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4,婚約破棄された侯爵令嬢は知的な第二王子と婚約したようです

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 王太子に婚約破棄されたレオノーラ嬢は、父親であるドゥランテ侯爵とともに王宮に上がり、謁見の間でなんと国王陛下に頭を下げられた。

「息子が馬鹿で本当に申し訳ない――」

「陛下、滅相もないことでございます!」

「わたくしどもにそんなっ、陛下、いけませんわ!」

 父娘は慌てる素振りを見せたものの、ベネディクト王太子が馬鹿であることは否定しなかった。

(だからこそ、私がしっかり支えて差し上げなくては、と思っていたのだけど)

 レオノーラにはその場ですぐに、次の婚約話が持ちかけられた。

 相手はベネディクト王太子の弟アルヴィン――王位継承順位第二位であり、ファルナーゼ公爵の地位にある方だ。三年前に王弟殿下であった前ファルナーゼ公が病気で亡くなり、まだ若いアルヴィン第二王子がそのあとを継いでファルナーゼ公となったのだ。美しい海に面した広大なファルナーゼ公国は、マリナーリア王国の南の要所でもある。

 レオノーラ嬢とドゥランテ侯爵はこの婚約を快諾した。



「ファルナーゼ公国には貿易のための港があって、ここで荷揚げされる品が王国内流通量の八割を占めるのですって。つまり王国経済のかなめということ」

 ファルナーゼ公国へ向かう馬車の中で、レオノーラは王妃教育で学んだことを侍女相手に講義していた。

「一方で海の向こうにはグランディア帝国があるでしょう、だから同時に軍備のかなめでもあるの」

「王都の次に重要な土地なのですね」

「そうよ。理解が早いわね」

 パミーナの教育係がこの会話を聞いていたら、この侍女の半分ほどの理解力でもパミーナに備わっていたら、と願ったことだろう。



「レオノーラ嬢、ようこそファルナーゼ公国へいらっしゃいました」

 海の見える丘の上に立つ宮殿で、ファルナーゼ公となったアルヴィン第二王子が出迎えてくれた。つややかな黒髪に優しげなグレーの瞳を持つ彼は、知的な雰囲気の青年に成長していた。

「このたびは兄がこの上ない無礼を働き、言葉もございません」

 国王に続き第二王子にまで頭を下げられて、レオノーラはまた慌てた。

(アルヴィン様はベネディクト殿下よりお若いのに、ずっとしっかりしていらっしゃるわ)

「レオノーラ嬢の噂はファルナーゼ公国にも及んでおります。優秀なあなたを我が妃に迎えられること、大変嬉しく思います」

 社交辞令かと思いきや、アルヴィンは本当にきらきらとした笑顔を浮かべていた。南の領地特有の明るい陽射しとあいまって、レオノーラの心は華やいだ。

 ベネディクト王太子とは決して叶わなかった知的な会話にも花が咲いて、レオノーラはファルナーゼ公国で充実した日々を過ごしていた。アルヴィンの公国経営を手伝いつつ、夜は公国の地理について詳しく学んだ。
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