3 / 41
第3話、ロミルダ嬢、猫ちゃんを拾う
しおりを挟む
「仮に妹が魔女だとして、なぜ婚約者であるミケーレ殿下をねらうのです? おとなしく結婚して時を待ち、王妃となってからこの国を乗っ取ればよい」
低い声で淡々と話す侯爵令息オズヴァルドに、脳筋な騎士団長はたじたじとなった。
「む、むむむ!?」
理解できているのかいないのか、妙な声を出す。
「それから宮廷魔術師たちは、クッキーにかけられた魔術を特定できないのか? なにか魔力を感じる、ではあいまい過ぎるだろう」
騎士団長の正面へ、ゆっくりとした足取りで近付いてくる。
「む、むむ。残された術式から魔術を特定するには時間がかかるらしく――」
魔術について門外漢である騎士団長は声が小さくなった。
「では鑑定が終わってから再度来ていただこう。それまで妹を屋敷の外へ出さないことを約束する」
静かな声で、しかし毅然と言い放つオズヴァルドに、
「いや、あの、魔女なら遠隔で魔法が使えるかもしれず、身柄はこちらで――」
もごもごと反論する騎士団長。
「我が妹ロミルダはミケーレ殿下の婚約者であり、被害者かもしれぬ事をお忘れなく」
オズヴァルドのおだやかな声に凄みがこもった。頭一つ分背の高い騎士団長を射る視線には、有無を言わせぬ迫力がある。
「む。承知した」
騎士団はぞろぞろと大回廊をあとにする。帰り際に、騎士団長は意地の悪い目でロミルダをにらんだ。
「魔女め、命拾いしおって」
そのときだった。廊下からいきなり一匹の猫が飛び出し、騎士団長の顔に飛びついた。
「いてぇっ! いてててて!」
屈強な図体に似合わず、顔じゅうひっかかれて壮絶な悲鳴をあげる騎士団長。周りの騎士たちが猫を引きはがそうとするが、騎士団長の背が高くて頭の上に登った猫まで手が届かない。
「いまいましい猫め!」
なんとか首根っこをつかんで放り投げた。弧を描いて宙を飛ぶ三毛猫はシャンデリアをかすめて、集まった人々の頭上を飛んで行く。
「猫ちゃん!」
ロミルダが走って、シャンデリアのきらめく天井から落ちてくる猫を抱きとめた。
「この子、ディライラちゃんじゃないかしら?」
自室に戻ったロミルダはカーペットにひざをついて、寝そべる三毛猫をなでていた。
「でもディライラって名前からすると雌ですよね?」
侍女のサラがカーペットに這いつくばって、猫の後ろから尻の下をのぞいている。
「三毛猫ちゃんなんだから、この子も女の子でしょう?」
「普通はそうなんですが――えいっ」
「にゃ、にゃぁぁぁっ!!」
サラがいきなり後ろ足を持ってひっくり返したので、三毛猫は悲鳴をあげた。
「まあ、やめてあげて!」
焦るロミルダに、
「ご覧ください。タマタマがついてるでしょう?」
「にゃ、にゃっ! にゃにゃあああ!」
猫がうるさく抗議するので、サラはカーペットの上に戻してやった。
「本当ですわ! じゃあこの子は三毛猫のミケくんって呼びましょう」
ロミルダはいそいそと、ミケのために飲み水を用意してやった。
ミケは小さな舌をせわしなく動かして、ぴちゃぴちゃとかわいらしい音を立てて水を飲む。
「まあ、喉が渇いていたのね。かわいそうに」
その背中をそっとなでると、手のひらにあたたかい体温が伝わってきた。
「ミケくん、かわいい!」
ロミルダは思わず、その小さな背中に顔をうずめた。
「にゃあっ!」
「ロミルダ様、猫が迷惑してますよ」
「してないわよ」
顔を上げたロミルダを見て、サラは苦笑した。
「お顔に猫の毛がついております。猫は吸うものではありません」
ロミルダは絹のハンカチで鼻先をぬぐいながら、もう一方の指先でミケの首元をなで続けている。これは猫も気持ちよさそうにしているので、サラは何も言わなかった。だがそのうち、
「あら、お耳の中がよごれていますわね?」
などと言い出し、濡らした綿棒でそっと猫の耳の中を拭き掃除し始めた。
それが終わると、
「ねえサラ、この子きっとおなかがすいているに違いないわ。厨房のシェフに何かやわらかいものを作ってもらいましょう!」
目を輝かせ、立ち上がろうとする。
「私が行って参ります、ロミルダ様」
ロミルダを押しとどめて、サラは廊下に出て行った。
一人になるとロミルダの心を不安が襲った。
