件については知っていたが、ここは王都から遠く離れている。
「嬢ちゃん、村の教会にでも行ってくんな。ここから先は国王陛下の土地だから、むやみに部外者を入れるわけにはいかねぇんだ」
「王族の方々がいらっしゃるからお願いしているんです! 私、第二王子殿下の居場所を知っていますからっ!」
「何を言っているんだ?」
見張りは怪訝そうに眉根を寄せた。下っ端の彼らには、王子二人が消えてしまったなどという極秘情報は伝わっていない。
それを察したドラベッラが、しまったという顔をしたとき、
「おい、そこの小娘」
湖の方から近付いて来た騎士団の一人が、馬上から声をかけた。
「王子の居場所だと? 貴様、何を知っている?」
「よくぞ訊いてくださいました」
ドラベッラは侯爵令嬢らしく背筋をぴんと伸ばして、
「私を国王陛下のもとへ案内なさいまし。カルロ殿下の居場所をお伝えしましょう」
ドラベッラは離宮に国王が来ていないことまでは知らなかった。
上官らしき男の馬が、一歩進み出た。
「お前が小脇に抱えている、その汚い布包みはなんだ?」
「これこそが、カルロ様につながる重要な証拠ですわ」
上官は部下の騎士を振り返ると、一言命じた。
「連れて行け」
「ロミルダ様、いらっしゃいますか?」
離宮に与えられた自室で、紐を振り回して三毛猫ミケを遊ばせていたロミルダは、廊下からかかった声に顔を上げた。侍女のサラが扉を開けると、ミケーレ殿下の侍従が立っていた。道を封鎖するため手の空いている使用人がかり出されたので、どうも人が足りていないようだ。
「ドラベッラを名乗る小娘が捕らえられました」
「えぇっ!?」
驚いて大きな声を出したら、ミケがぴゅーっと走ってベッドの下に隠れてしまった。
「本人かどうか確認するため、謁見の間へ来ていただきたいとのことです」
「分かりました。すぐ行きますわ」
立ち上がったロミルダは、手にしていた紐をクローゼットにかけた。
「その紐、どこから持ってきたんですか?」
こそっと尋ねたサラに、
「私のコルセットの紐よ」
しれっと答えるロミルダ。
「やっぱり。そんなもので猫を遊ばせないでください」
「いいじゃないの。今、着ているものじゃないんだから」
「そういう問題じゃありません」
部屋を出るとなぜかしっかりミケもついてきた。
「あの、ミケ――猫ちゃんも一緒で構いませんか?」
「ロミルダ様、ミケーレ殿下みたいですね。猫ちゃんも連れてきて大丈夫ですよ。あ、ついでにサラさんも」
「私をおまけみたいに言わないでください」
大理石の床に赤いじゅうたんが敷かれた謁見の間は、王都の王宮内のものと比べると半分ほどの広さだった。本来国王が座るべき正面の玉座には誰も座っておらず、一段下がったところに王妃殿下が座しておられた。挨拶するロミルダに、
「ロミルダ様はあちらへ」
侍従が王妃殿下のはす向かいの椅子を示した。ロミルダが腰かけると、待ってましたとばかりに、その膝の上にミケが飛び乗ってきた。
(私のお膝は自分専用って顔ね)
ロミルダは、ぴりっとした空気に配慮して笑いたいのをこらえた。
「入りなさい」
侍従が声をかけると、うしろの扉が開いて騎士二人に両脇を抱えられ、ドラベッラが引き立てられて入ってきた。
「お久しぶりねえ、お義姉様。小汚い野良猫なんかお膝に乗せちゃって、お似合いよ」
不敵な笑みを浮かべるドラベッラに、ロミルダはほっと胸をなで下ろした。逃亡生活でやせ衰えているのではないかと心配していたが、悪態をつくほど元気だった。だが大切なミケの悪口を言ったことは、全く許していない。
「小汚さではあなたのお洋服には及びませんわ。でもかわいらしさでは、ミケちゃんの圧倒的勝利ですけれどね、これっぽっちも可愛げのないドラベッラ」
毒舌を披露するロミルダを、驚いたようにミケが見上げた。
(思わず言い返しちゃった!)
猫の丸い瞳にまじまじと見られて、ロミルダは気まずくなって目をそらした。
「本人のようですな?」
椅子に座らず立ったままの侍従が振り返って尋ねる。
「はい、間違いありません」
ロミルダがしっかりうなずくと、侍従が拘束されたままのドラベッラに向きなおって、
「魔女の娘ドラベッラよ、王太子殿下の婚約者であるロミルダ様への無礼、謝罪せよ!」
高らかに言いつのった。
「はぁ? その肝心の王太子殿下が行方不明なんでしょう? このまま本人が見つからなければ、お義姉様は婚約者でもなんでもないわ」
ドラベッラの言葉に、王妃殿下は不愉快そうに眉をひそめた。それに気付いたロミルダ、
「言葉を慎みなさい、ドラベッラ。王妃殿下の御前ですよ」
「お義姉様ったら何よ偉そうに。私はカルロ様の居場所を知っているのよ」
「それを早く言え」
侍従が先をうながすが、
「私を火あぶりにしないと誓ってください。私は魔女の娘ではなく、モンターニャ侯爵の娘です」
(どっちもでしょうが)
ロミルダは胸の内でつぶやいた。ドラベッラが実の母親であるアルチーナを裏切ってここへ来たのか、それともアルチーナの差し金なのかは分からない。だが会ったことのない母を慕い続けるロミルダにとって、気持ちの良い言葉ではなかった。
「分かりました」
王妃殿下の落ち着いた声が響いた。
「ドラベッラ、あなたを火あぶりにしないよう、私から陛下にお願い申し上げます」
「王妃様――」
侍従が小さくつぶやいた。
「ありがとうございます、王妃様!」
目をらんらんと輝かせて礼を言うとドラベッラは、脇を押さえる騎士に自分の使用人に対して言うかのように命じた。
「さっき私から奪った懐中時計をお渡しして」
ムッとしながらも騎士の一人が、麻の布に包まれた懐中時計を侍従に手渡し、それは侍従から王妃に差し出された。
(あれはカルロ殿下の懐中時計? なぜもう一つあるのかしら)
ロミルダは目をこらして王妃の手の中の時計をみつめる。
(王妃様、懐中時計のまわりに全てのダイヤが嵌まっているか、確かめていらっしゃる?)
「それで、この時計がなんだと言うのですか?」
懐中時計をじっと見つめていた王妃が、顔を上げてドラベッラに尋ねた。
「驚かないでくださいまし、王妃様。魔女は恐ろしい魔法で、カルロ殿下をその懐中時計に変えてしまったのです!」
その言葉に、王妃以外の全員が息をのんだ。
(まさか、嘘でしょう!?)
ロミルダと侍従、騎士二人は目と目で会話する。王妃だけは変わらぬ口調で、
「事の真偽は宮廷魔術師に確認させましょう。あなたにもう一つ尋ねたいことがあります」
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