(さっきはお兄様が庇ってくださったけれど、王宮からどんなご沙汰が下されるのかしら。ミケーレ殿下が姿を消されたってどういうこと? 私の差し上げたクッキーから魔力が感知されたとおっしゃっていたわよね。何か関係があるのかしら――)
とめどない思考がぐるぐると回る。
「にゃ?」
かすかな高い声に見下ろすと、ミケが小さな手をロミルダの足に乗せ、綺麗な黄緑色の瞳で様子をうかがうように見上げていた。
「ああ、ミケくん――」
たまらずロミルダは猫を抱き上げた。
「心配してくれてるの? 一人物思いにふけってしまってごめんなさいね」
腕に感じるミケの重みと熱が、ロミルダの胸のわだかまりを溶かしてゆくようだ。ミケの小さな額に頬をすり寄せると、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれた。
「うれしい! ミケくんったらまだ会ったばかりの私を受け入れてくれるのね!」
熱いものがこみ上げてきて、孤独なロミルダは泣き出しそうになった。愛があふれ出してキスしようとすると、
「にゃんにゃっ」
小さな手でやんわりと押し返されてしまった。だがロミルダはさらに歓喜する。
「きゃぁっ、私のほっぺにミケくんの肉球が!」
猫の手を指先でちょっとはさむと、さわられたくないようで引っ込めてしまった。しかしロミルダは動じない。
「肉球っ! ぷにっ! かわいい! はぁはぁ」
「ロミルダ様、正気に戻って下さい」
いつの間にかサラが帰ってきていたようだ。銀食器を載せたお盆を手に、心底呆れた顔でながめている。
「猫のエサ作ってもらいましたよ」
「サラ、猫ちゃんのお食事と言ってくださいな」
いつもは優しいロミルダが珍しくとがめた。それからミケを見下ろすとまたでれっと相好を崩し、
「お食事ですよぉ」
とろけるような声で話しかけた。冷めた目をしたサラから食器を受け取り、手ずからトロッとしたペースト状のエサを与える。猫のミケは喜んで食べ、ついでにロミルダの指についた分までなめようと、器用に両手で彼女の手をはさんだ。
「きゃぁ、ミケくんの舌の感触ザラっとして最高ですわ!」
「猫の舌って痛くないですか?」
「この刺激がたまらないのよっ」
食事が終わるとミケはロミルダのひざの上に乗って、ぺろぺろと毛づくろいを始めた。そのうち前脚を隠したまま、目が開いたり閉じたりうつらうつら……。
「はぁぁ。かわいい……」
ロミルダはうっとりとミケを見つめながら、そのやわらかい曲線を描く背中を優しくなでてやる。
「あら? 後ろ足に葉っぱの欠片が引っかかって――」
「お外にいたらそうなるのでは?」
「洗ってブラッシングしてあげたいわ」
「猫は水、嫌がりますよ」
どこまでも冷静なサラの忠告は無視して、夕方ロミルダは有言実行した。
野良猫にしてはあり得ないほどミケはよくなつき、ぬるま湯をかけられても大騒ぎせず、初めてのはずのブラッシングもおびえることなく気持ちよさそうにしていた。
「ミケは本当にお利口さんね」
「まるで人間の言葉を分かっているみたいに賢いですね」
サラの言う通りだった。
「ミケくん、私と一緒に寝てくれる?」
「にゃぁ」
ミケはアーモンド形のガラス玉のような瞳でロミルダを見上げ、しっかりと返事した。
「きゃーっ、お話しできるのね!」
たまらずロミルダはミケを抱き上げ、ほおずりしながら天蓋付きベッドに連れて行った。
ミケはヘッドボードに並んだクッションをふみふみしていたが、しばらくすると眠くなってきたようだ。枕の横で丸くなって、だんだん目が細くなってゆく。そのかわいいお尻をぽんぽんとやわらかくたたきながら、ロミルダもいつの間にか眠ってしまった。
(どうして侯爵邸に野良猫なんて迷い込んできたのかしら? そもそもあんなに人懐っこい猫が野良なのかしら? ミケーレ殿下がかわいがっていたディライラ様とそっくりなのはただの偶然?)
一日の仕事を終えベッドに入るとき、サラの頭にいくつもの疑問符が浮かんだ。
(今は猫のことより、ロミルダ様の心配をすべきね)
燭台の灯を消して、サラはブランケットにもぐりこんだ。
・~・~・~・~・~・~・
次話から、ミケーレ王太子視点になります! 一見、冷徹に見える彼の内面は?
「猫ちゃんの肉球ムニムニしたい!」
「猫ちゃんのザラっとした舌で舐められたい!」
と思ったら、作品をブックマーク追加していただけると嬉しいです!
低い声で淡々と話す侯爵令息オズヴァルドに、脳筋な騎士団長はたじたじとなった。
「む、むむむ!?」
理解できているのかいないのか、妙な声を出す。
「それから宮廷魔術師たちは、クッキーにかけられた魔術を特定できないのか? なにか魔力を感じる、ではあいまい過ぎるだろう」
騎士団長の正面へ、ゆっくりとした足取りで近付いてくる。
「む、むむ。残された術式から魔術を特定するには時間がかかるらしく――」
魔術について門外漢である騎士団長は声が小さくなった。
「では鑑定が終わってから再度来ていただこう。それまで妹を屋敷の外へ出さないことを約束する」
静かな声で、しかし毅然と言い放つオズヴァルドに、
「いや、あの、魔女なら遠隔で魔法が使えるかもしれず、身柄はこちらで――」
もごもごと反論する騎士団長。
「我が妹ロミルダはミケーレ殿下の婚約者であり、被害者かもしれぬ事をお忘れなく」
オズヴァルドのおだやかな声に凄みがこもった。頭一つ分背の高い騎士団長を射る視線には、有無を言わせぬ迫力がある。
「む。承知した」
騎士団はぞろぞろと大回廊をあとにする。帰り際に、騎士団長は意地の悪い目でロミルダをにらんだ。
「魔女め、命拾いしおって」
そのときだった。廊下からいきなり一匹の猫が飛び出し、騎士団長の顔に飛びついた。
「いてぇっ! いてててて!」
屈強な図体に似合わず、顔じゅうひっかかれて壮絶な悲鳴をあげる騎士団長。周りの騎士たちが猫を引きはがそうとするが、騎士団長の背が高くて頭の上に登った猫まで手が届かない。
「いまいましい猫め!」
なんとか首根っこをつかんで放り投げた。弧を描いて宙を飛ぶ三毛猫はシャンデリアをかすめて、集まった人々の頭上を飛んで行く。
「猫ちゃん!」
ロミルダが走って、シャンデリアのきらめく天井から落ちてくる猫を抱きとめた。
「この子、ディライラちゃんじゃないかしら?」
自室に戻ったロミルダはカーペットにひざをついて、寝そべる三毛猫をなでていた。
「でもディライラって名前からすると雌ですよね?」
侍女のサラがカーペットに這いつくばって、猫の後ろから尻の下をのぞいている。
「三毛猫ちゃんなんだから、この子も女の子でしょう?」
「普通はそうなんですが――えいっ」
「にゃ、にゃぁぁぁっ!!」
サラがいきなり後ろ足を持ってひっくり返したので、三毛猫は悲鳴をあげた。
「まあ、やめてあげて!」
焦るロミルダに、
「ご覧ください。タマタマがついてるでしょう?」
「にゃ、にゃっ! にゃにゃあああ!」
猫がうるさく抗議するので、サラはカーペットの上に戻してやった。
「本当ですわ! じゃあこの子は三毛猫のミケくんって呼びましょう」
ロミルダはいそいそと、ミケのために飲み水を用意してやった。
ミケは小さな舌をせわしなく動かして、ぴちゃぴちゃとかわいらしい音を立てて水を飲む。
「まあ、喉が渇いていたのね。かわいそうに」
その背中をそっとなでると、手のひらにあたたかい体温が伝わってきた。
「ミケくん、かわいい!」
ロミルダは思わず、その小さな背中に顔をうずめた。
「にゃあっ!」
「ロミルダ様、猫が迷惑してますよ」
「してないわよ」
顔を上げたロミルダを見て、サラは苦笑した。
「お顔に猫の毛がついております。猫は吸うものではありません」
ロミルダは絹のハンカチで鼻先をぬぐいながら、もう一方の指先でミケの首元をなで続けている。これは猫も気持ちよさそうにしているので、サラは何も言わなかった。だがそのうち、
「あら、お耳の中がよごれていますわね?」
などと言い出し、濡らした綿棒でそっと猫の耳の中を拭き掃除し始めた。
それが終わると、
「ねえサラ、この子きっとおなかがすいているに違いないわ。厨房のシェフに何かやわらかいものを作ってもらいましょう!」
目を輝かせ、立ち上がろうとする。
「私が行って参ります、ロミルダ様」
ロミルダを押しとどめて、サラは廊下に出て行った。
一人になるとロミルダの心を不安が襲った。
(さっきはお兄様が庇ってくださったけれど、王宮からどんなご沙汰が下されるのかしら。ミケーレ殿下が姿を消されたってどういうこと? 私の差し上げたクッキーから魔力が感知されたとおっしゃっていたわよね。何か関係があるのかしら――)
とめどない思考がぐるぐると回る。
「にゃ?」
かすかな高い声に見下ろすと、ミケが小さな手をロミルダの足に乗せ、綺麗な黄緑色の瞳で様子をうかがうように見上げていた。
「ああ、ミケくん――」
たまらずロミルダは猫を抱き上げた。
「心配してくれてるの? 一人物思いにふけってしまってごめんなさいね」
腕に感じるミケの重みと熱が、ロミルダの胸のわだかまりを溶かしてゆくようだ。ミケの小さな額に頬をすり寄せると、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれた。
「うれしい! ミケくんったらまだ会ったばかりの私を受け入れてくれるのね!」
熱いものがこみ上げてきて、孤独なロミルダは泣き出しそうになった。愛があふれ出してキスしようとすると、
「にゃんにゃっ」
小さな手でやんわりと押し返されてしまった。だがロミルダはさらに歓喜する。
「きゃぁっ、私のほっぺにミケくんの肉球が!」
猫の手を指先でちょっとはさむと、さわられたくないようで引っ込めてしまった。しかしロミルダは動じない。
「肉球っ! ぷにっ! かわいい! はぁはぁ」
「ロミルダ様、正気に戻って下さい」
いつの間にかサラが帰ってきていたようだ。銀食器を載せたお盆を手に、心底呆れた顔でながめている。
「猫のエサ作ってもらいましたよ」
「サラ、猫ちゃんのお食事と言ってくださいな」
いつもは優しいロミルダが珍しくとがめた。それからミケを見下ろすとまたでれっと相好を崩し、
「お食事ですよぉ」
とろけるような声で話しかけた。冷めた目をしたサラから食器を受け取り、手ずからトロッとしたペースト状のエサを与える。猫のミケは喜んで食べ、ついでにロミルダの指についた分までなめようと、器用に両手で彼女の手をはさんだ。
「きゃぁ、ミケくんの舌の感触ザラっとして最高ですわ!」
「猫の舌って痛くないですか?」
「この刺激がたまらないのよっ」
食事が終わるとミケはロミルダのひざの上に乗って、ぺろぺろと毛づくろいを始めた。そのうち前脚を隠したまま、目が開いたり閉じたりうつらうつら……。
「はぁぁ。かわいい……」
ロミルダはうっとりとミケを見つめながら、そのやわらかい曲線を描く背中を優しくなでてやる。
「あら? 後ろ足に葉っぱの欠片が引っかかって――」
「お外にいたらそうなるのでは?」
「洗ってブラッシングしてあげたいわ」
「猫は水、嫌がりますよ」
どこまでも冷静なサラの忠告は無視して、夕方ロミルダは有言実行した。
野良猫にしてはあり得ないほどミケはよくなつき、ぬるま湯をかけられても大騒ぎせず、初めてのはずのブラッシングもおびえることなく気持ちよさそうにしていた。
「ミケは本当にお利口さんね」
「まるで人間の言葉を分かっているみたいに賢いですね」
サラの言う通りだった。
「ミケくん、私と一緒に寝てくれる?」
「にゃぁ」
ミケはアーモンド形のガラス玉のような瞳でロミルダを見上げ、しっかりと返事した。
「きゃーっ、お話しできるのね!」
たまらずロミルダはミケを抱き上げ、ほおずりしながら天蓋付きベッドに連れて行った。
ミケはヘッドボードに並んだクッションをふみふみしていたが、しばらくすると眠くなってきたようだ。枕の横で丸くなって、だんだん目が細くなってゆく。そのかわいいお尻をぽんぽんとやわらかくたたきながら、ロミルダもいつの間にか眠ってしまった。
(どうして侯爵邸に野良猫なんて迷い込んできたのかしら? そもそもあんなに人懐っこい猫が野良なのかしら? ミケーレ殿下がかわいがっていたディライラ様とそっくりなのはただの偶然?)
一日の仕事を終えベッドに入るとき、サラの頭にいくつもの疑問符が浮かんだ。
(今は猫のことより、ロミルダ様の心配をすべきね)
燭台の灯を消して、サラはブランケットにもぐりこんだ。
・~・~・~・~・~・~・
次話から、ミケーレ王太子視点になります! 一見、冷徹に見える彼の内面は?
「猫ちゃんの肉球ムニムニしたい!」
「猫ちゃんのザラっとした舌で舐められたい!」
と思ったら、作品をブックマーク追加していただけると嬉しいです!
1
お気に入りに追加
876
あなたにおすすめの小説
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる